見出し画像

フランスがこんなに怒っている理由は何だろう?●仏「重大な危機」と米豪に警告 潜水艦計画、NATO影響も明言

フランスのルドリアン外相(左)=2日、スロベニア・クラーニ(AP=共同)
米英豪3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」創設で、オーストラリアに潜水艦共同開発計画を協議なく破棄されたフランスが米豪から大使召還を決めたことを巡り、フランスのルドリアン外相は18日「(米豪の)振る舞いは、同盟内ではあり得ない。重大な危機だ」と警告した。国営テレビの番組で語った。  
ルドリアン氏は米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)が取り組んでいる指針「戦略概念」の改定に今回の問題が影響するとも明言した。フランスのNATO脱退の可能性は否定した。  
米国からの大使召還は「仏米関係史上初めてで、重い政治的行為だ」と説明した。
【引用終わり】
大使を召還するとは、剣呑です。断交一歩手前ですから…。
駐中国フランス大使だって召喚していないのですから、つまりはフランスは、中国よりアメリカの方が酷いと言っている訳です。
最もフランスだって、アメリカと断交するつもりは「これっぽっち」もないとは思います。ただ「これ程激怒しているぞ」というパフォーマンスのはずです。
しかし、どうもよく解りません。
今回の潜水艦契約の破棄について、フランス側は事前協議がなかったと主張しています。
フランスのジャンイブ・ルドリアン外相は公共ラジオ局でオーストリアに対しては【『これはまさに裏切り行為だ。オーストラリアと築いてきた信頼関係が裏切られた…私はきょう、大いに怒り、恨んでいる。これは同盟国同士がすることではない』と述べ、
米国については、『この一方的で突然かつ予測不可能な決定は、トランプ氏の行動と非常に似ている』と断じ、今回の事態は『受け入れられない』もので、『理解不能』だとした。( 9/17(金) 3:07配信 AFP=時事)】
一方オーストラリアのモリソン首相は、フランスのマクロン大統領には伝えてあると主張しています。ラジオ番組で、【「パリで(6月に)長時間の夕食会があり、われわれが直面する新たな戦略的環境への通常型潜水艦の対応能力に関し、非常に重大な懸念を私は極めて明確に伝えた」…「オーストラリアの国益を踏まえて決定を下す必要がある問題だと非常に明確に話した」(9/17(金)14:36配信 ロイター)】と釈明したそうです。 -
また【米ホワイトハウスの高官はAFPに対し、米国はこの件についてフランスと事前協議していたと説明。( 9/17(金) 3:07配信 AFP=時事)】したそうです。
報道だけでは、詳しい経緯はわかりませんが、どうも米・豪側は、単なる潜水艦の売買契約だから、モノのついでに、モリソン首相がそれとなく伝えたので、それで通告はすんだと軽く考えていたのではないでしょう? 
しかし、フランス側は、国家間の重大契約なので、きちんと事務方の協議から始まって、長々とした協議があって、フランス側が何らかの見返りを頂いて契約破棄が決定されるという手順が踏まれなかったので、事前協議はなかったと主張しているのではないでしょうか?
ただ聞くところによると、フランスとの潜水艦建造契約では、オーストリア側が部品の国内製造を主張していたこともあり、殆ど暗礁に乗り上げていて、契約依頼4年たっても殆ど進んでいなかったそうです。だから、オーストリアが米国からのお話に乗り換えたのは不思議ではありませんが、どうもやり方が稚拙だったようです。
最も、フランスだけでなく、EU全体が吃驚したのは、インド太平洋地域に対して、米英豪の枠組みで対処するという3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」が知らない間に出来てしまった事のようです。つまりインド太平洋戦略に対して、米国が欧州をはずした (相談もしなかった) というショックです。
折しも16日にEUはフランスやドイツが主導して「EU初の(対中国けん制を念頭に地域の経済・安全保障への関わりを強める内容の)インド太平洋戦略」の詳細を発表した所でした。その同じ日に、米国がインド太平洋では英国とオーストリアと3ケ国で対処する枠組みを作ったと発表されては、立つ瀬がないように気がするのかもしれません。
ボレル外交安全保障上級代表(EU外相)は16日の記者会見で「(3ケ国で安全保障の枠組みを作るとは) 知らされておらず、(EUが)協議に加われなかったのは残念だ(AFP=時事)」と認めたそうです。
そして欧州の殆どの国が米国を中心としたNATOに加盟していても、米国からは何の通告もなかったことを重く見たのか、ボレル氏は「今回の出来事は、自ら主導権を握らなければならないと欧州の目を覚まさせるものだ(AFP=時事)」と強調したそうです。
とはいえ、EUとしては【インド太平洋戦略では日韓ンドと共に豪州を重要な連携相手と位置付けていただけにEUは影響力の弱さをいきなり露呈。加盟国間には対米、対中政策での温度差も残っており、「自立」への前途は多難(AFP=時事)】なんだそうです。
素人七重の独断的な意見。
フランスも欧州も《不安》なのではないだろうか?
EU外相は「知らなかった事」を問題視しました。
ただ、その問題視は「アメリカのインド太平洋戦略に入れて貰えなかった」からでしょうか?
 それはどうも違うと思います。
 なぜならば、昨今迄EU諸国はインド太平洋には興味なしだったからです。16日に始めて「EUの対中国を念頭に置いたインド太平洋戦略」をまとめた事に、それは現れています。その昔日本が、欧州の第一次大戦にあんまり興味がなかったように、EUがインド太平洋にあんまり興味が無かったのです。(フランスだけは、一応ニューカレドニア・仏領ポリネシアという領土をもっていますから、ほどほどの興味はもっていると思いますが…。)
 だから「アメリカが英国豪州と3ケ国で頑張るよ」と言ったところで、EUは「あー頑張ってね」と平然としているのが今までだったら《普通》のような気がします。イラク戦争なんかの時は、仏独は「勝手にやれ。自分達は関係ない」という勢いでした。
それなのに、なんでこんな過剰反応をするのか?
確かに、近頃の中国は「自分から進んで悪役になっている」ところはありますが、EUが自ら望んで「中国と敵対したい」と思っているわけではないでしょう。いままでの仏独だったら、厳正中立をきどって綺麗ごとならべて、米国が大汗かいて中国を退治するのを高みの見物しているはずです。
何なんだろう?
これは、やはり、あれかな?
アメリカが、あっさりアフガニスタンから撤退してしまったので、アメリカがその気になれば、EU=ヨーロッパからもあっさり出て行ってしまうのではないか? と不安になったのではないでしょうか?
もうEUには「アメリカが絶対に守るだろう」英国はいなくなってしまったので、アメリカはいざとなったらヨーロッパから出て行ってしまうかもしれない。私は、そんな不安が、EUの中に立ち込めているのではないかと、チラッと思いました。
そうしたら、ヨーロッパはどうなるのでしょうか? ロシアの脅威。イスラムの脅威。と自分達で立ち向かわなければならなくなります。
地政学的にいえば、アラブ・イスラムの怒りからも、ロシアの拡張主義からも、アメリカは遠く離れているはずです。でも今までは米国がイスラム過激派の標的で、ロシアと対峙してきました。それは米軍がヨーロッパに展開していたからです。
故に、米軍がさってしまったら、ヨーロッパ諸国は十字軍以来のイスラムの怒りに自分で対処しなくてはならなくなります。十字軍を起したのはアメリカではなくてヨーロッパなので、因果応報かもしれませんが、今までは、米軍が盾になってくれていたので、ヨーロッパ人は少しは安心していられたのです。
だから、アフガニスタンをみて、ヨーロッパの人達は不安になったのかな? と私は思いました。
日本人はノー天気だから何にも感じていない人が多いですが…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?