![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23860057/rectangle_large_type_2_60f43d7b6aaca9a73e3025da8ca34f4d.png?width=1200)
ゾウの花子さんとキリンの太郎君のお話
私のふるさとには、小さな動物園があって、
ゾウの花子さんと、キリンの太郎くんがいました。
2人は、いつも仲良しでした。
そして私は、物心ついた頃から、この二人が大好きだったんです。
こうして、塀ごしに、2人はいつも挨拶します。
でも、太郎君がお休みの時間だったり、花子さんはお食事の時間だったりで
この風景に出会えるチャンスは多くないので、
2人の同時の登場に出会えるのはラッキーなことなのです。
この写真は、確か、私が高校生のときに撮ったものです。
私は、この2人に会えたとき、
子供心になんだか幸せな空気を感じていました。
花子さんと、太郎君は、大きさも格好も違うけど、
なんて仲がいいんだろうって。
まるで、恋人どおしのようなのです。
私は大きくなっても、時々2人に会いに行きました。
ふたりに会いたくなるから。
かなしいことがあると、会いたくなったりしたんだ。
ところが、ある日動物園へ行くと、花子さんはいませんでした。
先に天国へ行ってしまったのです。
花子さんのいた場所は、ただ冷たい
コンクリートのスペースが残っているだけ。
太郎君はその淋しいとなりの部屋をいつまでも、
いつまでも眺めていました。
その姿はまるで、花子さんがどこへ行ったか探してるようでした。
それから何年かたって、ゾウの小屋には新しく2頭の黒いゾウがスリランカからやってきました。なんとも陽気な2頭で、いつも楽しそうに身体をゆすって踊っているようでした。
でも、太郎君は見向きもしませんでした。
私が、短大に通っていたころだったかな。
相変わらずの私は、一人で原付バイクなんか走らせて、太郎君に会いに行っていました。
どこの動物園のキリンでもなく、太郎君が好きだったのです。
彼の優しい瞳が、大好きでした。
それからまた月日は経ち、山のふもとに大きな動物園ができ、この小さな動物園は大移動しました。
今は、みんなのびのびと暮らしているようです。
でも、もう花子さんの思い出の場所は、なくなってしまいました。
太郎君はしあわせなのかな。
東京へ嫁いでも、ずっと気になっていた。
そして、私は、彼に再会することができたのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?