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本当にそうなのだろうか?中国政府は、無理やり押かけて世界の海で魚を強奪すれば、世界各国から白い目で見られると気が付かないほどに、愚かなのだろうか? ●中国漁船団は世界支配の先兵


<世界最大の漁船団を誇り遠くアフリカや南米に操業範囲を広げている中国は、アメリカの先例に倣って世界に覇を唱えることになる
フィリピンと中国が領有権を争っている南シナ海のスカボロ―礁で漁を行う中国漁船 Erik De Castro-REUTERS
中国の攻撃的で時には違法な漁業のやり方が、アメリカとの新たな摩擦の原因になっている。
中国の漁船団は世界で最大だ。中国政府によれば、世界の海で魚を獲る中国漁船は約2600隻ということだが、一部の海洋専門家によれば、遠洋漁業に出る中国漁船数は、ほぼ1万7000隻にものぼる可能性がある。対してアメリカの遠洋漁船は300隻に満たない。
1982年に成立した海洋法に関する国際連合条約によると、国は、沿岸から200カイリの「排他的経済水域」のなかでは海洋資源を排他的に管理することができるが、それより先は公海となる。アメリカはこの条約を批准していないが、沿岸から200カイリをアメリカのオフショア排他的経済水域と宣言している。
巨額の補助金で支援された中国の漁船は、時には武装した海警船(沿岸警備隊)の護衛付きで、朝鮮半島の近くと南シナ海で違法に操業を行っている。これらの海域における乱獲で、中国は世界のイカ市場を支配するようになった。中国の漁獲量の半分近くは、他のアジア諸国と欧米に輸出されている。 中国の漁船は遠くアフリカや南米にまで操業範囲を広げている。漁師は正体を隠すために、国籍を示す旗を掲げない。
エクアドルは2017年、環境を保護しているガラパゴス海洋保護区で中国人漁師20人を逮捕した。そして中国の珍味であるフカヒレスープの主成分である何千匹ものサメを捕獲した罪で、懲役4年の判決を下した。
<漁業を利用した外交>
マイク・ポンペオ米国務長官は今年8月、中国が「沿岸の国々の主権と管轄権」を侵害する「略奪的漁業慣行」を続けていると批判した。
中国外務省は、ポンペオは「他の国々にトラブルを引き起こそうとしている」だけだと反論した。
ポンペオが批判したのは、漁業の問題にとどまらない。筆者は漁業とアメリカ外交が専門の歴史家としてかねがね指摘しているが、漁業はしばしば国が外交課題を遂げるための口実になる。
アメリカは建国からから20世紀にいたるまで、世界に広がる帝国を作るために直接間接に漁業を使ってきた。今は中国もその手を使っている。
国際法が海洋権の定義を開始したのは1800年代で、それ以前の漁業に対する制限は、完全に各国の強制力、即ち軍事力にかかっていた。
そのため、アメリカ独立戦争を終結させるためにイギリスとの間で1783年に結ばれたパリ条約の交渉中、後にアメリカ大統領に就任するジョン・アダムズは、イギリスは北大西洋で漁業を行うアメリカ人の権利を認めるべきだと主張した。北大西洋はタラとサバの豊かな漁場だったが、ねらいはそれだけではない。アダムスが1783年に獲得した漁業権は、まだ若い国家だったアメリカが世界の海に覇を唱える源泉になった。
<米漁業は外交と一体だった>
私の研究では、アメリカの漁業権はアメリカの独立国としての地位とともに認められたため、アメリカの外交官は長年、この2つを関連付けた。ジョージ・ワシントンおよびジョン・アダムズ大統領のもとで国務長官を務めたティモシー・ピカリングは1797年に、アメリカの漁業を「独立の最も公正な果実」と呼んだ。
それでも独立後何十年もの間、アメリカとイギリスは国際漁業をめぐって争い、新条約の締結や条約の再交渉が繰り返された。アメリカ側はあらゆる交渉において常に北大西洋での漁業権を主張し、これを守るためには戦争も辞さないと脅した。
1860年代までに、アメリカの外交政策は拡張主義路線に転じ、国際漁業はその重要な要素となった。1850年~1898年の間に、アメリカはアラスカ、プエルトリコ、ハワイ、グアム、フィリピンなど、数多くの海外領土を併合した。
今日、アメリカの漁船と軍の力が広く世界に及んでいるのは、このときに築いた「帝国」のおかげだ。
第17代大統領アンドリュー・ジョンソンのもとで国務長官を務めたウィリアム・ヘンリー・スワードは、1867年にアラスカとその周辺の豊かな北太平洋海域を購入した。さらにグリーンランドとアイスランドの購入を試みたが失敗した。 当時の記録で、スワードと同じ志を持つ後継者ハミルトン・フィッシュは、アフリカ北西部に近いカナリア諸島を海軍の拠点と漁船の基地として購入しようとしていたこともわかっている。
【引用中断】
 アメリカは、「独立時~19世紀に『帝国』を築いていた頃には、(欲しいと思う)外国の周辺に漁業を口実にして近づいて、隙を視て乗っ取ってしまう」という手法を使っていました。日本にペリーがやってきた時の口実も、日本近海で活動する捕鯨船の寄港です。
ですからアメリカ人には、【(中国の漁船が)武装した海警船(沿岸警備隊)の護衛付き】で、時に外国の領海にまで入り込んで魚を盗んでゆく中国の行為の目的は、「中国が『帝国』を築くためである」と思えるのでありましょう。つまり、中国が、かつてのアメリカの真似をして『帝国』を築こうとしていると解るのだと思います。
ただ私は、中国は「直接の領土にしてしまおう」と考えている訳ではなくて、中国の威勢=軍事力を見せつけて「中国に従え」と威嚇しているのだと思います。
最もこの意味で、中国は、20世紀後半以降に一般的となった海洋国際条約ではなくて、【(1800年代)それ以前の漁業に対する制限は、完全に各国の強制力、即ち軍事力にかかっていた】という頃の感覚を持ち続けていると、判断できます。
日本の尖閣諸島で、朝鮮近海で、フィリピンと中国が領有権を争っている南シナ海のスカボロ―礁で、武装した海警船の護衛付きで、数百隻の中国漁船がイナゴのようにやってきて、地元の漁船を蹴散らして、魚を根こそぎ持って行ってしまう。
本来であれば、母国の沿岸警備隊が中国漁船を追い払ってくれるはずです。しかし各国とも中国と事を起したくないので、遺憾の意を示すだけで、さほど抵抗もせずに魚の強奪を許してしまいます。こんなことが長く続くと、地元の漁師は「国は自分達を守ってくれない。理不尽でも中国には逆らえないのだ」と諦めの気持ちになってゆきます。
中国の狙いは、これであると思います。「中国の威勢を見せつけて、中国に従うしかないと、周辺国にあきらめさせる事だ」と思います。
しかしこのやり方は、19世紀には有効だったかもしれませんが、21世紀の現在はやりすぎると逆効果になる、外交のやり方です。
なぜならば、威嚇外交は相手国に頼る先がない時には有効ですが、頼る先がある時には相手国をそちらに向かわせてしまうからです。
19世紀のハワイとグアムには、アメリカに狙われた時に頼れる先がありませんでした。だから、なすすべもなくアメリカの軍門に下るしかなかったのです。
現在のフィリピンや朝鮮半島でも、もし頼る先が無ければ、中国のやりたい放題を止めることはできず、あきらめて中国の意向に従うしかありません。しかし現在は、アメリカと国際社会という頼れる所がありますので、フィリピンも韓国も一応の抵抗をするのです。
その上、ハワイもグアムもフィリピンも当時の状況では、力を合わせてアメリカに抵抗するということはできませんでした。けれど今では、日米が仲介しているせいもありますがベトナム・フィリピンは、アメリカの力を借りて南シナ海を中国に奪われる事を止める為に、それなりに協力を始めました。
さらに中国漁船が、南シナ海・東シナ海の狙ったところだけでなくて、南米・アフリカなど世界中の海で違法操業をしているので、日本・ベトナム・フィリピンが中国漁船の横暴を訴えると国際世論が(我が身の事として)同調します。
狙った所だけでピンポイントで威嚇漁業をしていれば、南米やアフリカの国々は中国批判を抑えます。これらの国々は、あまり国際正義に興味がないからです。だから、香港やウィグルに対する中国の人権侵害批判決議も、国連で採択されないのです。しかし、自国の領海・近海から、魚を強奪されれば怒ります。
確かにアメリカの言うとおりに、中国は「日本やアジア諸国を中国の意向に従わせるための、外交政策の一環」として、魚の強奪を行っているのかもしれません。ついでに魚も盗める一挙両得の政策なので、中国人がとても好きそうな外交政策です。しかし、「こりゃいいや」と世界中の海でやりだしてしまったので、却って中国を孤立させることになっているような気がします。
つまり、中国政府の目的は威嚇外交で魚の強奪は手段なのですが、現場の漁師の目的は魚の強奪で利益を出すことです。
例えば、日本の海に赤サンゴを盗みに来ていたのは、外交ではなくて単なる儲け主義だと思います。ふかひれをとりにガラパゴスへ行ってみたりもするのも、儲け主義です。
中国漁船が(外交上で威嚇外交をしない方がよい)ガラパゴスにまで出かけて行っているのは、漁船団の方からの「儲かるから、どこどこに行きたい」と要望を、中国政府が抑えきれないためだと思います。
日本のテレビで(どの番組だったかは忘れてしまったのですが)尖閣へ出漁準備をしている漁師が「尖閣へ行っても儲からないのだけれど、政府の命令だからいくのだ」という意味のことを言っていました。
このように威嚇外交に協力させて儲からなくてもいかける場合があるとするならば、時には政府の方が儲かる漁を支援しなくては、中国漁民の協力を得続けることはできません。
この為に外交上は不利になる要素があっても、ガラパゴスのふかひれをとりなどでは、政府の方が漁民に協力するのではないかと、私は推測しています。
一言で言えば、他国の近海でも魚の強奪は、本来は外交上の利益が目的だったのに、いしか魚の強奪が目的化して、外交上の不利益になってしまっているのです。
いかにも拝金主義の中国人らしい、成り行きです。
特に今年は、中国漁船が世界中の海で魚の強奪をする計画を立てているようなので、アメリカも警戒しています。
ただ私は、今年に限って言えば、中国が魚の強奪にはげもうと計画するのは、洪水・バッタ・豚コレラで食糧生産が打撃を受けているうえに、貿易戦争でアメリカやオーストラリアからの食糧輸入を減らしているからだと思います。
つまり、食糧危機だと思います。
お腹を減らした中国人の恐ろしさは、北京の共産党は誰よりも知っていると思いますので、今年の秋以降中国の食糧事情が悪化してくるにしたがって、世界中に中国漁船が出現するような気がします。
ですから中国の魚の強奪は、最初はアメリカの真似をした威嚇外交だったかもしれませんが、すでに目的と手段が逆転していて、アメリカ人がかつてやったという「魚外交」とは、根本的に違ってきているような気がします。
そしてまた、今年に限って言えば、中国のやりたいようにやってもらって、国際社会での中国の評判を大いに下げてもらった方がよいと思います。
では、引用を再開して、アメリカが20世紀にやったという「魚外交」の記述を付記します。
【引用再開】
<遠洋に影響を拡大>
20世紀初頭、漁業はアメリカの国際的な権力争いにおいて軍事力の陰に隠れた存在となった。 だが第2次大戦後、アメリカ政府は再び外交政策の課題推進に役立てるために海洋資源に目を向けた。今回、米政府はアメリカにより都合のいい世界秩序を築くために、「魚外交」とでもいうべき手法を使った、と私は考えている。
1940年代にアメリカの外交官は、漁場の健全な状態を長期的に損なうことなく、漁獲量を最大化する水準を示す「最大維持可能漁獲量に基づく漁業」という概念を持ち出して、海洋におけるアメリカの影響力を拡大した。
歴史家のカーメル・フィンリーが徹底的に調べ上げたことだが、このアイデアは科学的発見というよりも政治的なツールだった。だが米政府はこの見せかけの持続可能性の議論を使って、アメリカの漁師に世界の海を自由に支配する権利を与える一方、アメリカの海域に対する外国の侵略を制限する法律や合意を作り上げた。
トルーマン政権は1945年に最大維持可能漁獲量に基づく漁業を掲げ、特定の漁業を保護するための保全区域を宣言した。この論理で、アラスカのブリストル湾で操業していた日本のサケ漁師は完全に追い出された。
そのわずか数年後、米国務省はまた最大維持可能漁獲量を持ち出して、ラテンアメリカの海域におけるアメリカの漁師のマグロ漁に対する制限に反対した。
<冷戦中に発展した「魚外交」>
冷戦が進行した1950年代、魚外交は、ソ連に対抗するために同盟国との関係を強化するアメリカの役に立った。
アメリカ政府は、さまざまな国に漁船団を拡大するための補助金をふんだんに与えた。最も目立って恩恵を受けたのは日本で、船舶建造への補助金も戦争で荒廃した経済の復興に役立った。 アメリカはまた、アイスランドのような戦略的な場所に位置する漁業国に対する関税を引き下げ、アメリカが主な輸入品であるタラを安く買えるようにした。
もちろん、アメリカは相互防衛同盟や友好国への武器販売、直接の軍事介入で共産主義と戦った。しかし、魚をめぐる外交は冷戦の計画の一部だった。 こうした歴史を振り返れば、アメリカが現在、中国の巨大な漁船と遠洋トロール船を脅威と見なしている理由は一目瞭然だ。漁船を遠くの海に送りだした中国政府は、次はアメリカの先例に倣って軍事覇権を唱え出すにだろうからだ。
(最後に一言) 結局中国にはアメリカの真似は出来ないと思います。

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