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脳内お花畑 day7

ある朝、ベッドから体を動かせなくなった。
心身共に、参っている時期だった。

喉はどんどん渇くのに、水を飲みに行く気力すら起きない。
部屋に入る光は朝から昼へ、昼から夜へ。
何時間もベッドから動けずに、その光を見ていた。
夕方になると、差し込む光がわずかになり、部屋の中は暗くなっていった。

「このまま、水を飲まなかったら、死んだりするのかな」

翳りゆく部屋をぼんやり感じながら、そんなことを考えていた。
もう本当に疲れていたから、それでもいいか、と思ったりもした。もーいっかな、て。

ほんの些細な動作だ。ベッドから起き上がり、コップに水を汲む。歩数にして、5歩くらい。
そんな些細な動作を、一日中、どうするか悩み続けた。

結局、夕方から夜になるくらいに、水道水をコップで飲んだ。
ぜんぜん美味しくなくて、「やっぱり飲むのをやめればよかった」と思った。そのまま、またベッドに倒れこんだ。

あのとき、あのまま水を飲まない選択をしていたら、どうなっていただろう。生存本能で、ギリギリで水を飲みに行っていただろうか。
そんなことを、今でもたまに考える。まあ、答えは出ないけれど。

ただ、あんなに水を飲むことが難しかった日はなかった。
生きることは、こんなに体力と精神のいることなのだと、思った日はなかった。
あの日、部屋に差し込む光をみながら、辛さもしんどさも自分も、その移ろいと一緒に消えてしまえそうな気がした。


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