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これが人間か?これがドイツ人か?「香港の自由にはそれなりの犠牲が伴う―良い肉と同じで…ドイツでは、安い肉を手に入れるためなら、動物や人間が苦しむことさえ看過する。香港のために自らの豊かさを制限するなどありえない」 ●「香港国家安全法」ドイツ国営テレビ北京特派員のヤバすぎる論説 


ラルフ・リョラー記者の呆れる持論
香港はついに陥落。6月30日、「国家安全法」が施行されるに至った。  
5日後の7月5日、ドイツの第2テレビのオンラインのニュースページに、ラルフ・リョラーという記者の論説が載った。  
あまりにも呆れ返る内容だったが、リョラー氏は国営テレビの北京特派員だ。つまり、無視できない。そこで、今日はこの場を借りて、彼の記事を紹介したい。  https://www.zdf.de/nachrichten/politik/hongkong-sicherheitsgesetz-china-deutschland-kommentar-100.html  タイトルは、「香港の自由にはそれなりの犠牲(主に経済的犠牲の意・川口注)が伴う―良い肉と同じで」。  
なぜ、ここで肉の話が出るのかは後述するが、これもはっきり言って、信じられない比較だ。
「すべては終わった。現実が勝利した」
まず、リードは、「香港の自由は一重に北京の意思にかかっているが、我々も影響を及ぼすことはできる。①我々は中国を挑発して豊かさを失うべきか。それとも、見て見ない振りをすべきか」。  
すでにこのリードで、リョラー氏が、中国に対して従順であるドイツ政府の擁護を試みようとしていることがわかる。 
彼はまず、香港の若者たちが勇敢に戦ったことに敬意を表しながらも、その若者らは、自分たちが「何か良きもののために戦っていると信じていた」という皮肉をさりげなく付け加える。  
「習近平のポスターに卵を投げつけ、彼の写真を踏みつける。こんなことが長く続くはずはなかった。彼らはアメリカやEUの旗を振りかざした。時に、そこにはドイツの国旗も混じっていた。自分たちも自由な統一を革命でやり遂げるのだと、彼らは言った」  「しかし、彼らの多くは、自分たちが夢見ていることに気づいていた」  
リョラー氏は、冷めたトーンで続ける。  
「彼らは不安を感じていた。西側社会は、地球の裏側の小さな町のために、強大な中国と事を構えないかもしれない。しかし、彼らはその疑念を振り払い、抵抗を続けた。②少しの間だけでも、歴史の中心にいることが得意だったのだ」と、またチクリと皮肉。  
そして、あっさりとこう結論づける。  
「すべては終わった。現実が勝利した。その現実の名は『国家安全法』。これは香港の自由の終わりだ。まだ道に出ている若者全員にとって命の危険を意味する」  
③リョラー氏は、去年まで米ワシントンの特派員をしており、毎日、正義の味方ぶって、トランプ大統領のことをこれでもかというほど口汚くこき下ろしていた人だ。今、あの威勢はどこへいったのか?   
アメリカでは民主主義の守護者のように振る舞っていたのに、中国ではその看板をさっさと下ろしてしまったのか?   いや、彼は、そう思われることを恐れているのだろう。だからこそ、この記事は迷走を始める。しかも、滅多に見られないほどの迷走だ。
「時間は独裁者の味方である」
「➃この法律は、我々のこともよく表している。特に、北京の権力者が西側について思っていることだ。弱く、ナルシストで、臆病」  
これはシニカルを通り越して、自虐だろう。そして、ここからさらに摩訶不思議な論理が繰り広げられる。  
⑤「我々の豊かさのすべてが中国経済に依存している」  なぜ、“すべて”なのかがわからないが、それは措く。  
「ドイツの自動車産業は、生き延びるために中国市場が必要だ。そして、ドイツは自動車産業が必要。それなしには、社会の安定を保てない。⑥正直になろう。我々の民主主義は、一つの独裁国が繁栄することによって成り立っているのだ」
もう、ビックリだが、ほぼ、これがリョラー氏の結論なのだろう。
「北京の権力者は知っている。彼らは西側のディーラーだ。国家安全法というのは、まさに我々の目の前に突き出された中国の中指だ(侮辱するときにする仕草・川口注)。『やれるものなら、やってみろ』と中国の権力者たちは言っている」
ディーラーとは? 何かを煙に巻くような言葉の使い方で、意味もわからなければ、文脈も繋がらない。  
「ドイツが力強く中国を批判するとき、いつだって彼らは北京で笑っている。なぜなら、それが外交的なお飾りであり、何の意味もないことを知っているから」  
これも自虐。  
「この苦い現実が次第にデモ隊の希望を押しつぶしていった。彼らは空気が変わったことを承知している。何人かは活動から離れて内向し、あるいは、亡命を考える。戦い続ける人たちはわずかだ」  
「中国が、今後、どのような速さでこの計画を進めていくかはわからない。抵抗の中心人物はまもなく拘束されるのか。どのような厳格さでこの法律は施行されるのか。あるいは習近平は、西側をあまり刺激しないようにと考えているかもしれない。彼には時間がある。時間は独裁者の味方である」
「これはただの苦い事実である」
さて、最後は「肉」だ。  
実は、先月、ドイツの大規模な精肉工場で大量のコロナ感染者が発生した。そこで働いていたのは主に東欧からの出稼ぎ労働者だったが、調べて見たら、彼らがタコ部屋のような劣悪な住環境をあてがわれ、劣悪な労働条件で、いわば搾取されていたということが明らかになった。  
その際、ニュースでは、そこで処理される豚たちにまで話が及び、⑦豚たちがいかに不幸な環境で育ち、殺されていくかが報道された。しかし、だからこそドイツの食肉は安く、産業として抜群の競争力を誇っている。  
そこでリョラー氏は言う。  
「そのうち、我々は香港を見ることをやめるだろう、あるいは、率直に言うなら、わざと目を逸らすことになる。そのために支払わなければならない代償が、我々にとって高すぎるからだ。  
ドイツでは、⑧安い肉を手に入れるためなら、動物や人間が苦しむことさえ、多くの人たちが看過する。そんな我々が、香港のために自らの豊かさを制限するなどありえない」
つまり、リョラー氏は、ドイツが中国に車を輸出するために香港の民主主義を犠牲にすることと、ドイツ人が安い肉を食べるために「動物と労働者」の住環境を犠牲にすることを同列に並べているのだ(彼が「動物や人間」と、動物の方を人間より先に挙げていることもついでに指摘しておきたい)。この人は、香港の民主主義の防衛の意味をわかっていないのではないか。  
そして、最後の一文が最高に揮っている。  
「これは非難ではなく、ただの苦い事実である」  
つまり、香港の住民が自由を失うことも、動物や出稼ぎ労働者が不幸な目に遭うことも、 “自分は苦い事実を書いただけで、別に非難はしていない”と言いたいらしい。どう考えても、変な結論だ。  
これならいっそのこと沈黙していた方がよかったのではないか。 川口 マーン 惠美(作家)
【引用終わり】
先月だったか、同じドイツの大衆紙ビルドが「反中国に舵をきろう」という記事に出合ったのでプログに取り上げましたが、ドイツ国営テレビにこのリョラー記者の「香港を見捨てよう」という論説が躍ったことはかなり驚きました。
世の中には色々な人がいますから、別段これが2チャンネルの意見なら、驚きません。
しかし、北京からドイツに記事が送られて、ドイツで精査されてそして国営テレビの「論説」として世に示された。つまり、ドイツ人の中でエリートの部類に入る国営テレビの局員に支持されて「これが当報道機関の意見です」と採用されたことに驚きました。
チラッとですが「ドイツは3回目の失敗をするかもしれない」と思ってしまいます。つまり「今もドイツ人は、3回目の失敗をする感性を持ち続けている」のかもしれないと感じました。
それは、ロシア人と中国人に通じる、選民主義です。
独・露・中の共通項は、「自分が一番優秀。又は自国が世界の支配国」と考えていることです。だからこの3ケ国は、現在の世界の支配国であるアメリカに対抗しようとします。
この為にアメリカの足を引っ張る事に関しては、3ケ国で協力するので、国際社会に余分な波風が立つことになります。
とはいえ、3ケ国は互いに「自分が一番」と思っているので、最終的には分裂して叩き合いになるのです。独ソ不可侵条約を結びながらも戦争になったことや、中露も同じ共産国として協力した方がよいのに共産圏のトップの座を争った事に、結局は「自分が一番出ないと納得できないので、協力関係が永続しない」ということが現れています。
即ち、ヨーロッパの問題がドイツで有り、アジアの問題が中国であるという事は、同じ理由によるのかもしれません。
私はドイツの選民主義は、第二次大戦のホロスコートが世界中に糾弾された事でかなり弱まったと思っていたのですが、この論説が世に出る所を見ると、まだ健在のようです。
それではこの論説を、私なりに読み解きます。
まず「①我々は中国を挑発して豊かさを失うべきか。それとも、見て見ない振りをすべきか」との問いです。
米国を含めて多くの国が自らに問いかけてきていて、今までは利益を優先させてきていました。
私は、それは、「心の弱さ」からきていたもので「心の冷たさ」からくるものではないと思っていました。
しかしラルフ・リョラー記者の「見捨てるべきだ」という結論は、文面をみますと、明らかにドイツの「見て見ないふりは、『心の冷たさ』から導き出された」結論です。
そんな リョラー記者ですから、香港の人達がデモをすることに「②少しの間だけでも、歴史の中心にいることが得意だったのだ」などという感想を持つのでありましょう。
しかし私には香港の人達はお祭りを楽しみ、テレビに出る事を喜んでいるようにはとても思えませんでした。それどころか、後後の事を考えればテレビに画面に取られる事を恐怖して、だから顔を隠したいと思ってマスクをしていたのです。
私は香港の人達は、「本当だったら危険なデモなどやりたくない」しかし「座して自由を失うのか?習近平主席が気に入らないと思われたら、すぐさま逮捕されるという恐怖の中これからずっと生きいゆくのか?」という、「どちらも嫌だ。しかし…」という最悪の中で、それでも危険を冒して最善をつかみ取ろうとしたのだと思います。
それを「②少しの間だけでも、歴史の中心にいることが得意だったのだ」と見て取るとは、ちょっと信じられない感覚です。 
もしかしたら、「③リョラー氏は、去年まで米ワシントンの特派員をしており、毎日、正義の味方ぶって、トランプ大統領のことをこれでもかというほど口汚くこき下ろしていた人だ」ということなので、自分がワシントンで注目を浴びようとして派手なパフォーマンスをしていたので、香港の人達注目を集めて得意がっていると思うのかもしれませんね。
このように考えれば「➃この法律は、我々のこともよく表している。特に、北京の権力者が西側について思っていることだ。弱く、ナルシストで、臆病」と断じているのも理解できます。リョラー氏が自分は「アメリカでは逮捕される心配はなかったから、うけを狙って派手に動けた。しかし逮捕されたら大変だから、中国ではもう何も言わないよ」 と言っている訳です。 
 そして、この方どうも中国に洗脳されているようです。
⑤「我々の豊かさのすべてが中国経済に依存している」
⑥「ドイツの自動車産業は、生き延びるために中国市場が必要だ。そして、ドイツは自動車産業が必要。それなしには、社会の安定を保てない。正直になろう。我々の民主主義は、一つの独裁国が繁栄することによって成り立っているのだ」
???
 いえね。ドイツの自動車産業はあの第二次大戦の敗戦をも生き延びたのですから、中国と喧嘩になった位の事では死にませんよ。たしかに被害は受けるでしょうが、製造業というものは結局は技術者と労働者がいれば再建できます。ドイツにはその両方があるのではないでしょうか?
何を心配しているのでしょうか?
⑦豚たちがいかに不幸な環境で育ち、殺されていくかが報道された。しかし、だからこそドイツの食肉は安く、産業として抜群の競争力を誇っている。  
⑧「ドイツでは、安い肉を手に入れるためなら、動物や人間が苦しむことさえ、多くの人たちが看過する。そんな我々が、香港のために自らの豊かさを制限するなどありえない」
 この感覚もやはり変ですよね?
豚と人間はやはり別だと思います。たとえば、人間が溺れている時には助けようとして飛び込む人は結構います。助けようとして自分で溺れてしまったというニュースに時々ふれます。しかし、豚が溺れている時に助けようとして、命を懸けて飛び込む人がいるでしょうか?豚はあまり溺れないのかもしれませんが、それでも何らかの事故には合うでしょう。しかし豚を助けようとして命を失ったというニュースは、いまだ聞いたことがありません。
なんとなくリュラ―記者は「変な感覚の人だなあ」と思います。
出典を忘れてしまったのですが、英国は多少危険があっても1~2合目で儲け話に挑戦して、3~5合目で米国とフランスが続き、もはや斜陽になった7合目の英国が逃げ出す頃にドイツと日本が参入して結局最後にババをつかまされると聞いたことがあります。
数年前まで中国で儲けようとして媚びを売りまくっていた英国の豹変ぶりを目にすると、なんとなくあっているような気がします。いまや英国は、いかにも紳士然として中国を糾弾しています。
これはなぜか?
それは今まで英国が見て見ぬ振りをしていたのは、「利益を捨てたくないという、心の弱さ」からであり、ウイグル人や香港人がどうなろうとかまわないという「心の冷たさ」からではなかったからです。
即ち、英国人は「貪欲に利益を得ようとはする」ものの、「そこまでやったらまずい」という理性が働くのです。それは「自国が一番だ」という事を証明しようとして利益を求めるのではなくて、純粋に利益だけを求めているからです。
つまり英国人は純粋に利益だけを求めているからこそ、いざという時には利益をあきらめることもできるのです。
だから今、英国人は次のように考えて、行動変容する事が出来るのです。
利益をあきらめるのは惜しいけれど、中国が「国家安全法」をつくってしまった以上いずれは香港でまともに営業できる西側金融機関はなくなるだろう。結局は香港からは利益を上げられなくなる。それなら、早めに掌返しをした方が得策だと、英国人なら考えられるのです。多少危険があっても1~2合目で儲け話に挑戦できる人達ですから…。
英国が中国から利益を上げるのをあきらめたのは、次の記事を読めばわかります。
●中国によるウイグル人の人権侵害「吐き気を催す」 英国が非難 7/20(月) 18:58配信【AFP=時事】

中国西部・新疆ウイグル自治区のヤンギサルで、鉄条網の向こうに翻る中国国旗(2019年6月4日撮影、資料写真)。
ドミニク・ラーブ英外相は、新疆ウイグル自治区で強制不妊手術や大量拘禁が行われているとの報告に、もっと国際社会が注目する必要があると主張。「吐き気を催すような甚だしい人権侵害が行われているのは、明らかだ」「深く、深く憂慮している」とBBCに語った。  
ラーブ氏は、こうした報告について「われわれが長いこと目撃することのなかったものを思い出させる。しかも、それは国際社会からの真摯(しんし)な扱いを求めている主要国で起きていることだ」と発言。「わが国は(中国とは)前向きな関係を望んでいるが、このような行いを見て、黙っていることはできない」と付け加えた。  
これに先立ち米国は今月、新疆ウイグル自治区のイスラム系少数民族に対する「恐ろしい」人権侵害を停止するよう求め、中国の複数の高官に制裁を科している。  
劉暁明駐英中国大使は19日、もし英国が米国と同様に中国当局者に対する制裁に踏み切るなら「断固とした対応」を取ると警告。「わが国は一方的な制裁の正当性を決して認めない。制裁を科す権限は国連(UN)にあると考えている」と述べた。【引用終わり】
拒否権がある中国への制裁が国連で通る訳はないのに、中国人って本当に厚かましいです。
それにしても、強制収容所に送られるウイグル人の映像は欧米ではかなり広まっているようです。ラープ外相の「われわれが長いこと目撃することのなかったものを思い出させる」という言葉は、ナチスのユダヤ人輸送とそっくりと言っているのです。まさかドイツは自分達もやっていたから別段どうという事もないと思っている訳でもないと思うのですが…。
いずれにしろ、ドイツは世界の人々の心の移り変わりが見えていないようです。だから7合目から儲け話に参加して、ババをつかまされるのでありましょうが…。
せめてもの所でドイツにお願いしたいのは、中国とロシアとはアメリカの足を引っ張る所までしか協力できないと理解して、世界を混乱させないで欲しいのです。
別にアメリカに協力しろとは言いません。しかし中国とロシアに組して「3回目の判断ミスをしないで欲しい」と思うのであります。
なぜなら中国とロシアにドイツが加わると、中国とロシアの気が大きくなって「戦争しても大丈夫かも」という気分になってしまうかもしれないからです。
つまり、かなり危険なことになるからです。
第一次大戦の事を思い出してください。あの時はどの国も大戦争をやる気はなかった。しかしドイツ皇帝が「自国がオーストリアに加担して戦争すれば、すぐ片が付く。ついでに東方に領土を増や増やそう」と火事場泥棒しようとしたから、(つまり、その時の国際秩序を乱そうとしたから)、その時のヨーロッパの国境線を守る為に次々に英国・フランス・ロシアといった大国が参戦して来てしまったのです。
今中国がしている事は、第一次大戦前のドイツ帝国と同じ事です。同じ感覚の国だからという理由で、中国に加担しないで欲しいです。世界の迷惑なので「3回目の判断ミスをしないで欲しい」と、心からお願いします。

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