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学級通信を書くデメリット

学級通信を書くのに躊躇いがある人もいることだと思います。
それらの理由には、学校の方針だったり、学年の足並みだったり、「教員側の都合」がよく挙げられます。

さまざまな教育実践の裏には、「教員側の都合」が加味されますから、この視点から見るデメリットは他の教育実践と大差ないとしましょう。
この辺りの教員側のデメリットや通信を出す意義については、以下の記事に詳しいです。ぜひご覧ください。

では、他の面でのデメリットは?
つまり、子どもたちや保護者の立場からのデメリットはないのでしょうか。

なんとなくイメージがつきにくいです。
それはやはり、教師はあくまで教師の目線であり、子どもたちや保護者の目線とは異なるということでもあります。

客観的にこの視点を持つには、客観的な指標を探るしかないでしょう。

ある論文があります。
九州ルーテル学院大学を卒業した教員歴4年目以内の30名を対象とした調査(2018,益田亮英)です。
発行数で多いのは、週1回。
83%が毎週の頻度で発行
しています。
(それ以外の回答は月1回もしくはそれ以下の不定期発行)

他の研究でも、佐藤正寿氏の研究(2020)では月1回〜3回の発行と回答が73%

公益財団法人理想教育財団の研究(2018)では発行しているか否かについて77%の教員が「発行している」と回答しており、非常に身近な教育実践であると言えます。
頻度の差はあれ、学級通信はむしろ発行している場合が多いということです。

先ほどの益田氏の研究では、保護者側のメリットとして、

・子どもが、学校のことを話してくれないから、子どもの授業の様子が分かっていい。写真か ら楽しさが伝わる。
・子どもの学校での様子が知れてうれしい。家庭での会話のきっかけになっている。担任の考えがよくわかる。

2018,益田亮英

などがあがり、子ども側のメリットとして、

・自分の写真や似顔絵が載った時、喜んでいる
・題目を毎回子どもに書かせているが自分の順番になるのを楽しみにしている
・誕生日コーナーも好評

2018,益田亮英

など、子どもに直接関係した ところでの反応が多く挙げられています。

そしてこの研究で特筆すべきは、保護者側・子ども側ともにデメリット(クレーム等)があげられなかったということです。

保護者対応にかかる労力は大きいですから、保護者と子どものデメリットがないことがなにより大きなメリットであるとも言えます。

学級通信のねらいと効果については「保護者との連携強化」「子どもとの信頼関係」「学級経営の充実」「教師理解」の4項目すべてで教師が効果を実感している結果となりました。(下図)

2018,益田亮英

特に、「保護者との連携強化」「子どもとの信頼関係」「学級経営の充実」は同等に高い数値を示しており、効果が望めると言えるでしょう。

学級通信を全く発行しないという自治体もあります。
が、頻度の差はあれど多くの教師が発行しているのが学級通信です。
そして、その狙い、効果は特に保護者、子ども、学級に大きく影響を与えます。



もちろん、発行には手間がかかります。
しかしその手間は、授業準備や日記のコメントや宿題のチェックなどと同等に価値のあるものではないでしょうか。

益田氏の研究では、調査の回答者の73%が「効果を考えると時間をかけてもきつくない」と回答しました。
そこからはやはり、学級通信の高い時間対効果が見えてきます。

私はベテランの先輩で児童全員の連絡帳に毎日一言コメントを書いて渡している先生に出会ったことがあります。
もちろん保護者からの評価は高いです。
すさまじい熱量と覚悟だと思いました。

しかし、ふと思うのです。
コメントには手間がかかるでしょう。
きっと学級通信と同等かそれ以上に。
でもきっとこのコメントを真正面から否定する人は少ないのではないかと思います。(きっと否定的な意見が出るとすれば教師側からでしょう)

他にも、毎日次の日の予定や授業準備にA4一枚にびっしりとやることをまとめている先生にも出会ったことがあります。毎日です。
その先生は「むしろこれがないと不安で…」と言っておられました。
ここにも手間がかかっています。
きっと学級通信と同等かそれ以上に。
でもきっとこのA4びっしりの1枚を真正面から否定する人は少ないのではないかと思います。(きっと否定的な意見が出るとすれば教師側からでしょう)

その先生にはその先生にあった手間のかけ方があるということです。
そして、その手間のかけ方の違いが先生の多様性であり、個性であり、よさです。

よく学級通信の話をするとこの「手間」に話が行きがちです。
しかし、その手間は本当に惜しむべきものでしょうか。
その手間は、授業準備や日記のコメントや宿題のチェックなどと同等に価値のあるものではないでしょうか。

他に時間をかけるべき「手間」があるのであればそれは別です。
しかし、もし、どこに「手間」をかけようか悩んでいるのであれば。
現状から脱するために何か力を入れたい。
挑戦したい。
そう思っているのであれば、ぜひ学級通信という古くからある教育実践をおすすめします。

現場で学級通信を知らない先生はいません。
保護者でも学級通信という存在を知らない人はいないでしょう。

誰でも取り組みやすい実践です。
多くの人に助言をいただくことも可能な実践です。


本記事は「紡ぐ学級通信」として教育サークルまほろばメンバーがリレー形式でマガジンを連載しています。

過去には、50本以上の学級通信を書くためのさまざまな視点を載せた記事があります。
これらの記事が少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。

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