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ドイツの本音は、ロシアと悶着は起こさない⁉︎ウクライナは見捨てているようです。ドイツは、昔も今も「『○○が善だ』という通説が固まると、現実には『善だと信じて頑張ってやった結果が、じつは災いとなる国だ」ということは、変わっていない。


➀ 独、ヘルメット5000個供与 ウクライナから失望の声
(1/27(木) 6:27配信 ベルリン時事)
ドイツ政府は26日、ロシアとの緊張が高まるウクライナに対し、軍用ヘルメット5000個を供与すると発表した。  
ただ、ドイツ製の軍艦などの提供を求めてきたウクライナ側からは、「言葉を失った」(クリチコ・キエフ市長)などと失望の声が出ている。  
ドイツのランブレヒト国防相は26日、ヘルメットの供与は、ウクライナへの連帯を示す「明確なシグナルだ」と強調した。ドイツは世界4位の武器輸出大国だが、昨年12月に発足した新政権は「抑制的」輸出政策を掲げ、ウクライナへの供与も拒否。対ロ支援で米英やバルト3国などがウクライナに武器を送ることを決める中で、ドイツも歩調を合わせるべきだとの圧力は高まっている。 
【引用➀終わり】
世界4位の武器輸出大国の武器援助が、ヘルメット5000個ってことは、普通はあり得ないでしょう。
ここから透けて見えるのは、ドイツが西側の大国として、建前上ではロシアのクリミア占領をウクライナーの圧力を批判しているモノの、「ドイツ自身の美意識や国益から、ロシアとは悶着を起したくない」という本音です。
川口 マーン 惠美(作家)さんの記事を撥水で引用します。
【引用⓶開始】
②ドイツ海軍トップの「不適切発言」で可視化された、ウクライナ危機の残念な背景
(1/28(金) 6:32配信 現代ビニネス抜粋)
ドイツ海軍のカイ=アヒム・シェーンバッハ司令官が1月22日、ロシアとウクライナについて不適切な発言をしたため、即日、任を解かれた…
西側が口が裂けても言わなかったことを…
1月22日、いったい何が起こったのか?   
その日、シェーンバッハ氏は、インドのデリー…会議室のような部屋で大きなテーブルを囲んで数人…、その中の一人であるシェーンバッハ氏が英語で力説しているシーンが、ユーチューブにアップされている。  
内容…「ロシアがウクライナの一部を占領しようとしているというのはナンセンス。プーチン大統領が真に求めているものは、対等な目線による敬意だ」「彼に敬意を表するには、ほとんど一銭もかからない、まったくかからない」「もし、自分が訊かれればこう答える。プーチンに敬意を持って接することは簡単だ。しかも、彼はそれに値すべき人間だと」等々。  …さらにシェーンバッハ氏は現在、西側がとり続けているロシアに対する制裁は「間違った方向に行っている」とし、ロシアとの連帯を促す。なぜなら、「中国の脅威が迫っているから」。  
氏は、自分は敬虔なカトリック信者だと述べており、中国に対抗するためには、キリスト教国のロシアを味方に付けることが良策であるとする。  
プーチンが無神論者でも「それはどうでもよい」。「ロシアはドイツとインドにとって大切な国で」、「たとえロシアが民主主義でないとしても、この大国をパートナーとすれば(略)、ロシアを中国から離しておくことができる」。  
シェーンバッハ氏のこの発言からわかるのは、親露というよりも、彼が中国の脅威を非常に深刻に捉えていることだ。  彼にとっての最悪のシナリオはロシアと中国の結託であり、しかし、西側がこれ以上ロシアを敵に回せば、必ずそれが起こると確信している。西側の対ロシア制裁が間違った方向に行っているというのはそういう意味だ。シェーンバッハ氏はさらに決定的なことも言っている。  
「クリミヤは失われた。2度と戻ってはこない」  
これこそ、西側が口が裂けても言わなかったことだ。…
ウクライナとドイツの温度差
要するに、この日のシェーンバッハ氏の発言はすべて(政治的に)間違っており、当然、ベルリンは蜂の巣を突いたような騒ぎとなった。  
国防省の報道官は、「シェーンバッハ氏の発言内容、および使われている言葉は、我が省の取っているポジションとはまったく違う」と火消しにおおわらわ。  
また、当のシェーンバッハ氏もツイッターで、自分の発言を「明らかな誤り」と認め、「思慮の浅い発言が、これ以上ドイツ海軍、陸軍、とりわけドイツ政府に損害を与えないため」、その日のうちに辞表を提出。
しかし、すでにその間に、ウクライナでは(大激怒)…、ベルリンではウクライナのアンドリー・メルニック大使が、ディ・ヴェルト紙の取材に答えて、思い切り咆哮していた。   彼曰く、このスキャンダルは「ドイツの国際的な信用度と責任感に大いなる疑念を生じさせるもの」で、「この軽蔑的な言動は、我々に、ナチに占領され、ウクライナ人が下等人間として扱われていた頃の恐怖を無意識のうちに彷彿とさせる」と。  
ナチを持ち出されると反論できなくなるのがドイツ人だが、ここから先がさらにすごい。「ドイツ国防軍の最高幹部の一人が、ドイツの傲慢と狂気で、戦争犯罪者プーチンと聖戦連合を組み、中国相手に現代の十字軍を派遣することを夢見ている」  
(しかし)ウクライナは何だかんだと言いながらも、現在、NATOの援助で急速に軍事力を増強している。英国とは共同で軍艦の建造、トルコとは戦闘用ドローンのライセンス製造…米軍からは2億ドル分の軍備の出荷が決まっており、エストニアはすでに昨年、2400丁のピストルを送った…
ウクライナは当然、ドイツにも武器の協力を要請したが、ドイツ政府はそれに応じていない。それどころか、エストニアがドイツ製の武器をウクライナに送ろうとしたのを妨害したほどだ。  
新政府のベアボック外相は緑の党ということもあり、紛争地域への武器の輸出など、たとえ防御用の武器であっても御法度で、その代わりに提案した援助は傷病兵の治療や野戦病院の整備だった。温度差は激しい。
ウクライナ側に募っていたイライラ
ただ、真相は少し違う。実はドイツ政府は、ロシアに強い態度で出られない事情がある。ロシアのガスへの依存が強すぎるのだ。  
しかも、昨年の大晦日に予定通り3基の原発を止めたため、今後、さらにガスの輸入を増やさなければ停電の危険もあるという瀬戸際だ。だからEU、およびNATOの一員として、対ロシア政策を共有しているはずといえ、その態度は煮え切らない。  
ロシアに逆らってガスの供給が滞っただけで、ドイツ産業は壊滅状態に陥る。つまりドイツ政府は現在、あたかも罠に落ちたような八方塞がりの只中にいる。  
そのため、ロシアからドイツへ直結する海底ガスパイプライン「ノルトストリーム2」の存在が、日に日に需要度を増している。ドイツ政府としては、1日も早く稼働させたい。ところが、米国、およびEU各国が挙って反対しており、いまだに稼働できない。
しかも、一番強硬に反対しているのがウクライナなのである。  
ノルトストリーム2が開通すれば、ウクライナ経由の陸上パイプラインがほぼ不要になり、ウクライナは膨大なトランジット料を失う。つまり、国の浮沈のかかった問題だ。
強硬に反対するウクライナを、保障までつけて宥めようとしているドイツだったが、ウクライナのドイツに対する不信感は大きかった。  
1月17日、ベアボック外相はウクライナの首都キエフを訪れ、武器は輸出しない代わりに、水素プロジェクトを持ち出した。…それが商業ベースに乗った暁には、既存のガスパイプラインを水素の輸送のために活用しよう! という遠大な計画である。 …しかし、ウクライナが緊急に必要としているのは、いつできるかわからないグリーン水素ではなく、今、使える武器である。  
そして、そのわずか5日後、この不協和音がまだ鳴り止んでいない時に、シェーンバッハ氏の失言事件が起こった。その途端、ウクライナ側が総出で言いたい放題になった背景には、ドイツに対するこういうイライラがあったわけだ。   
ドイツでは、家庭用の電気代やガス代は、今年から平均6割も値上がりしている。パイプラインはどうしても稼働させたい。ただ、ナチとの比較まで持ち出されたドイツが、今後、どうすればそれを稼働させられるのかは不明だ。  
ショルツ首相は、ノルトストリーム2は民間事業であり、政治とは無関係という苦しい言い訳をしているが、ドイツが次第に孤立し始めていることは否めない。
日本は自国を守る算段を
さて、シェーンバッハ海軍中将の失脚は、実は日本と無関係ではない。  
対中包囲網の一環としてアジア方面に派遣されていたドイツのフリゲート艦を率いていたのも彼だ。そして、昨年11月、東京に寄港した際、艦上で日本のメディアのインタビューに応じ、法に基づく平和と秩序に貢献するため、「可能ならば2年に1度は艦船を派遣したい」と語っている。  今思えば、この発言にも氏の対中防衛の思いが色濃く出ていたのである。  
EUに、中国を世界平和の真の危機と見ている政治家はあまりいない。そんな中、シェーンバッハ氏の脱線と脱落は、世界の力学を微妙に変えてしまうかもしれない。もちろん、日本にとっては不幸な方向に。  
一番の懸念は、氏が恐れていたロシアと中国の結託だ。私たちは今、ものすごく危うく、きな臭い歴史の曲がり角にいるのかもしれない。日本は無駄な感染対策や、蜃気楼のように実態のない論争ばかりしていないで、自国を守る算段に本気で取り掛かるべきではないか。
川口 マーン 惠美(作家)
【引用⓶終わり】
私が先ほど「ドイツは、ドイツ自身の美意識や国益から、ロシアとは悶着を起したくない国」と表現したのは、ロシアの動きが怪しいという事(=ウクライナを狙っているのではないか?) は、昨年の11月には国定的に話題になっていました。もしロシアがウクライナに侵攻すると、ウクライナを通ってドイツに来るロシアからのガス供給が不安定になるはずだ。なぜならば、ウクライナを助けないとウクライナがパイプを閉めるかもしれないからです。
また、今年は寒波だともいわれていました。だから例年より、電気・ガスが必要になるかもしれない。
ですから、時節を読めば「予定通りに原子力発電所を止めるのは危険だ」と誰でも予知できるはずです。
なのに、ドイツは危険を無視して原発を止めました。これは、「ドイツは、脱原発・脱酸素の素晴しい国だ」という自己満足に浸りたいという願望が、ドイツに停電の危機が来るという危機意識を凌駕したためだと私には思えます。
緑の党が閣内にいるせいかもしれませんが、ちょっと現実離れした”空のお城”です。
ロシア発・ウクライナ経由のガスパイプラインにエネルギーを頼らざるを得ない現状では、ロシアがガスの送出をやめても、ウクライナが途中でバルブを閉めても、ドイツは大停電・エネルギー危機になります。
それを考慮すれば、ロシア・ウクライナ双方の決裂は絶対に避けたいはずです。しかし、それにしては、今のドイツは当初アメリカ任せで、ウクライナ問題には腰が引けていました。
ですから、ドイツが、昔も今も「『○○が善だ』という通説が固まると、現実には『善だと信じて頑張ってやった結果が、じつは災いとなる国だ」ということは、変わっていないような気がします。

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