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ゾウの花子さんとキリンの太郎君のお話

私のふるさとには、小さな動物園があって、

ゾウの花子さんと、キリンの太郎くんがいました。

2人は、いつも仲良しでした。

そして私は、物心ついた頃から、この二人が大好きだったんです。

  こうして、塀ごしに、2人はいつも挨拶します。

でも、太郎君がお休みの時間だったり、花子さんはお食事の時間だったりで

 この風景に出会えるチャンスは多くないので、

 2人の同時の登場に出会えるのはラッキーなことなのです。

  この写真は、確か、私が高校生のときに撮ったものです。

 私は、この2人に会えたとき、

子供心になんだか幸せな空気を感じていました。

花子さんと、太郎君は、大きさも格好も違うけど、

なんて仲がいいんだろうって。

 まるで、恋人どおしのようなのです。

     

私は大きくなっても、時々2人に会いに行きました。

   ふたりに会いたくなるから。

   かなしいことがあると、会いたくなったりしたんだ。

  ところが、ある日動物園へ行くと、花子さんはいませんでした。

 先に天国へ行ってしまったのです。

花子さんのいた場所は、ただ冷たい

コンクリートのスペースが残っているだけ。

太郎君はその淋しいとなりの部屋をいつまでも、

いつまでも眺めていました。

その姿はまるで、花子さんがどこへ行ったか探してるようでした。

それから何年かたって、ゾウの小屋には新しく2頭の黒いゾウがスリランカからやってきました。なんとも陽気な2頭で、いつも楽しそうに身体をゆすって踊っているようでした。

でも、太郎君は見向きもしませんでした。

私が、短大に通っていたころだったかな。

相変わらずの私は、一人で原付バイクなんか走らせて、太郎君に会いに行っていました。

どこの動物園のキリンでもなく、太郎君が好きだったのです。

  彼の優しい瞳が、大好きでした。

それからまた月日は経ち、山のふもとに大きな動物園ができ、この小さな動物園は大移動しました。

   今は、みんなのびのびと暮らしているようです。

   でも、もう花子さんの思い出の場所は、なくなってしまいました。

    太郎君はしあわせなのかな。

   東京へ嫁いでも、ずっと気になっていた。

   そして、私は、彼に再会することができたのです。


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