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朝日と産経は、同じ事を伝えるのでも見出しが違う。「朝日…セルビアとコソボ、経済関係正常化 米大統領が成果誇示」「産経…セルビアとコソボ、エルサレムに在イスラエル大使館を開設へ 米仲介」 ●セルビアとコソボ、経済関係正常化 米大統領が成果誇示

ホワイトハウスで4日、セルビアのブチッチ大統領とコソボのホティ首相との署名式に参加するトランプ米大統領(中央)=AP
トランプ米大統領は4日、旧ユーゴスラビアのセルビアとコソボが経済関係の正常化に合意したと発表した。米国の仲介で、両首脳は同日、ホワイトハウスでトランプ氏を交えた3者会談をおこなった。トランプ氏は「歴史的な日」と外交成果を誇示し、完全な関係正常化への期待を示した。
 セルビアの自治州だったコソボは独立を目指して武装闘争し、1990年代に紛争に発展。コソボは2008年に一方的に独立を宣言したが、両国は互いに国家承認していない。
 両国の署名式を開いたトランプ氏は「雇用の創出と経済発展を重視することで、両国は重大な進展に至った」と強調。セルビアのブチッチ大統領は「両国には大きな違いがあるが、大きな前進」、コソボのホティ首相も「完全な関係正常化に向けた大きな前進」と語った。米高官によると、合意には両国間の道路や鉄道網の整備などが含まれる。  
トランプ氏はまた、イスラム教徒が多いコソボとイスラエルが国交正常化と外交関係樹立に合意し、セルビアは来年7月までにエルサレムに大使館を移転させることも明らかにした。8月にはイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化合意を仲介しており、それに続く成果としてアピールする狙いがある。(ワシントン=渡辺丘)
●セルビアとコソボ、エルサレムに在イスラエル大使館を開設へ 米仲介 9/5(土) 10:42配信【産経新聞】
トランプ米大統領は4日、米国の仲介で旧ユーゴスラビアのセルビアが、在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転し、同じく旧ユーゴスラビアのコソボが、イスラエルと外交関係を樹立すると発表した。  
AP通信は、トランプ政権が後押しするイスラエルの国際的な立場の改善により、11月3日の米大統領選を控えるトランプ氏にとっては、外交上の成果になると伝えた。  
セルビアは月内に通商事務所をエルサレムに開設し、来年7月に大使館をテルアビブから移転するという。  
現在エルサレムに大使館を置くのは米国とグアテマラのみ。一方で、東エルサレムを「将来の独立国家の首都」と位置づけるパレスチナは反発している。  
ロイター通信によると、イスラエルのネタニヤフ首相は声明を出し、「コソボはエルサレムに大使館を開設する初のイスラム教徒が多数派を占める国になる」と述べた。  
セルビアとコソボは、経済関係の正常化でも合意した。コソボの2008年の独立宣言以来、対立が続いてきたが、投資の促進や雇用の創出で協力を進める。
(ワシントン=平田雄介)【引用終わり】
朝日新聞と産経新聞では「同じニュースを伝えるのに、記事のまとめ方で、全く別の印象になるのだな」と改めて感心しました。
朝日と産経は「アメリカとセルビアとコソボの大統領がワシントンで、3者会談をした」という、全く同じ事柄を伝えています。
この会談で決まった事は2つです。
その一…ユーゴスラビアの停戦の後でも、冷たい絶縁状態だったセルビアとコソボが、《アメリカの仲介》で、経済関係の正常化に合意。
その二…セルビアとコソボが《アメリカの要請》で、イスラエルとの友好関係を進める。セルビアは大使館をエルサレムに移す。イスラム国家のコソボがイスラエルと外交関係を樹立する。
朝日は「3者会談の結果、その一になった。ついでにその二が決まった」と伝えました。
産経は「3者会談の結果、その二が決まった。前段としてその一が採用された」と伝えました。
朝日の記事では「ユーゴスラビアが少し平和になるのかな?」とバルカン半島の中だけの動きの様で、「和平に向けての一歩前進という印象」が強くなります。
逆に、産経の記事では「イスラム国家がまた一つイスラエルと外交関係を樹立すると、中東でのイスラエル承認の動きを後押しする事になりそうだ。そしてパレスチナはより強く反発するだろう」という、中東での国際的な動きの中で「新たなる緊張関係が広がるという印象」が強くなります。
ワシントンにいて、(たぶん)同じ記者会見に出席していても、朝日新聞の渡辺丘記者と産経新聞の平田雄介記者は、別の事に注目する。
「人間の思考というものは、本当に色々だなあ」と改めて思います。
さて、人の意見は色々です。
私・長谷川七重は、この3者会談の舞台裏を、何の根拠もありませんが次のように推測(妄想)します。
◎仕掛け人=アメリカ合衆国
◎アメリカ合衆国の目的。
目的1…イスラエルの応援
イスラム教国の中でイスラエルの国家承認国を増やす事で、パレスチナへの内々の援助を細らせて反イスラエル武力闘争力を弱らせる。最終的な目標はサウジアラビアのイスラエル承認だが、その道筋として、イスラム教国に一国ずつ働きかけて(=援助を約束して)イスラエルと外交関係を樹立させる。
 今回は、「経済の立て直しに、超大国アメリカが一役買う」という実利をコソボに突き付けて、イスラエルとの外交関係を樹立させた。ついでにセルビアの大使館を、エルサレムに移転させる事にも成功した。
目的2…中国への嫌がらせ
イスラエルと外交関係を樹立させる為にコソボの経済の回復に一役買うという目的を達成するためには、隣国セルビアとの関係改善は欠かせない。
という事は、ここでアメリカにはセルビアを説得する「何かを約束する」必要が出てくる。アメリカがセルビアに何を約束したかは、解らないながら、現在、中国擁護発言を繰り返しているセルビアにアメリカが乗り込むことで、セルビアの中国傾斜に一石を投じることになる。
最もセルビアは中国一辺倒ではなくて、EU加盟を目指してもいます。即ち、政治家が「中国に抱き込まれている人達」と「欧米社会の一員でいたい人達」に別れている状況ですので、アメリカは欧米社会の一員でいたい人達を応援することでセルビアでの中国の影響力を減退させようとしている。
◎セルビアとコソボの目的。
経済状況をよくするために、大したことではないからアメリカの要望(イスラエルとの関係改善)を受け入れる事にした。
◎中国の誤算。
中国は、セルビアの政治家の一部を(恐らくは賄賂漬けにして)囲い込んでいるのだと思います。しかし独裁国家であれば独裁者を篭絡すればよいのですが、民主的な選挙を行う国では、せっかくその時の首相を篭絡しても、政権が交代すれば新首脳は中国の意向を聞いてくれなくなってしまいます。
即ち、賄賂外交の効果は長続きしないのです。また有権者は賄賂・汚職を嫌いますので、政府首脳が中国から賄賂を貰って中国の子分のように振舞う事を嫌います。つまり中国の賄賂外交は、有権者である一般国民に中国への嫌悪感を育てることになります。
ですから長い目で見れば、中国が外国首脳から(おそらく賄賂で)「中国を支持する」という発言を買う事は、それぞれの国で「中国は汚職国家である」と宣伝する事にもなります。
私は、「賄賂で国際的な声望を、買い続ける」ことは不可能だと思います。なぜなら、世界70億人に賄賂を払う事は誰にもできないからです。賄賂は、誰かに払って他の人には払わないモノです。ですから貰わない人は、絶対的に賄賂を糾弾します。だから「賄賂で立つ人は、賄賂を貰えない(又は、貰わない)人に倒される」のです。
つまり賄賂に頼っているようでは、中国が国際社会の主流派になる事はありません。理由は簡単で、いかな中国でも、70億人は買収できないからです。
このように私の見立て、朝日新聞の渡辺記者とも産経新聞の平田記者とも、また違います。本当に人の思考・空想は色々なのです。
とはいえ、中国は本当に、頑張っています。その様子の解る記事を付記します。
●どこか違和感が……。「習近平兄さん、ありがとう」巨大看板の不思議 西岡省二 | ジャーナリスト5/1(金) 16:42 (抜粋)

ベオグラードに掲げられる巨大看板(インフォーマーのホームページより)
セルビアの首都ベオグラードの大通り。真っ赤な巨大看板が数カ所に掲げられている。そこには中国の国旗とともに習近平国家主席が描かれ、現地語と中国語で「習兄さん、ありがとう」と記されていた。

◇セルビア大統領が中国国旗に接吻
 セルビアが中国や習主席への感謝の気持ちを表明するのは、中国が医療チームと支援物資を送り、新型コロナウイルスの感染拡大防止を手助けした「恩人」であるからだ。
 医療チームと支援物資を乗せた特別機が3月21日、ベオグラードの空港に到着した際、ブチッチ大統領自らが出向き、中国の国旗に接吻するというパフォーマンスを見せた。
 巨大看板には政府系タブロイド紙「インフォーマー」の社名が記されている。同社は、中国への感謝の気持ちを盛り込んだ碑をベオグラード郊外に建てることも明らかにしている。
 セルビアと中国は友好関係にあり、ブチッチ大統領は普段から習主席を「兄さん」と呼ぶという。AP通信によると、ブチッチ氏は3月15日、セルビア全域で非常事態宣言を発令した際、「欧州の連帯など存在しない。助けてくれるのは中国だけだ」とぶちまけた。
 新型コロナウイルスの発生地である中国は、国内で歯止めをかけたあと、各国への医療物資の大規模援助を進めている。そこには、責任ある大国としての役割を果たして国際社会での存在感を高めるという狙いのほか、初動遅れに対する非難をかわす▽支援を受けた国が中国指導部を評価せざるを得なくなる――などの考えも隠されているようだ。

◇「債務のわな」の恐れ
 ひと昔前の米ソ冷戦時代、ユーゴスラビアは米ソ両国と距離を置く一方、中国とは友好関係を維持してきた。1992年のユーゴ解体、社会主義の放棄などを経たあとも、その関係は続いてきた。
 それが近年、より深まる。中国は「一帯一路」を掲げ、インフラ建設などを通して欧州での影響力拡大を図る。中国にとってセルビアは、隣国ハンガリーとともに、欧州の重要な玄関口としての位置づけがある。
 AP通信によると、中国のセルビアへの近年の投資には、高速道路、鉄道、発電所への融資の推定60億ドル(約6400億円)に加え、第5世代移動通信システム(5G)ネットワークや顔認識監視機器の契約もある。
 このため、中国からの借金は膨らんでいるとみられ、欧米の研究者から「セルビアが返済ができなくなる『債務のわな』に陥る恐れがある」との警告が発せられている。

◇中国―EU間で揺れる
 一方で、セルビアはEU加盟を「外交の最優先課題」と掲げる。2009年に加盟を申請し、2014年に交渉を開始し、順調にいけば2025年に実現するとされる。
 今回の新型コロナウイルスに絡んで、EUは、セルビアに1500万ユーロ(約17億円)を緊急支援し、経済対策のための7840万ユーロ(約92億円)を約束した。またEUは280トン以上の緊急医療品を輸送するための支援金200万ユーロ(約2億3000万円)を拠出した。
 ところが、セルビア政府や官製メディアはEUからの支援よりも、中国からの援助を称賛する。政府は野党側から「中国からの援助内容を開示してほしい」と求められたが、無視したという。
 セルビアは中国にすり寄りつつ、EU加盟を目指す。このため、両者の間で板挟みになることもある。
 中国の民主活動家、劉暁波氏が2010年12月、ノーベル平和賞を受けた際、これに反発する中国への配慮から18カ国の大使館が授賞式への招待を断った。
その中に当初、セルビアも含まれていた。イェレミッチ外相(当時)は「セルビアの最も重要なパートナーとの良好な関係を維持するため」と表明していた。
 ところが欧州委員会がセルビアに対して「極めて遺憾」「人権擁護はEUの基本的価値観の一つであり、EU加盟を目指す国が価値観を共有することを望む」と求めた結果、セルビアは首相特使を派遣する方針に転換した――という例がある。

(七重コメント)
この記事を読むと、セルビアの大統領等首脳は、完全に中国に抱き込まれているようです。しかし、まだ野党は抱きこまれていないように感じます。
アメリカにもパンダハガーがいます。日本にも親中派はいます。どこの国にも中国(のお金が)大好きな人はいます。しかし、その人たちは「発言力はあっても少数派」なので、どこの国でも多数派国民が中国に嫌悪感を持つようになると、急速にその影響力を失ってゆきます。
いかな中国でも、70億人は買収できないからです。

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