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ルアンパバーンからファイサーイまでスローボートの旅

ルアンパバーンからファイサーイまで乗ったスローボート。その優雅な眺めとは裏腹に、私にとってはなかなかの修行だった。

スローボートには3ランクあり、一番安いものと一番高いものとは10倍ほどの値段の違いがあった。今回は最も安いものを選んだ。

地元の利用客が多く乗船していたので、確かに最も安いのだと思う。ちなみに、選ぼうとして選んだのではなく、たまたま予定日に出発する船がその一番安い船便しかなかった。

ボートの乗り心地はまあまあだった。DIYで、車のシートが木の板でできた船に取り付けてあった。背面の取り扱い説明書が日本語だったから多分もとはトヨタかどっかの日本車だろう。私にとっては慣れたシートだったからか、ボートの優しい揺れとともにいつのまにか寝てしまっていた時もあった。

それでも、最終目的地まで一日中座りっぱなし。二日間の船旅だったが、いずれの日も、9時間を超える長い船旅。ご想像の通り、暇である。

1日目はめちゃくちゃ眠かったのでほとんど寝て過ごした。2日目も動画を撮ったりメコン川の景色を眺めたりしてそれなりに楽しんだ。そう。最大の問題は暇なことではなかった。では何か。

トイレだ。日本でも交通手段の中に備え付けられているトイレにはあまりいい印象がない。しかしこの船のものは今回のラオス旅行の中でおそらく最悪だろうというレベルだった。私が使った時は水を流すボタンが壊れていた。まあ問題はそれだけじゃなかったのだが。うん。全てにおいて、だな。だがそれをここで詳述したところであまり意味はない。

行ったことはないが多分パリの公共トイレ並みだと思う。いや行ったことはないのにどうしてそう言えるかというと、船には私の他に多数の欧米出身旅行者が乗っていて、彼らはなんだかんだ頻繁にそのトイレを使っていたからである。(使用後にめっちゃ手を洗ったり消毒していたが、その気持ちはわかる)

ごめんね、読んでいい心地がしないことはわかってる。これが旅に贅沢を求めない、バックパッカーの日常なんだ。たまにはそんなのも書いたほうが、これからチャレンジしたい人にとって有意義かなと思って、今こうして書いております。ご理解願います。

1日目に初めてトイレを使って衝撃を受けてしまったわたしは、2日目が憂鬱でしかなかった。その時、不意にルアンパバーンのドミトリーの共有スペースでたまたま同じ宿に泊まってた玄人日本人バックパッカーとインドについて話したことを思い出した。

「僕はインド、一ヶ月放浪したことあるよ。いい経験だった。一回インドいけばその後どこを旅しても大して驚かないから。だから、若いうちに行ってインドを乗り越えておくと、その後の旅は精神的に楽だと思う。おすすめだよ、インド」

言いたいことがよくわかる。日本人は神経質なんだろう。過剰なほどに。欧米人の雑さを私はこの旅で散々目にしたからだ。これも詳細は省くが。

日本の国民性として、丁寧さや清潔さを大事にするというのは、衛生面では優れているのかもしれない。しかし、そのせいで、そうもいかない外国に出るのが臆病になるくらいなら、少しその過剰さから離れる勇気も必要なのだろう。

そういえば日本は新型コロナウイルスの感染者の割合が先進国の中でかなり低いので、一時期は玄関で靴を脱ぐ習慣や帰ったらすぐ手を洗う習慣が世界的に注目されたとか。うん。もちろんそういうメリットはある。

でも私個人の話としては、インドでのバックパッカーにももとから興味があったから、こんなところで悩んでいる場合ではないんだと思う。しかし日本の「常識」や「慣れ」というのからまだ、今の私はどうしても抜け出せなかった。結局水をほとんど飲まず、二日目は一回もトイレを使わないという作戦で乗り切った。しかしいつか、そうもいかない時だってあると思う。超えなきゃいけない、次こそは。強くなる。

そんな決意とともに、私の船の旅は終わったのだった。


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