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無理やり「アメリカが派遣する日本・中国駐在大使を交換した事が結局は良かった」と言いつくろっても、結果はむなしいだろう。やはりアメリカは外交音痴で、「相手国を、自分の思考で誤って認識する」事をやめられないようです。【引用開始】(写真 ランボーの異名を持つ次期駐日米国大使・ラーム・エマニュエル氏 ウィキペギアより) ●中国に行くはずだったエマニュエルが駐日大使になった理由


(今現在) アメリカの各国駐在大使を格付けすれば、中国と日本の大使が1位と2位だろう。
今年8月に、ラーム・エマニュエル前シカゴ市長が駐日大使に、ニコラス・バーンズ元国務次官が駐中国大使に指名されたことは、2つのポストが今後の国際政治にとっていかに重要かを裏付けるものだ。
バイデン米大統領の人選はまさに絶妙だった。 
人選の舞台裏を知る人物によれば、バイデンは当初、エマニュエルを北京に、バーンズを東京に送りたがっていたという。
確かに気性の激しい政界の大物を駐中国大使に据えることは、中国に対抗するアメリカの本気度と強い姿勢を伝えるという意味では合理的だ。だが、今年3月にアラスカで行われた外交トップ同士の会談が激しい非難の応酬に終わったのを受けて、バイデンはアメリカで最も有能な職業外交官という声もあるバーンズを起用することにした。…
バーンズ(が)外交官の道を志したのは17歳のとき。ベトナム戦争の失敗に強い衝撃を受け、軍事力の行使を回避するために外交の分野で働きたいと考えたからだ。
学生時代から世界の情勢に通じた「万能選手」を目指し、…中東や西アフリカ…旧ソ連担当責任者を務めた。…基本的には中国側と友好的に仕事をするだろうが、権威主義体制の「輸出」を含む中国の戦略的主張には猛反対するはずだ。冷戦時代の経験を生かし、気候変動や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への対応などでは前向きに協力を模索する一方、クアッド(日米豪印戦略対話)を通じて中国を牽制するだろう。
一方、短気でけんか早いエマニュエルの駐日大使起用は意外感もあるが、政治家としてのキャリアを考えれば資格は十分にある。…ただし注目すべきなのは過去の肩書ではなく、この人物の個性だ。エマニュエルは10代の頃、レストランで働いているときに指を切ってしまった。だが、病院に行く代わりにミシガン湖で泳ぎ、ひどい感染症になって危うく命を落としかけた。このときは40度以上の高熱を出しながらも何とか生き延びたが、指の一部を失ってしまった。
ステーキナイフをテーブルに突き刺す
「ランボー」のニックネームを持つエマニュエルの性格を最もよく表しているのは、クリントン大統領が選挙で勝利したときの晩餐会でのエピソードだ。その場に居合わせた関係者の話によると、エマニュエルはクリントンの「敵たち」の名前を1人ずつ大声で叫び、そのたびにステーキナイフをテーブルに突き刺したという。
駐日大使となったエマニュエルは、日本の当局者を怒らせるだろう。だが同時に、中国に毅然とした態度で臨むよう日本を強力に後押しするはずだ。…当初、お互いに逆のポストに就くと思われていたバーンズとエマニュエルだが、最終的には落ち着くところに落ち着いたと言えそうだ。
サム・ポトリッキオ(本誌コラムニスト)
【引用終わり】
このアメリカ大使の人選は、当初にも問題があったけれど、逆にした結果、最悪になったと、考えます。
中国には一応は外交部というのがありますが、外交の実権は習近平主席にあります。即ち、中国外交はワンマン方式(リーダーシップ)です。ですから、駐中米国大使館が、本国の要望を通そうとして、中国外務担当者と交渉を重ねて合意して上に上げても、習近平主席の気分次第ですべてが泡と消えるのが中国外交です。
また、中国外交の基本方針は、「相手国を騙して友好的気分にさせて、中国が実をとる」です。故に、そもそも担当官同士で積み上げた結果は、相手国にとっては、いずれはすべて無駄になるのが実情です。
ですから私は、中国にアメリカで最も有能な職業外交官を送っても、却って中国の術中にはまる可能性があると思います。
最も、バーンズ氏が「中国では、職業外交官の枠を超えて米国を代表する政治家として、習近平主席に口をきこう」と決心しているのならば、駐中米国大使としての活動もできるかもしれません。
但し、それには「習近平主席自身が、バーンズ大使を単なる職業外交官だと判断しない」という前提が必要です。つまり、習主席に「バーンズ大使にこれを言われたらヤバイ」という恐怖心を、もたせることができるかどうかがカギだと思いますが、中国は、相手の地位・背景によって上下関係を決めて、「下が上に従う」ことで社会の平穏を保っているので、習主席が。職業外交官出身のバーンズ大使を「自分が無視できない、米国の大物と判断する」確率はそう高くないと思います。故に、アメリカで最も有能な職業外交官を送っても、バーンズ氏は中国という社会では、その実力を十分に発揮でないような気がします。
一方で、外務当局が担当官同士で積み上げた結果が、尊重される日本(即ち、ボトムアップの国日本)では、アメリカで最も有能な職業外交官という呼び声が高いバーンズ氏が大使として赴任すれば、新しい日米関係に移行できたかもしれません。
職業外交官出身のバーンズ氏ならば、地味だからこそ問題視されずに変革される事もなく、日米関係を阻害している外交的な案件が一つ一つ取り除いてゆくことが出来たかもしれません。
しかし、怒りっぽい政治家出身のエマニュエル氏が駐日大使になると、「エマニュエル氏が日本の気に入らない事に怒る」→「日本側は、○○法によってこうなっている」と説明する。→「エマニュエル氏が日本の法律を変えろと怒る」→「日本側は内政干渉に不快になる」→「日本側は、エマニュエル氏を床の間に奉って、可能な限り無力化する対策をひねくりだす」という事になり、日本は米国に心の壁を築いてゆくことになります。
即ち、ボトムアップの国日本では、現場の担当者がその気にならないと、何でも骨抜きにされてしまうので、外交の現場が解っていないのに「俺様が言うのだからこうやれ」という横車押しの政治家出身大使は、嫌われるだけで何の実績も残せぬことになりますので、エマニュエル氏の日本大使就任は日米関係においてはマイナス要因でしかありません。
最も、元シカゴ市長程度では、中国の習近平主席は「無視できない大物とは感じない」かもしれませんので、エマニュエル氏が中国で好き勝手な発言をして、米中関係を破壊するという最悪の事態を避けるという事が、今回の日中派遣大使の交換だったのかもしれません。
というよりは、エマニュエル氏を(本人が納得しうる立場に)何とか処遇しなければならないという中での、パズルだったのかもしれません。
とすれば、私の観る所では、エマニュエル氏に最適な処遇は英国大使でした。英国でなら、米国大使が多少変な事威勢が良すぎる事を発言したとしても、米英の特別な関係は揺るぎませんし、バッキンガム宮殿に招待される事を念頭に置けば、エマニュエル氏も喜んで受け入れたでしょうから…。
いずれにしても、無理やり「アメリカが派遣する日本・中国駐在大使を交換した事が結局は良かった」と言いつくろっても、結果はむなしいだろうと思います。ランボー・エマニュエル駐日大使が派遣されると、日本側は「床の間に奉って、可能な限り無力化する」という、70年前のGHQ対策をまた始めるだろう。
そうです。
アメリカ側は、今に立っても「戦後日本を自分達が民主化させた」とか「自分達が経済発展の基礎を築かせた」とか、勘違いをしているようです。
そして、アメリカ人は、「日本では民主化に成功したのに、イラクで成功しないのはなぜだろうか?」などという、トンチンカンな疑問に頭を悩ませています。
即ち、アメリカが外交で失敗ばかりしているのは、外から眺めて自分達の視点で、その国を認識するからです。だから、「世界に自由を!」とか正義の旗印をあげて、戦争をして勝った後に賠償金をとるのではなくて、膨大な援助をしながら恨まれるという「骨折り損のくたびれ儲けの国」になってしまっているのであります。
だからまあ、日本としてはエマニュエル大使の発言に不快になっても色にも出さずに、アメリカは(独善的が故に)外交音痴なのだと思い定めて、揺れない事が肝要だと思います。

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