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この本とあの本の間

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本棚にある、好きなあの子とこの子の隙間に挿すような、本にまつわるエッセイ。
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2019年6月の記事一覧

すきだった、なんて言ってあげないよという呪いの話

それはたとえば、幼い頃に読んだ絵本であったり、高校生のときに友達と貸し借りした文庫本のことを記憶の中から取り出そうとするとき。いまよりも前のことを思い出しながら、私の口はしばしば、きちんと時間の経過を汲み取って動く。こんなふうに。 「あの頃、好きだったんだよね」って。 ただ「むかし」のことを話しているときは、べつだんなんとも思わない。でも中には、自分の声を耳にした一瞬のちに、はっと胸を押されるような痛みを憶えるときも、ある。その痛みは泣くほどではないけど、たぶん誰もが知っ