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パフェレポ Typica『あん肝のパフェ』2024年3月

 銀餡のお出汁の味が優しい。あん肝やきのこ等、構成要素には驚きだが、スイーツという印象がしっかり残るパフェ。


前菜のパフェのグラスなので甘くないのかと思ったがちゃんと甘い

 まずはたっぷりと上からかけられている鰹出汁銀餡を一口。ほぼ透明だが、出汁の味がしっかりと感じられる上品なお味。この銀餡の出汁の味が今回の構成要素と強い結び付きを果たしている。
 続いてあん肝味噌アイス。舌に強く感じるあん肝の海の香りが面白い。臭みは全く感じないので、純粋なあん肝の風味が感じられる。そこに味噌が足されることによって塩味と旨味が足され、あん肝の海の香りを異質なものにさせずにまとめ上げている。銀餡との相性もよく、海の香りをマイルドにし和テイストの上品さをプラスする。さながら味噌仕立てのあん肝のお吸い物。椎茸アイスはほんのり甘さも感じるが、確かにしっかりと椎茸の風味を感じる。Typicaは面白いアイスがよくパフェに入っているが、どれも違和感なくちゃんと美味しいと思えるのがすごい。上にかかっている柚の風味もアクセントになっている。
 その下には百合根と胡麻のムースプリン。甘さは控えめで、さっぱりとした胡麻豆腐のような味。百合根のほろ苦さも感じられる繊細な風味が和食を思わせる。銀餡との相性もいわずもがな。
 そしてようやく甘いパーツであるブリオッシュが登場。パン生地を噛むとじゅわりと染み出る甘いシロップが幸せを感じる(これでしか感じられない幸せって、あると思うんですよ)。元のパフェに入っていたサヴァランの立ち位置なんですねこれ。今までの日本料理のような甘さ控えめあっさりとした流れの中で現れる、シャンティクリームの甘さと重たさに愛おしさすら感じてくる。銀餡の優しい味わいがそこに合わさると、シャンティクリームの甘味や重たさの角が丸くなり、塩味が足されて相性がとても良い。ロイトシロで提供された元の方を食べた時も思ったけれど、どうしてシャンティクリームとお出汁の風味ってこんなに合うんでしょうね……!不思議です。というかこの組み合わせを最初に考えた人の発想に脱帽。
 続いて金柑のコンポート。甘さは控えめ、金柑の風味は強く感じるのでアクセントになっている。コンポートだけれど程々の甘味であるのがバランスの良さに寄与しているような気がする。
 最後にヴィンコットソースに浸かったフィンフェルリのロースト。フィンフェルリとは杏に似た甘酸っぱい香りがするきのこの事で、独特な風味を感じる。ヴィンコットソースはバルサミコ酢に似た味わいで、酢の風味がアクセントになっている。フィンフェルリと合わさって、爽やかに〆られる。

 上層から下層へ、和から洋へとテイストが自然に変化していくのが面白かった。銀餡のお出汁の風味が非常に特徴的で、これのお陰で和風に演出されているように思う。

 ロイトシロで昨年秋に提供された『秋の香サヴァラン』を再構築する、ということで、比較するのも楽しかった。
 ほの温かいお出汁のきいた餡が全体にかかっており、あん肝の海の香りがアクセント、ローストしたきのこが香り、サヴァランが甘い、という流れは元のパフェと同様。二つの大きな違いは、ロイトシロ提供の方は終始和風なのだがTypica提供は最後ヴィンコットソースで洋風に翻る所。和風で終わらず、最後ヴィンコットソースの強い酸味が前に出て転調して締められる展開、(前菜のパフェを食べたことが無いのでちゃんとした事はわからないが)Typicaのパフェは上層のおかずと下層のスイーツで展開が一変するので、それを考えると最後の最後でいきなり展開が変わるのはお店の個性によるものなのかと考えた。

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