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たまに、無性に、ロリポップから


「ねぇ、自転車、貸してくんない?」

そう言われて、私は間髪入れずに

「いいですよ〜」

と答えた。
それは昔の職場でのことで、店長に自転車を貸した。

その時の店長はチャラいお兄ちゃんだったんだが、サンキューと言いつつ、私に

「ついでに何か買ってきてあげる〜。なにがいい?」

と聞いてくる。
その聞き方や、仕草が、こいつがモテる要因なのだろうと私は大いに感心したものだ。

「えー、何も要ら…あー!チュッパチャップスがいいっ!!」

人から物を貰うのが苦手だった当時の私だが、「何も要らない」という答えは案外傷つくらしいと学び、チュッパチャップスという選択をしたのは偉いと思う。

なぜ、チュッパチャップスかって?

その時の気分。

たまに、無性に食べたくならない?
棒付きキャンディ。

店長は、その歳でチュッパチャップスかよ、と笑った。
チュッパチャップスに年齢制限はないはずだけど?と思いつつ、棒付きキャンディは幼い感じがするのはなぜだろうか。

そして、私は1本貰えればと思っていたのだが、店長は数本くれたのであった。

棒付きキャンディを素直に喜んで、他の子に持ってるのを見られて、これまた素直に自転車を貸したお礼に店長から貰ったと言ったら、軽くイヤミを言われたのはいい思い出。

他人の嫉妬混じりの恋心、まじめんどくせー。



という、割とどうでもいい事を、久々に買ったチュッパチャップスを舐めながら思い出す。
チェリー味大好き。
ついで、いちごミルクかなぁ。



私の棒付きキャンディへの憧れの始まりは、たぶん「エルマーのぼうけん」である。

幼稚園の頃から、大好きで何度も読み聞かせしてもらったし、自分でも頑張って読んでいた。

大人になってから買い直した絵本でもある。

ワニのしっぽに棒付きキャンディをくくりつけて、橋にしてエルマーはリュウのいる向こう岸へ渡るのだ。

その時のワニ達のはしゃぎっぷりがいいのだ。
お肉よりキャンディ。
なんて可愛い世界なのだろう。

その時、私は「ダース」という単位に触れる事になるが1ダースが12個と知ったのはだいぶ後になってからだった。


「エルマーのぼうけん」は3部作で、私は3冊ともお気に入り。
2番目のお話ではカナリアに憧れて、飼いたいと思っていたし
3番目のお話では砂漠の名前が妙に気に入った記憶がある。



小さな私の好奇心は、だいたい本からやってきていたなぁと、チュッパチャップスを食べ終えお茶を飲み思う。


大人は、ロリポップキャンディを食べないのだろうか?
私はチュッパチャップスだけではなく、あのぐるぐると大きなペロペロキャンディもたまに買ってきて、一人でむぐむぐとしている。
しかも、その間何をするでもなく、アニメなどをじっと見ているので、ほぼやってる事は子供と変わらない。
子供なら可愛い。
でも、大人の大きさでやると、ちと不気味なのは否めない。


それでも、たまに無性に食べたくなるので、私は私のためにロリポップキャンディを買うのであった。








サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。