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幻想水滸伝Ⅱと108回バトルの思い出

 高校生になった私はある日、コンビニで「幻想水滸伝Ⅱ」なるソフトを発見した。
 長らくゲームから離れていた私は驚いた。

「あの幻想水滸伝に続編が出てる!?」

 私は当時手に入れたばかりだったPHS(ピッチ)で母親に連絡し、手持ちの現金でゲームソフトを買いたいこと、そうすると小遣いが足りなくなるから追加で融通してほしい旨を伝え、なんとか了承を得た。1999年の春先のことであった。

 ゲームをプレイしてみて、前作より進化したシステムやグラフィックに私は感動した。キャラクターの葛藤の描き方、ストーリーの力強さにも震えた。泣いた。1もすごく好きだけど、正直2のほうがずっと好きだと思った。なんてこった、良すぎる。なんでこんなシナリオが書けるんだ村山さん……!

 ということで、こちらもはまりにはまった。Uちゃんもプレイしているといいなと思いながら何周もした。クライブイベントのための一周もあった。
 そうして雑誌やネットからの攻略情報をあさっているうちに、興味深いものを見つけた。

「最初の滝で108回バトルすると、その後のオープニングムービーがカラーになる」

 マジか……!

 私は幻想水滸伝Ⅱのオープニングムービーが大好きだ。どこか物悲しさを感じる音楽とともに、三人の少年少女の思い出がセピアの映像で流れていく。ともに滝に飛び込んだ二人の少年、その今後の運命を暗示するかのような情感たっぷりの音楽と映像。それをカラーで見られるだと……!?

 私は決意した。やろう。108回戦ってやろう。

 108回ともなると、さすがに紙に記録しないと回数がわからなくなってしまう。そう思った私は、手近なメモ帳を一枚切り取った。
 滝に飛び込もうと言うジョウイに対し「この急流じゃ、助からないよ」と同じことを4回言い続けると、追ってきた王国兵とのバトルになる。
 一度目のバトルを終えて、私は正の字の一画目を描きこんだ。そしてそれを108回続けた。
 15回くらいで早くもいやになったが、カラーのオープングムービーのために聞き分けの無い主人公を演じ続けた。
 そのときの記録がこれ↓である。

オモテ
ウラ

 折りたたまれて、ソフトの説明書の中に挟み込まれていた。これを見つけたときの感想は、「がんばったな……」と「アホだな……」が半々である。

 オープニングムービーを見たくなって、Youtubeで検索してみた。見事にあった。便利な時代だ。あれだけ時間をかけてようやく見られたオープニングムービーに、検索ひとつすれば数秒でたどりつけてしまうなんて。
 しかし、そこで私は驚愕の事実を目の当たりにすることになる。

「一回のバトルで得られるポッチ(お金)は決まっているので、所持金を見ていればバトルの回数を数える必要はない」

 …………………………。

 こうして私の中には、「アホだな……」という感想だけが残った。

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