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幻想水滸伝とUちゃんの思い出

『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争/デュナン統一戦争』が来年三月に発売されるよ!!やった!うれしい!!

 ということで、幻想水滸伝にまつわる思い出をひとつ書いてみようかと。(年齢ばれます)

 シリーズ一作目「幻想水滸伝」は、私が中学一年生のときに発売されたもので、友達からの「借りゲ―」だった。
 その友達「Uちゃん」は、さらさらロングヘア&細眉のギャルだった。人当たりがよく下ネタが好きでいつもニコニコしているのに授業中は真剣で大人っぽい表情を見せる、歌も絵も字も上手な女の子だった。色白で背が低くて肉付きがよくて、ちょっとした仕草になんともいえない品を感じて好きだった。

 Uちゃんとは、初代プレステ友達としてよくゲームソフトの貸し借りをしていた。私から「貸して」とリクエストするわけではなく、Uちゃんが「おもしろい」と感じたものを自発的に紹介してくれるのだ。
「やる?明日持ってくるよ」とギャルならではのフッ軽ぶりで、私は毎回、ゲームソフト名を聞いた翌日の放課後にはそのディスクをプレステ本体にインしていた。
 当時、「ハイパープレイステーション」や「電撃プレイステーション」などの雑誌を時おり購入しては新発売のソフトに関する記事を眺めて「次はどれをねだろうか」と吟味していた私にとって、ほとんど何の前情報もなくゲームをプレイするということは出先で見つけた適当な店ののれんをくぐるのと同様チャレンジングでワクワクする行為だった。代わり映えのしない毎日を送る田舎の中学生にとって、Uちゃんの提供してくれるワクワクはとてもありがたいものだった。

 そんなUちゃんが貸してくれたソフトのひとつが「幻想水滸伝」だった。雑誌で名前を見かけてはいたが、詳しい内容については知らなかった。「RPGか、おもしろそー」とプレイを始めた私は、三十分も経たないうちにその世界に没入していた。世界もキャラも魅力的で、いきなり帝国軍に追われる身になってしまう主人公の立場も新鮮に感じて惹きつけられた。バトルもあまりストレスがなく、「おまかせ」コマンドなどでさくさく進められるところも気に入った。協力攻撃のバリエーションや紋章攻撃のエフェクトも楽しかった。
 ストーリーを進め、本拠地を得て仲間を勧誘できるようになってからは、ますますのめりこんだ。

「あれ? なんか施設が増えてる!」

 それまでのRPGでは、「仲間にする→バトルメンバーとして選択できるようになる」、というものが普通だったと思う。ところが幻想水滸伝の場合は、上記に加えて「キャラの特技に応じた施設」が本拠地に作られるようになるのだ。これがとても新鮮だった。
(もちろん施設ができないキャラもいるが、本拠地内をうろついている姿を確認できるだけでもなんだかうれしかったりする。効果音やウィンドウ装飾の変更も、システムではなく仲間とアイテムベースなのもおもしろい)

 ありがたいことに、Uちゃんはソフトとともに攻略本も貸してくれるタイプのギャルだった。最初こそ何の情報もなしに自由にプレイしていた私だったが、「本拠地を充実させるためになんとしても仲間を集めねば」と、かなり早い段階で攻略本を読みこむことになった。
 しかしその攻略本は108人の仲間や仲間になる条件についてすべて記載しているわけではなく(「〇〇の宿屋にいる」くらいのヒントしかなかった)、結局は「ハイパープレイステーション」などの雑誌を頼ることになった。クライブを出現させるまで三十分以上かかったし、エスメラルダに渡すオパールをゲットするためにソニエール監獄内で一時間近くねばらなければいけなかった。

「やばい、仲間集めのせいで時間かかりすぎてる? 借りゲ―だし早く返さなきゃ……」

 ソニエール監獄をさまよいながらそう考えた私は、ある決断をするにいたった。「ボタン連打でセリフを読み飛ばす」という、このうえない愚行を犯す決断を。

 その結果、グレミオショックもあり私はミルイヒを処刑してしまった。彼も108星の一人だと気づいたときには遅かった。クリア後、その余韻に浸る間もなく私は二周目を始めた。

「なかなか返せなくてごめん。すごく面白くて」と言った私に、Uちゃんは笑顔で「いつでもいいよー」と言ってくれた。

 満を持してプレイした二周目、私はきちんとパーンを育て、ミルイヒを許して108星をそろえ、空欄のないエンディングを堪能し、旅立つ二人を見送った。

「なんてすばらしいゲームなんだ……! なんで一周目でセリフ読み飛ばしたんだ私……!!」

 Uちゃんはその後も「アンジェリーク」などの絶対に私が買わなかっただろうゲームを貸し続けてくれた。
 この「アンジェリーク」についても思い出がある。借りた当日、家に帰ってからケースを開けるとディスクが入っていなかった。翌日に学校でその旨を伝えると、「マジで!? ごめん!」とこちらが申し訳なくなるくらい謝ってくれた。
 そしてその日の放課後、なんとUちゃんは校門の前にお母さんの車で乗りつけ、「ごめんねー!!」と部活帰りの私にディスクを渡しにきてくれたのだ。
「Uちゃん、めっちゃ優しい! まったく、わざわざ持ってこさせて」となぜかそばにいた友人に叱られるはめになったが、Uちゃんの心遣いがとてもうれしかった。
「アンジェリーク」もはまりにはまり、こちらは何周プレイしたか知れない(何しろ乙女ゲ―なので……全員分エンディング見たいので……)。

 当時プレステのソフトは5800円くらいで、中学生のおこづかいではとても手が出なかった。必然的に親にねだることになるわけだが、あまり頻繁に頼むといい顔をされなかったので、友達から借りるほかは雑誌や「プレイステーションクラブ」(年会費5800円)から送られてくる体験版ソフトなどでゲーム欲を満たしていた。他の友達からも「アークザラッド2」や「ファイナルファンタジータクティクス」などを借りてプレイしたのだが、Uちゃんの貸してくれた「幻想水滸伝」や「アンジェリーク」ほどには印象に残っていない。(おもしろかったけど!)

 Uちゃんに関してはその後、高校時代にいくつか心配になるような噂を聞いたりしたのだが、成人式のときには赤い着物とギャルメイクの元気な姿を見ることができた。残念なことにそれ以降会う機会がないまま今に至っているが、私に「幻想水滸伝」というすばらしいゲームやすてきな思い出の数々を与えてくれたUちゃんに、今とても感謝している。

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