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中国「不動産税」導入! これで地方財政は「国有地の使用権を売って収入を得る」から、「不動産税で収入を得る」に変わる。よって、ゴーストタウンはもうできない。不動産価格が抑止され庶民が家を購入できる。ようになるのかな?

中国南部の広東省仏山市にある中国恒大集団のマンション建設現場。工事は止まったままで、周辺の関連施設も未完成のままだった=15日(三塚聖平撮影)「工事止まったマンション住民悲鳴 中国恒大現地ルポ 2021/10/22 17:12 産経新聞より」 

●中国が「不動産税」を導入 乱開発で価格高騰が問題に、格差解消狙う (朝日新聞 10/23 抜粋) 

中国…(全人代、国会に相当)常務委員会は23日、日本の固定資産税にあたる「不動産税」を一部都市で試験的に導入することを決めた。まずは5年間の試験期間としているが、…本格導入を目指すとみられる。

 …中国では土地は基本的に国の所有物であるため、個人や企業は土地の使用権を国から購入して建物を所有している。土地も対象に含めた固定資産税は課されていなかった。

…(「不動産税」の) 課税対象者は土地の使用権を持つ人や住宅など建物の所有者。農村の住宅などは含まれないという。

 すでに2011年から上海市や重慶市では購入した住宅への課税を先行して実施してきたが、土地の使用権は対象外だった。…

 中国が不動産税の導入へと動いた背景には、…習指導部が掲げる「共同富裕」(共に豊かになる)の実現がある。中国共産党の理論誌「求是」は…、習氏の演説を掲載。高所得者への対策として、所得税の強化と並び不動産税の立法化に向けた試行などの税制改革を打ち出していた。

 また、中国では地方政府が土地の使用権の売却収入に過度に依存していることが、不動産価格の高騰に拍車をかけていると問題視されてきた。税収を安定させることで、こうした問題を解決する狙いもありそうだ。(北京=西山明宏)

中国の不動産税をめぐる経緯

1990年代 使用権を売買する形で個人の不動産取得が可能に

2011年  2軒目以降の住宅や高額の住宅を対象にした不動産税を上海と重慶で試験導入

2012年  習近平指導部が発足

2013年  共産党の中央委員会全体会議で不動産税の立法を急ぐ方針を決定

2018年  全人代の政府活動報告で「不動産税の立法を着実に推し進める」

2021年  全人代の常務委員会が不動産税の一部地域での試験導入を決定

【引用終わり】

 中国では、GDPの約3割が不動産開発であげられていました。ちなみに日本はといえば、内閣府が公表する「国民経済計算」によると、2019年度の不動産業の名目GDPは65.6兆円で、全産業に占める割合は11.8%です。

 途上国が発展してゆく段階ではインフラ投資が増えるので、どこの国でも固定資産投資(不動産投資)が増えますが、一通りインフラがいきわたると不動産投資が減りますので、GDPの内訳では製造・サービスが増加して不動産投資が減ってゆきます。

 しかし中国では、未だにGDPの約3割が不動産開発です。数年前からは、中国では住む人のいないゴーストタウンを国中に作っていると、世界中の注目を集めていました。

 これは、普通の国では、住む人のいない(=借り手もいない)物件を建設しても事業が成り立たないのゴーストタウンが次々に造られるということはあり得ません。ですから、次々に造られるゴーストタウンは、中国の異様さを示すものとして世界に発信されたのでした。

 また、普通の国では実需以上に建物が建てられれば、不動産価格が下がりますが、中国では上がり続けました。これもまた、世界から見れば不思議な現象でした。

 ただ、どんなことにも原因があって結果がありますので、中国にはゴーストタウンが出来て、不動産価格が上がり続ける原因(理由)が、ちゃんとありました。

 それは、中国では土地は国の所有物ですが、改革開放で土地の使用権を個人・企業が売買する事が認められました。すると土地の所有者である国は、土地の使用権を売ってお金を手に入れることができるようになったのでした。

こうして中国の地方政府は、土地の使用権を売った収入で財政をまわすようになりました。すると、当然ながら土地使用権が高く売れれば、それだけ地方財政が潤いますので、地方政府にとっては「不動産価格は、高ければ高いほどよい」という事になります。

不動産価格が高くなりすぎて一般庶民が家を買えなくなっても、金持ちが投資用に買ってくれる限り、地方政府にとっては不動産価格が高い方がよかったのです。

ですから、地方政府の役人は、不動産価格が上がり続けるように、汗をかき続けました。不動産開発業者が、銀行から資金を借りられるように…。そして投資家が、出来上がった住む人のいない不動産を購入する資金を銀行から借りられるように…。地方政府の役人は、地縁血縁・共産党縁のすべてを使って、地方政府が土地の使用権を売って、政治をまわせるシステムを維持する為に、全力を尽くしていたのだろうと、私は推測します。

土地の使用権を買う人がいなくなったら、地方政府には資金が入らなくなります。即ち、地方政府の役人にとっては、「良いの悪いの」ではなく「生きるか死ぬか」の問題だったので、ゴーストタウンは建ち続けて不動産価格も上がり続けたのであります。

この状況を変える為に、今回習近平政権は「不動産税」の導入に踏み切りました。

地方政府が、「国家の土地の使用権を売って財政をまわす」という状況から、「すでに国家の土地の使用権を買った人たちから、毎年税金を取って財政をまわす」という状況に変えようという訳です。

「中国の不動産税、予想される仕組みと影響(北京/上海 19日 ロイター)」によれば、【(不動産税の)税率を0.7%と仮定すると、2020年の税収は1兆8000億元(約32兆1700億円)で、昨年の地方政府の土地純売却額を上回る計算】になるそうです。
日本の固定資産税は、(その土地の売買代金ではなく、路線価などを参考にした) 固定資産税評価額に税率1.4%(標準税率)を乗じて税額を算出していますので、税率0.7%は(何を基準にするかにもよりますが)、国際標準ではさほど高いという訳ではないと思います。
このように、地方政府の財政基盤を土地の使用権を売る事から不動産税を取る事に変えても、地方政府はやっていく事が出来ます。しかし、中国のGDPの約3割は不動産開発ですので、不動産開発事業が激減する失業問題が発生します。
 私は中国社会にとっては、こちらの方が大問題だと思います。単純に不動産開発が日本と同じ10%程度まで下がるとすると、GDPの約2割が吹っ飛びます。就業者の2割が失業するのです。中国の人口から考えると、2億人とか3億人が失業するのです。しかも、今はやりのIT企業などには就職しづらい肉体労働者が…です。
一体中国社会は、どうなるのでありましょうか?
私には見当もつきません。
いずれにせよ、私は、「中国に不動産税が導入されれば、ゴーストタウンはもうできない。不動産価格が抑止され庶民が家を購入できる。良かったね。シャンシャンシャン」と、八方丸く収まるわけではないと思います。
もう5年も6年も前から「中国経済は破綻する」といわれ続けていましたが、そろそろ「中国はゆるぎない、世界の金持ち国家である」という風聞も変わる時期が来たのかもしれません。
とすると、(張りぼてかもしれませんが) 手負いの虎は危険ですので、日本も注意が必要です。今後、中国国内での経済的混乱が、失業・暴動を多発させるようになると、習近平指導部は「簡単に勝てそうな戦争をしたい」と思うようになるでしょう。ですから、日本としては、毅然として「戦争したら中国は負けて、共産党は吹っ飛ぶぞ」というオーラを出し続けねばならないのですが、「岸田総理は解っているのか?」ちょっと不安です。

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