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エルサルバドル送還後、殺害か 米国移住不許可の138人 米国からエルサルバドルに送還された女性ら=5日、サンサルバドル

【ロサンゼルス共同】国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは6日までに、米国への移住が認められず本国の中米エルサルバドルに送還された人のうち、2013年以降少なくとも138人が殺害されたとする報告書を公表した。トランプ米政権が難民認定を厳格化し「無情な政策がもたらす悲劇的な結果に目をつぶっている」と批判した。
 同団体は米国からの送還者や家族、政府、非政府組織の関係者と、米移民当局者ら計約150人に聞き取りを実施した。
 報告書によると、犯罪集団から脅迫を受けた警官だった女性は難民申請が認められず、送還された後に殺害された。犯罪集団に銃撃されたとみられる。【引用 終わり】
 「米国から送還されたエルサルバドル国民が 殺害される」とは、なんともやり切れぬ現実です。
 しかし これは別にトランプ大統領の責任ではありません。警官だった女性を殺したのは 犯罪集団です。米国政府ではありません。
 思い返せば、米国民は「イラクのサダムフセイン大統領を排除して、一時米国がイラク政権を指導すればイラクには民主主義政権が成立して、イラク人は幸せに暮らせる」と信じて イラク戦争を戦いました。
 しかし、その結果は全く違うモノでした。
 イラクにはシーア派の政権が登場して、クルド支配地域と迫害されるスンニ派住民の怒りが収まらず、結局国内は分裂状態になっています。そして米国は悪者だという国際的評価が押し付けられたのです。
 ですから、もし米国がエルサルバドルの政権を武力で倒して、(善意から)一時占領して選挙をしても、結局はイラクと同じ状況になって、米国は「国民の税金を使って、戦死者をだして、悪者になる」という結果になります。
 なぜならば「政治は、その国の国民を写す鏡である」と申します。ですから 現在のエルサルバドルの政府はエルサルバドルの国民が作って支えているモノであり エルサルバドルで暗躍する犯罪集団もまた エルサルバドルの国民が形成しているのです。
ですから、米国が何をしてもエルサルバドルはかわりません。事実 エルサルバドルでは 選挙をして政権選択しているのですから…
日本は 36年間朝鮮半島を統治して 日本と同じ社会を創ろうとしました。現在の価格に直せば60兆円という膨大な 援助をして、です。朝鮮総督府の予算の25%は、日本からの援助だったそうです。36年という年月をかけて それ程の事をしても 朝鮮は朝鮮に戻りました。
ですから1~2年ちょっとやり方を教えれば、民主的な法治国家が生まれると思う方がおかしいのです。
エルサルバドルで 犯罪集団(ギャング組織)が 大手をふって好き勝手出来るのは(警察が 治安を維持できない)のは、まず多数派の警官に賄賂が効くためです。
そして 多くの国民が 恐怖から 犯罪集団(ギャング組織)に手を貸したり 見て見ぬふりをするからです。そしてその国民は 自分も賄賂を使います。ギャングから警察から自分の身を守る為に、あるいは自分が利益を得る為に…。
つまり エルサルバドルで法治が機能せずに、治安が維持できないのは、国民の隅々までに「賄賂を払って 法の網の目をくぐって 自分が利益をえるのは当然だ」という価値観がいきわたっているからだろうと思います。
即ち「不法な手段で 米国に潜り込もうとする」その手法を良しとする、「その国民の価値観が、自らの母国を破滅させているのだ」と私は考えます。
「不法な手段で 米国に潜り込もうとする事」は良い事
=「自分に都合の悪い 法律は守らなくても良い」
→「不法な手段で 国民の富を収奪する事」は良い事
→「不法な手段で 自分に逆らう人間を殺害する事」も良い事となってしまうからです。

 ですから、エルサルバドルで治安を回復させて、国民が安心して暮らせるようになるには、国民自身の価値観が「自分に都合の悪い法律も 守らなくてはならない」に変化する必要があります。

 しかし これには長い年月が必要です。世代を重ねて、50年100年150年という年月です。なぜならば 人の価値観は青年期までに作られて、大体生涯変わらないからです。

ですから 昨日まで 警官に賄賂を渡して 様々な違反を逃れていた犯罪集団(ギャング組織)は、 統治者が変わっても、今日から法律を守るようにはならないのです。そして 昨日まで賄賂を貰って法律をないがしろにしていた警官が 今日から賄賂を拒否するようにはならないのです。

 ですから 国民が民主的法治国家を造ろうとするならば、まずは「国民が自分達で 法律を守る。警察に賄賂を渡さない」運動から始めなければなりません。
なぜならば 警察や軍という実力組織が、法律を守る国民を守護すれば、国民は安心して暮らせるようになります。
国民が 安心して暮らせないようにできる二つの組織は、身勝手な独裁政権と 強大なギャング組織ですが、警察と軍が国民の側に立てば この2つの組織は国民を苦しめる事に支障をきたします。
具体的に言えば 警察や軍が、次のように行動すれば国民は守られます。
1 政府に「逆らうモノを痛めつけろ」と言われても拒否。2 ギャング集団から「不法な略奪や殺人を見て見ぬふりをしろ」という要請を拒否。
つまり 警察や軍という実力組織が、その一「政府からの優遇・賄賂で 政府の命令通りに動く」、その二「ギャング組織からの賄賂で 見て見ぬふりをする」から 政府やギャング組織が 国民を苦しめる事が出来るのです。
私は この悪循環を遮断しようと思えば、「国民の一人一人が 警察に賄賂を渡さない」ことが 第一歩になると思います。
多分 殆どの末端の警察官の実入りの大部分は、国民からの賄賂だからです。国民からの賄賂がなくなると 警察官は生活できなくなります。警察官と軍人は自分の生活できなくなると、政府の命令を聞かなくなるので、国民がやらなくても警察と軍が政府を倒してくれるのです。
ですから 国民の立場で出来ることは 「自分だけが得をしようと思って、警察に賄賂を渡すのをやめる事である」と、私は考えます。
個人が賄賂をわたせは、警察は個人の不法を許す。
政府が賄賂を渡せば 警察は政府の命じるとおりに国民を弾圧する。
ギャングが賄賂を渡せば 警察はギャングが自由に犯罪ができるようにする。このような 警察の賄賂漬けが 治安が崩れる源だからです。

これは 一朝一夕ではできません。でも不可能ではないと思います。
なぜなら、エルサルバドルの犯罪組織は 米国へ移民した人たちの中から発生して 祖国の政府・警察の中にも根をはってしまったものだからです。
つまり イタリアのマフィアとそっくりですが(マフィアよりも過激ですが…)、イタリアではマフィアとの戦いを数十年繰り広げて ほぼ勝利しているようなので…。

最後に、エルサルバドルの現状を伝える 記事2編を付記します。

●なぜエルサルバドルの人々は米国への逃亡を選ぶのか 
北へ向かう人の波は今なお止まず
2019.03.02 この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2019年3月号の特集から抜粋したものです。

エルサルバドル北部にあるチャラテナンゴの刑務所。狭い雑居房に詰め込まれているのは、犯罪組織「MS-13」のメンバーだ。対立する組織ごとに刑務所を別にして暴動を避けているが、収容者が多過ぎて定員超過になっている。PHOTOGRAPH BY MOISES SAMAN
中米のエルサルバドルで、暴力が日常化している。長く続いた内戦で噴出した社会の対立が、いまだに尾を引いているのだ。

 1980年、貧困層から土地を奪ってきたエリート層と軍事政権に対し、極左ゲリラが蜂起した。泥沼化した内戦が1992年に終結するまでに、死者は7万5000人、家を失った人は100万人を超え、数十万人が米国へ逃げた。彼らは全米各地で職を見つけ、横のつながりをつくり、本国に送金した。

 そんな移民の子どもたちが、ロサンゼルスで犯罪組織マラ・サルバトルチャ、通称MS-13を結成した。すでにあったライバルのバリオ18に入る者も多かった。組織間の抗争はしだいに激化。警察の取り締まりも厳しくなった。

ついには法律が改正され、犯罪歴をもつ移民の国外退去処分が容易になると、1990年代後半には、中米に送り返される犯罪者は年間数千人にのぼった。すると彼らは、政府の力が弱く、貧困も深刻な本国の状況につけ込み、独自の社会と規則をつくって、組織を急速に広げていった。

殺人発生率は人口10万人当たり61人

 エルサルバドル政府によると、こうした犯罪組織に関わる人間は推定で6万人。組織間の覇権争いは、人口640万人の小さな国に深い亀裂を生み、分断は広がるばかりだ。2017年の殺人発生率は、人口10万人当たり61人にのぼっている。

 過激な暴力と貧困に絶望し、エルサルバドルをはじめ中米諸国から米国へ逃げ出す者が続出した。そこでは何世代も前から中米の人々が移住し、犯罪に関わることなく、尊厳をもって暮らせる安全な社会を築いていたからだ。しかし、あまりに移民の流入が続くことから、米国政府は今、エルサルバドル人の大量送還をちらつかせている。

 現在、米国内では約20万人のエルサルバドル人に一時保護資格(TPS)が与えられている。武力衝突や大規模な自然災害で、本国に戻ると危険がある場合、ビザがなくても滞在が許されるというものだ。

 2018年1月、米国政府は19年9月をもってエルサルバドル人のTPSを打ち切ると発表したが、これに米連邦地方裁判所が待ったをかけた。最終決定までは米国で生活し、仕事ができるという仮処分命令が下ると、メキシコとの国境付近には大量の移民が押し寄せた。

 ドナルド・トランプ大統領の「不寛容」移民政策により、南西部の国境で移民の家族がばらばらになって拘留されるケースも増えた。だが、犯罪組織による敵対組織や当局との終わりのない報復合戦のあおりを受け、北へ向かう人の波は止まらない。エルサルバドルだけでなく、グアテマラやホンジュラスも同様だ。2018年秋には、中米諸国から5000人を超すキャラバンが米国に向けて移動を始め、この問題は再び世界の注目を集めた。

●【AFP記者コラム】死を見る目──エルサルバドルのギャングたち

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• エルサルバドル・イサルコの厳戒警備の刑務所へ移送されて来たギャングのメンバー(2015年4月24日撮影)。(c)AFP/Marvin Recinos
【2015年6月2日 AFP】朝の5時に電話で起こされるのは、間違い電話か緊急事態のどちらかだ。この金曜日は、間違い電話ではないほうだった。

電話をかけてきたのは、私の情報提供者の一人。エルサルバドルの悪名高いギャングのメンバー数百人が、国内東部の刑務所2か所から、首都サンサルバドルの西方イサルコにある最高レベルの警備の刑務所に移送されるという情報だった。
この数週間、エルサルバドルでは当局が囚人たちの大規模な移送を行っていた。収監されているギャングのリーダーたちと、塀の外にいる彼らの部下たちとの連絡ルートを断つ戦略の一環だ。リーダーであることが判明した囚人たちは、警備がより厳戒な刑務所へ送られる。人口600万人のこの国で、今年に入ってから3か月の間に組織犯罪絡みの抗争によって1124人が死亡した。犠牲者は兵士や警官、巻き込まれた民間人、そして対立するギャング同士のメンバーたち。急増したこうした事件を絶つことが、大規模な囚人移送の狙いだった。
私はベッドから飛び起きて、イサルコの刑務所へ向かった。そこには、シウダード・バリオスとチャラテナンゴの刑務所から400人の囚人が移送されてくる予定だった。朝8時頃に到着すると、すでに最初の一団の移送が終わり、門は閉じていた。悔しい思いに駆られた私は、情報提供者に電話した。すると、ギャンググループ「マラ・サルバトルチャ(MS13)」のメンバー約300人がまだシウダード・バリオスを出ていないので、待っていろと言われた。
待っている間にもメッセージが送られてきた。「移送は遅れている。刑務所内で武器と違法薬物が見つかったため、バスはどこへも動く気配がない」。どうやら長期戦になりそうだった。私はパトロール中の兵士や、遠距離の移送に苦情を述べている囚人たちの家族、記者仲間たちと雑談を始めた。これも仕事のうちだ。
警察車両に囲まれながら、2台のバスが姿を現したのは、午後5時だった。1台目は窓がスモークガラスだったが、2台目の窓はいくつか開いていた。今しかない、と思った。
私は開いている窓にカメラを向けて、シャッターを切り始めた。頭の中にあったのは、自分の写真のことだけ。護送車の中で、上半身裸のまま後ろ手に手錠を掛けられていた囚人たちの罵声も、恐ろしい顔も、気にならなかった。
急いでレンズを変え、埃で汚れた窓の外から囚人の目を撮ろうとカメラを向けたら、ファインダーに突然、タトゥーだらけの顔が飛び込んできた。私が写真を撮っていることに気づいた男は、キスしてみせて大笑いした。数分後、刑務所の門が開き、バスが中へ入って行った。私が写真を撮ることができたのは、わずか2分だったが、仕事はしっかりできた。
これを書いている今も、あの囚人たちの目がはっきりと思い出される。ギャングの冷徹な視線を撮影するときは、いつも背筋が凍る思いがする。だが、こうした写真によって、この美しい場所にギャングの暴力がはびこるというこの国の残酷な現実を、世界に伝えることができる。
エルサルバドルでは殺人事件が起きない日など1日たりともない。私はこうした「死」をギャングたちの目を通して、また恐怖の中で生きざるを得ない人々の目を通して見ている。そうした恐怖心は人々を麻痺させ、生活のすべてに影響を及ぼす。
公式の統計によると、エルサルバドルでは計6万人前後のギャングが活動している。加えて、1万3000人が刑務所に入っている。最大勢力である二つの組織、「マラ・サルバトルチャ」と「バリオ18(Barrio 18)」は麻薬密売の覇権をめぐり、血みどろの縄張り争いを繰り広げている。さらに小規模なギャング組織も存在している。
こうした中では、誰がギャングで誰がそうでないか、見分けなどつかない。バス停で毎日顔をあわせている人はギャングのメンバーかもしれない。街で時間を聞いてきた人もそうかもしれない。彼は銃を持っていなかっただろうか?エルサルバドルで私たちは、明日のことを考えずにその日その日を暮らしている。真隣にいる人物が一体何者なのか、決して分からないからだ。

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