59 - 体育 / 歩み寄りたいという気持ちを示すには

59日目、6月21日(金)。
赴任から3週間が経ちました。
今日のメインは後半なので、ぜひ「チャイナ〜」の項からお読みください!

体育の授業

本日は6年生のクラスにて、EAの授業内で体育を指導することに。
前日、「最後の2コマを使ってグラウンドで運動するから、指導してくれない?」と先生に頼まれました。内容としては、準備運動とエクササイズ、可能であればバスケを指導してほしいとのこと。
体育はきちんと指導をした経験がありませんが、自身の学生時代の経験や部活動のネタ、そしてグーグル先生からアイディアを集めて準備しました。
こちらの子どもたちは「ネットボール」というバスケによく似たスポーツに親しんでおり、ネットボールにない要素が「ドリブルで進む」という点でした。私はバスケに関しては全くの門外漢でしたが、ドリブルの練習ができればバスケに必要な練習の大きなピースはクリアできそうと思い、準備をしました。聞いたところ、ボールも結構ある(数を聞かなかったのは痛恨のミス)とのことだったので、いけるだろうということに。

さて、授業の時間が近づき、先生にボールの個数と場所を聞いたところ、「いくつ必要なの?校長先生に聞いて持ってきて」と言われました。あ、先生は動いてくれないんですね、了解。そして校長先生に話を聞き、ボールを見に行ったところ、9個のサッカーボールが備品として倉庫にしまってありました。全校児童が2500人の学校で9個、日本では考えられない比率ではありますが、思った以上にあったので安心しました。
しかし問題は…9個のうち5個が、空気が入っておらず萎んでいた点でした。使えはするけど、跳ね返ってはくれないのでドリブルができない!泣 私としても盲点でした。4個使えても、約80人のクラスでドリブル練は難しいかも…。ということで、空気が入っていないからボールがバウンドしない、だからバスケに特有の練習はちょっとできないかも、ということを先生方に伝えました。とりあえずOKをもらえましたが、その代わりちょっとエクササイズを増やすことに。

いよいよ授業の時間。スカートを穿いた先生方も運動用のウェアに着替え、いざグラウンドへ!子どもたちは大きな円を作って並び、先生が真ん中に立ちます。
最初に先生が子どもたちにもも上げを指示し、少し体が温まったところでバトンタッチ。日本の体育で行うような基本の準備運動と、ダンス部や剣道部時代に行っていたストレッチ、体幹トレーニングを兼ねたストレッチを取り入れました。
子どもたち、初めて見る動きに興味津々。見様見真似でやってみます。すると、時間が経つほどに「うお〜〜〜〜!!!(きつい〜〜〜!!!)」という声がだんだん聞こえてきます。笑 こちらの子どもたちは本当に身体能力が高く、身のこなしが軽かったり、動きにムダがなかったり、さらに運動をサンダルや裸足のままできたりしてしまいます。笑 しかし、このようなメソッドはなかなか知る機会もないためか、体の一部の部位を時間をかけて伸ばす、ということには馴染みがないようでした。日本の子たちと比べても、若干体が硬いなという子はちょっと多めだったように思います。運動の前にはウォームアップをしよう!という指導はされているようですが、日本の体育の授業がいかにカリキュラムとして発達段階に合わせた構成になっているか、改めて学ぶ機会になりました。
前の授業でスクワットをしたから今回もやるつもり、ということでバトンタッチすると、スクワットというよりしゃがんだ状態で足踏みを20回ほど繰り返して立つ、という活動をしていました(これもスクワットというのかもしれない)。せっかくなので私たちが知っているスクワットと、そのまま四股スクワットをしたら、奮闘している子どもたちの悲鳴が聞こえてきてちょっと嬉しかったです(言い方)。先生方もしんどそうだった。
また、ペアでできるストレッチも大好評でした。手を掴んで体側を伸ばしたり、背中に相手を乗せたり、引っ張って一緒に立ち上がったりするやつです。

その後、結局パスの練習をしよう!ということに。バスケのパスの仕方を簡単にデモし(合っているかは不安)、先生2人と合わせて3人で子どもを3つのセクションに分け、1人2〜3回ずつ先生とパスをして次の人、という仕組みで回していきました。しかし先生とだけやっても、できない間に暇が生じてしまうので、最終的には私が子どもにボールを渡した後は、友だちにパスして!と指示を出しました。結果子ども同士、もらいに行ったりパスを出したりと、パス練の中で本物のネットボールのような空気になっていったのがよかった点でした。たまに数人のグループだけでボールを回し始めているところもあったので、彼らには君たちだけで保持せずにどんどん色んな友だちに渡して、と指示しました。
思ったよりカオスになることなく終了。体育の指導は初めてでしたが、自分自身もしばらくまともに運動していなかったので、シンプルに楽しかったです。色々な運動の仕方、色々な運動の指導の仕方があることを伝えていくために、私ももっと学ばねば。


チャイナいじりへのしんどさを同僚の先生に吐き出してみた

体育の時間まで時間があったので、最近よくお世話になっている3年生の先生に、最近のモヤモヤを話してみることにしました。

「道を歩いていると、小さい子どもたちが"アズング(チェワ語で白人という意味)!"と声をかけてくる。アズングはただ白人という意味なの?それとも差別的な意味を含んでいるの?」
答えとしては、アズングそのものには差別的なニュアンスはないそうです。子どもたちは、そこを通りがかった私の名前を知らないから、名前を呼ぶ代わりにアズングと言っているそうです。

「それならよかった!でも、一方で子どもたちがよく私にチャイナって言ってくるんだ。こっちの方が多くて、毎日なの。『チャイチュンチョン!』(←マラウイアンがよくやる、明らかに馬鹿にしている言い方での中国語のマネ)ってたくさん言われて、慣れたけどしんどくて。自分が日本人じゃなく、中国人に間違われること自体は別にいいし、彼らにとってマイノリティに出会う経験が少ないのもわかる。けど、子どもたちがこれから良い大人になっていくときに、そういうのは絶対に良くないよね。私はこの2年間で、こういう全然違う文化圏から来た人も一緒に暮らしていることを時間をかけて彼らに見てほしいし、学べる機会を増やしたい」
こういう話をしていたら、その先生は「I'm sorry, that's bad.」と私の話を真面目に聞いてくれ、共感してくれました。
「そういうことを言う子どもたちは、そもそも親が彼らを止めていないし、それがダメだと言うことを知らないんだよ。うちの学校はあなたがいるからもうみんなわかっているけど、例えば他の学校だったら、校長先生が子どもたちに差別はダメと言ったら、子どもたちがそれを持ち帰って彼らの親に伝えてくれるかもね、例えば。」
実際にマラウイの学校は先生と子どもの上下関係がはっきりしているので、先生方が言うことを基本子どもたちはしっかり聞きます。
なるほどそういう方法もありといえばあり。私の配属先はこの小学校だけですが、機会があれば他の学校を巻き込んだ活動をしながら、そこの先生方とも仲良くなったり、一緒に研修をしたりできればいいな。


でも、私も悪いんじゃないか?

帰り道、さっきの先生と同じクラスを担任している先生と一緒に帰り、同じような悩みを吐き出してみました。
すると彼女も
「え!ひどいね、私たちはみんな人間なのに!違うのは肌の色だけで、みんな同じ、ひとつなのに。気にする必要ないよ!」
と、明るい声で何度も私を励ましてくれました。
先日の記事で書きましたが、一度チャイナいじりがしんどい話をしたらスルーされたり、結構活動を放置されているところから、なんとなく勝手に先生方に壁を感じているところもあったのですが、なんのことはない、ちゃんと話せば親身になって聞いてくれます(今回の2人が特に親切な2人ということもありますが)。とにかく、ちゃんと聞いてもらえたのが嬉しくて、それだけでとっても元気になりました。

しかしその後、自分の認識を良い方向に変える出来事が起こりました。

帰り道も半ばを過ぎた頃、ちょうど道端の子どもたちが「チャイチュンチョン」攻撃をしてきました。
「ああ、これよこれ、さっき言ってたやつこんな感じ!w もう慣れたけど!」
と彼女に言いました。すると、彼女がその子どもたちを呼び止めて、此方に来なさい、と言って私と彼女のところに連れてきたのです。
彼女はチェワ語で彼らを叱ってくれました。彼女はチェワ語は話せないしアズングだけど、馬鹿にしてはいけない。私たちの小学校で先生をしているんだよ。1人の人間としてリスペクトをもって接しなさい。といった感じのことを伝えてくれたそうです。

私は彼女の本気の行動に救われました。嬉しくてたまらなかったです。
その後、彼女はこう言いました。
「次に同じように言われたら、同じように呼び止めて叱るべきよ。ちゃんとわかってもらえれば止めることもできるかもしれないから。チェワ語で叱るといいよ。」

ここで、私はハッと気づいたのです。
私はチェワ語を話せないことを理由に、気づけば彼らを私の方からも遠ざけていたということに。

チャイニーズって言ってくる彼ら、知っている世界が狭いんだろうな。かわいそうに。そんなこと言っちゃいけないんだよ。こっちは耐えるだけ耐えてやり過ごして、時間をかけて彼らの日常の一部になろう。そう思っていました。
しかし、それもそれで足りなかったのです。自分の心は確実に傷ついているので、自分を守るためには不可欠な考え方であったことは間違いありません。でも、彼らだって、そりゃ自分たちの言語が通じないと分かりきっている人には、どうやって接したらいいか分かりません。違うと分かりきっていて、かつチャイナっぽいから、ついでに馬鹿にしてくるんです。
でももしそんなアズングが自分たちの言語で話しかけてきたら?そらびっくりです。そして、嬉しいはずです。チャイナなんて言うことを忘れてしまうかもしれません。マラウイに数えるほどしかいないアズングが、マラウイでしか通じない言語を一生懸命勉強してしゃべっていたら、そりゃリスペクトの念も抱かざるを得ないに違いない。逆に言えば、私が頑張ることが彼らへのリスペクト、歩み寄ろうとしている態度の表れとなり、キリのないチャイナ抗争からほんとうの対話への移行を実現する唯一の手立てとなりうるのです。

彼らにも問題があるけど、
私にもやるべきことがあった。
頭をガーンと殴られたような衝撃的な出来事でした。


「できるだけチェワ語で話しな!そうしたら子どもたちは絶対嬉しいから。毎日1個ずつ新しい単語を覚えなね。」
そう彼女は私に言ってくれました。実際彼女はよく私にチェワ語を教えてくれます。がんばるしかないな。本当の意味でこの地に生きる人たちのことを理解して、学んで、本当に役に立つと胸を張っていえる活動を組み立てていくためには、彼らと同じ言葉を使わなければ。改めて決意が固まった、そしてチャイナいじりへの新しい見方を獲得できた経験でした。

実際に隊員は、2年間を英語と少しの現地語で乗り切る人と、現地語を極める人の2パターンに分かれると言う話を聞きます。実際、現地語がなくても乗り切ること自体はできると思います。
しかし、私のように子どもたちと関わることがメインとなってくる職種では、英語だけだとやはり不十分。手応えが足りないまま帰国してしまいそうです。

改めて、現地語頑張ります。


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