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ロシア人の6割が「ソ連崩壊を残念に思う」とは、どういう意味だろうか? ただ、プーチン大統領が「ウクライナ奪還で自分の人気が上がると判断する」ような気がして、心配です。

【引用開始】ソ連崩壊後の独立した連邦構成共和国
1.アルメニア 2.アゼルバイジャン 3.ベラルーシ 4.エストニア
5.ジョージア 6.カザフスタン 7.キルギス 8.ラトビア 9.リトアニア
10.モルドバ 11.ロシア 12.タジキスタン 13.トルクメニスタン
14.ウクライナ 15.ウズベキスタン
(図の引用 ウィキペギアより)
 
●ソ連崩壊、6割が「残念」 10年で11ポイント増 ロシア世論調査 (12/26(日) 7:11配信 モスクワ時事)
1991年12月のソ連崩壊から25日で30年が過ぎた。  ロシアの調査機関「世論基金」が最近発表した調査結果によると、回答者の62%が「ソ連崩壊を残念に思う」とし、「残念に思わない」(21%)を上回った。「回答困難」は17%。同機関による2011年12月の同様の調査では「残念」は51%で、10年間で11ポイント増えた。 
今年の調査で「残念派」が一番多かったのは、46~60歳の世代だった。ロシアのプーチン大統領は今月放映のドキュメンタリー番組で、ソ連崩壊は「圧倒的大多数の国民と同様に(自らにとっても)悲劇だった」と振り返っている。11年調査でも「残念に思わない」は19%で、「残念」が多数派である点は不変。  
ソ連崩壊でロシアが「敗北した」と考えているのは45%で、「勝利した」は32%だった。ソ連復活を「望む」との回答は52%と「望まない」(31%)を上回った。  
旧ソ連構成国が将来再統合する可能性を問う質問では、47%が「統合は不可能」と答える一方、「全ての国」「大部分の国」「幾つかの国」と規模に違いはあるものの何らかの形で統合はできるとする見方が計45%に達した。
プーチン氏は今年に入り、安全保障上の観点から、旧ソ連圏でのロシアの影響力維持にこだわる姿勢を鮮明にしている。  調査は今月10~12日にロシア各地の1500人を対象に実施され、21日に発表された。 
【引用終わり】 
「ソ連崩壊を残念に思う」とは、どういう意味だろうか? 
「ソ連時代の方が、何かがよかった」とは、どういう意味だろうか?
この《残念》は「ソ連時代の方が、生活が楽だった」といった、自分の生活実感からくる《残念》なのだろうか?
それとも、「自分が国際的に東側のトップのソ連の国民であった時の方が、今の君臨できないロシアの国民でいるよりも気分がよかった」という《残念》だろうか?
この《残念》は、何なのだろうか?
私なりに、考えてみたくなりました。
 
まず、「ロシア人はソ連を嫌悪していない」=「ソ連を懐かしむロシア人が多い」という事は、ソ連時代でも、ロシア人にはさほど不満なく生活し、自由を束縛されている気がしなかった人も少なくないという事なのだと思います。
一方で、旧ソ連の共和国の一つで1990年(ソ連の崩壊以前に)、最初に独立回復を宣言リトアニアの人達は、ソ連を「繰り返したくない過去だ」と考えています。
リトアニアは、中国に圧迫される台湾に深く心をよせて、台湾の大使館に相当する「台湾代表処」の設置をEUで初めて受け入れたことで、中国を怒らせて、中国から「中国と取引する多国籍企業にリトアニア製品のボイコット要求」される事態になっても、ひるんでいません。
 リトアニアのマタス・マルデイキス国会議員が産経新聞のインタビューで「台湾は中国のサイバー攻撃や情報戦、軍事威嚇に直面している。われわれがロシアの脅威にさらされている状況と、極めて似ていることに驚いた」「台湾を威嚇(いかく)する中国の手法は、欧州の小国を揺さぶるロシアと同じ。台湾の民主主義が崩壊すれば、ドミノ現象で欧州にも波及する」「中露の動きは連動している。台湾支援は、欧州の安全保障に直結する」と述べて、台湾とリトアニアは、力を合わせて、中国・ロシアから支配される未來を招来しないという決意を述べています。
 つまり、ソ連時代に支配民族であったロシア人は(生活が苦しく・言論の自由が制限されていたけれど)ソ連にさほどの不満を持たずに生活していたので、「自分達が支配民族であった」過去を懐かしみ、被支配民族であったリトアニア人は「ロシア人に支配されていた」過去を嫌悪しているという図式になります。
 ノーメン・クラツーラと呼ばれたソ連共産党のエリート層だけでなく、「極々一般のロシア人にまで、他の民族を支配していた事で生活上の利得が分配されていたのか?」は、私には解りません。
 ただ、大英帝国が植民地から得た富は、英国の貧困層には分配されませんでした。ですからソ連でも、極々一般のロシア人は、ソ連が多民族を支配するか否かで、はっきりと実感できる程の個人的な現実的な損得はないような気がします。
 現に、ソ連時代には、ロシア人だって(物資不足のために)食料を買うために大行列していたのでありますから、ソ連時代の生活は楽ではなかったはずです。
それなのに、ソ連が懐かしいという事は、やはり「自分が国際的に東側のトップのソ連の国民であった時の方が、今の君臨できないロシアの国民でいるよりも気分がよかった」という事でありましょうか?
例えば、オリンピックで自国が金メダルを沢山とると、自分が金メダルを取ったわけではないので、自分にとっては何にも関係がないのに喜んでいる人は結構います。自分が属する集団が「凄い!」と感じると、我がこととして喜ぶ人は少なくないのです。
とすると、ロシア人の6割もの人が「東側のトップ・ソ連の支配民族ロシア人の一員として、多民族の上に立っていると自分で勝手に感じていた時は、気分がよかった」と残念がっていると、考える事が出来るような気がします。
そして、このようなロシア人の国民感情があれば、プーチン大統領がウクライナ東部をロシアのモノにしても、ロシア国内では反発は少なくて、歓迎する人の方が多いのかもしれません。
ロシアには、「ウクライナ東部を侵略すれば、酷い経済制裁を受けて、自分の生活が苦しくなる可能性が高い。そして、ウクライナ東部をロシアが併合しても、自分の生活がよくなるわけではない。だからウクライナ東部を侵略には反対だ」という、個人の生活面からの現実的判断をする人は少数派で、「自分が属するロシアという国家が『凄い!』と感じる事が嬉しい」と、自分の感情・気分で判断する人が多数派なのかもしれません。
つまりこうした、ロシアの国民感情があるから、プーチン大統領が「ウクライナ奪還で自分の人気が上がると判断する」のかもしれません。つまり、ロシアが危険なのは、「ウクライナ東部がロシア領になると、自分の気分がいいので支持します」という国民が、沢山いるからなのかもしれません。
ですから私は、ロシア国民の皆さんが、「ウクライナ東部がロシア領になっても、自分には何の得もなく、損失だけだろう」という現実に目覚めて頂ければいいな、と思います。

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