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市川翔の物語外伝☆俺の能力は五感を超えているがそれがどうした

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市川翔自身の言葉をしたためる。彼の脳裏を駆けめぐる言葉を。事実も想像も、あらゆる思考が言葉に変換されて表現されてゆく。彼にとって、言葉は思念。ときに言葉は、現象そのものとなる。そ…
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#月

真夜中の月

皓々と照り輝く月よ 真空の闇を突き抜ける 白い光 世界は 厳寒の大気の底で じっと息を潜める あらゆる気配は消え去った そよとさえ風は吹かず 見渡す限りの事物は 静止し 時の経過を知らせるものは この身から ぬくもりというぬくもりが 外部へ向かって 放射されているという自覚と 月の ハレーション 発光への驚き 俺は たまらなくなって 息を吐く 目の前を流れていく白い靄が 拡散していくのを目撃すると それは 俺の生きている証だと

偽らざるもの

煌煌と照りつける月よ 灼熱の恒星 太陽を映す鏡よ 天空の一点から その透徹とした光を 地上に降ろし あらゆる発生 あらゆる変転 あらゆる消滅を 闇からすくい上げ 寂々と 存在たらしめる 永遠とも思える時を 法則にしたがい 自転と公転を 繰り返し 繰り返し 過去から未来へ 未来から永遠へ 旅をする 俺は 熱のないその光に抱かれる時 過去を煩い 未来を夢想する 俺という実在を通しての時空 現在を発信地としての 時の広がりに 意識を漂わせる 俺は 偽らざるもの