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中国人は、(自分が望めば、欧米で自由に生きられる芸術家でさえも) 自分の自由な心を殺して、発言し行動する事が、正しい処世術だと、選択する。【引用開始】●ディオールの「小さな目」の写真に批判、写真家が謝罪 中国

ディオールの「小さな目」の写真
仏高級ブランドのディオールの写真が、アジア人に対して欧米人が抱く昔ながらのイメージをそのまま表現しているとして、中国のインターネットなどで批判された。その後、撮影した中国人ファッション写真家が自分の「無知」について謝罪する事態となっている。…
■「欧米の審美眼にこびている」
…北京日報は社説で、ディオールの写真のモデルについて、「陰気な表情」と「悪い目つき」をしていると主張。
「写真家はブランドや西側世界の美的感覚にこびている」、「長年にわたってアジア女性は、欧米の見方によって常に、小さな目とそばかすで表現されてきた。だが、芸術と美に対する中国の評価の仕方は、それによってゆがめられることはない」と唱えた。…
中国のネット世論では、一連の写真について、中国人女性を「侮辱する」肖像だという声が上がった。
色白の肌や大きくつぶらな目など、多くの中国人が良いと思う特徴を備えた人が出ていないというのが理由だった。
中国人に対する「偏見」や「人種差別」が示されているとする意見も出た。
しかし、そうした意見に同調しない人もいた。ウェイボのあるユーザーは、「なぜ目が小さい中国人女性は美しいと思われないのか? この写真には何の問題もない」と、チェン氏を擁護した。
■「イデオロギーを改善させる」
チェン氏は声明で、「深く内省した」とし、「ほぼすべての批判的コメント」を検討した結果、謝罪する必要があると感じたと述べた。
「私は中国で生まれ育った。自分の国を深く愛している。芸術家として、自分の作品を通して中国文化を記録し、中国の美を紹介する責任をしっかり自覚している」 「中国の歴史について学び、関連のイベントにもっと出て、イデオロギーを改善させる。(中略)自分の作品を通して中国について語るよう努力していく」
チェン氏は中国ファッション界の有名写真家で、有力雑誌の表紙写真を撮影するなどしている。これまで、英サッカー選手デイヴィッド・ベッカム氏や中国俳優ファン・ビンビン氏などを撮影してきた。
【引用おわり】
 芸術とは、ただその作品から、個人個人が何をうけとるかです。
私は、チェン氏のディオールの写真から、表面的な美醜を剥ぎ取った、中国女性の内面の強さを感じました。女性の鋭い眼光から、私は、世の中に女性蔑視の言葉が躍っていても、そんな一文にもならない言葉に踊らされることなく、蔑視ですら養分に変えてしぶとく生き抜いてゆく「中国女性のたくましき強さ」を、感じました。
だから、凄いなと感じました。
しかし、どうも中国では受けなかったようです。批判が爆発して、ティオールはすぐ写真を撤去しました。
ここまでの経緯では、私はディオールの方がうかつだったと思います。広告写真なのですから、多数派の中国人の感性に合うか合わないか事前にチェックして、採用するかしないかを決定するべきだと思います。
この意味で、ティオール側が「自分達の美意識が世界標準だと勘違いしている」と、中国人が不快に思っても無理はないと思います。
ただ、この一連の騒動の中で、私は、問題の写真をとったチェン氏の謝罪の言葉に驚きを感じました。
チャン氏は「私は中国で生まれ育った。自分の国を深く愛している」と述べました。
写真をみた私は、この言葉に納得します。
私は、「チャン氏は、(写真を通して) 中国女性は、強いんだぞと、胸を張っている」と感じるからです。
「えっ?」と思うのは、次からです。
チャン氏は「芸術家として、自分の作品を通して中国文化を記録し、中国の美を紹介する責任をしっかり自覚している」と述べました。
これでは、チャン氏は『私は、自分自身から生まれ出る作品を創造する芸術家ではなくて、中国御用達写真家です』と言っているも同然です。
さらに「中国の歴史について学び、関連のイベントにもっと出て、イデオロギーを改善させる。(中略)自分の作品を通して中国について語るよう努力していく」に至っては、『これからは中国(共産党)御用達写真家として頑張ります』と言っているも同然です。
チャン氏は、欧米社会でも認められた高名な写真家です。つまり、自由に芸術家として生きて来たし、自分が望めば、これからも自由な芸術家として生きて行けるのです。
最も、チャン氏が謝罪したのは、中国人としての処世術かもしれません。中国社会で生き抜くためには、『私は中国御用達写真家です』と発言しといた方がよいと判断しただけかもしれません。今現在は、中国国内にいるのかもしれませんし…。
ただ、それでも芸術家であるチャン氏から「(自分の) イデオロギーを改善させ、中国について語るよう努力していく」という言葉が発せられる事には、驚かずにはおられません。
ベルリンの壁があった頃には、時折ソ連や東欧の国から芸術家が西側に亡命してきましたが、亡命の理由の多くは「自由に芸術活動がしたいから…」でした。
今、中国では社会的に影響力があるがゆえに、芸能界への締めつけを強めています。人気者の芸能人が共産党の政策を批判して、その人気者の発言に触発されて、人々が日頃の不満を爆発させて暴動が発生するなどという事を、防止したいのでありましょう。
その為に、中国政府は次のような事をしています。
【(中国)当局は、…「健全なネット環境を築く」として、ネット上の芸能人の情報について「いびつな美意識」のほか、ぜいたくや享楽、拝金主義といった「よくない価値観」を助長したり、芸能人のスキャンダルを広めたりすることを禁止するなどとしています。

「いびつな美意識」について、中国政府はこれまでに「女性っぽい男性」を例に挙げていて、中性的な外見の男性アイドルをもてはやす風潮などを問題視したものと見られます。…

以上、NHK「中国 “いびつな美意識の助長を禁止” 芸能界への規制強化」 2021年11月23日 より抜粋】
中国の不思議な所は「中性的な外見の男性アイドル」のファンが当局の命令によって「これからは、自分が素敵と感じるアイドルが見れなくなる」現実を受け入れる事です。実際には、当局者の中にも、「中性的な外見の男性アイドル」のファンもいたでしょう。それなのに、自分が好きなアイドルが人目に触れないようにする仕事を命令通りに行う事です。

だから、「中国人は (芸術家でさえも)『自分の自由な心を殺して、発言して行動する事が、正しい処世術だ』という、選択をするのだ」と覚えておいた方がよいと思います。

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