標高4200m パンゴン湖へ行ってみた(インド ラダック地方)


2024年6月末、インドのラダック(Ladakh)地方にパンゴン湖 ( Pangon Tso)を訪ねました。インド映画「きっとうまくいく」のラストシーンに主人公たちが向かう、標高4200メートルにある湖です。


行き方

インドの首都デリー ( Delhi)からレー( Leh)というラダック地方の中心の街までインドの国内線Indigo Airで飛び、そこからパンゴン湖までタクシーで約5時間でした。

パンゴン湖

レーから車で山道を数時間走り、パンゴンに入ると突然湖が現れます。湖面が日の光を受けて、これまで見たこともないような明るい青色に輝いています。空も真っ青、白い雲が湖面にくっきりと映り、更に高度の高い遠くの峰には白い雪。周囲の岩山も、薄茶色から少し濃い茶色など変化があり、日の差す方向が変わるに連れて色を変化させて行きます。夕方は白っぽい岩山が微妙なオレンジ色に照り映えて、周囲の山の色となんとも言えないコントラストを見せてくれました。
着いた日は、歩いてコテージの近くを散歩したり、湖岸に降りて冷たい水に触れてみたり、ただリラックスして早めに寝てしまいました。
夜中にふと目が覚めて空を見ると、なんと満点の星!天の川らしきものがうっすらと見えます。細かい星が明るい星の間をキラキラと埋めて、数え切れません。東京で2、3個しか星の見えない夜空に慣れているわたしにとって、これは感動的なものでした。
2日目は、まず早朝からダウンを着て誰もいない湖岸を散歩。湖面には2羽の水鳥のみ。ここはあまりにも自然が厳しいからなのでしょう、動物の種類も数も限られています。水の中に小魚も見られません。たまに蝶がひらひら飛んでいる程度で、迷惑な虫もほとんどいません。
10時頃からは、運転手さんがドライブに連れて行ってくださるということで、コテージから東の方へ向かいました。途中、白い広い砂浜になっている所や、山から流れ出た白い砂が三角州のように青い水の中へ突き出している所があり、山腹に造られた見晴らしのよい車道からキレイに写真を撮ることができます。

中印国境

どんどん東へ進むと、ここからは道が悪くて進めない、という場所でストップ。その先には10世帯ほどのチベット系住民の集落が見えました。そして、対岸に見える岩山の向こうは、中国だそうでした。実はパンゴン湖の東半分は中国領で、インドは西側の半分を領有していることになります。
そもそもラダック地方は中国だけでなくパキスタン等との国境に位置しており、軍の宿舎や基地が至る所に見られます。出会う車と言えば軍用トラックが多く、滑走路や床屋さんまである大規模な基地もありました。
今回の旅行では、この地域に入るための入境許可証が必要で、レーのホテルの方が私たちのパスポートを預かって手続きをして下さり、タクシーの運転手さんがそれを見せながら何ヶ所かあった検問所を通過してここまで来たのでした。

高山病対策(高度順化 高山病予防薬)

パンゴン湖は標高が高いため、高山病対策の必要があります。
私たちはパンゴンへ行く前に、標高3500メートルのレーで二泊し、高度に慣れようと計画しました。その間にレーの街にあるAncient Palace Leh、Tsemo Monastery、Shanti Stupaを訪ねました。
どこも、急な岩山の斜面に建てられています。チケット売り場までは大抵車で行くことができるのですが、その後が大変です。急な坂や階段を上って上って見学することになります。
でも上からはレーの街や遠くの雪をかぶった白い峰をながめることができ、上った甲斐はありました。無理をしない方がいいのかもしれませんが、3500メートルの高度に慣れるのに役に立ったのではと思います。

また、旅行出発前に日本で高山病予防薬を処方してもらい、服用しました。
千駄ヶ谷インターナショナルクリニック(ホームページから予約。自費診療。)では、旅行の行程を聞いた上で、何日から何日までこの薬とこの薬を何錠ずつ、と具体的に指示してくださいました。
効果は、と言いますと、確実にあったと思います。実は私は知人と2人で旅行をしたのですが、ツレの方は予防薬を飲んでいませんでした。レーではそれでも大丈夫でしたが、4500メートルのパンゴンに上がると、軽いふらつき、食欲不振、お腹の不調などの症状があらわれました。私が持っていた予備の薬(もし本当に高山病になってしまったら飲むようにと処方されていた薬)を飲むと、メキメキ回復して行きました。病院でいただいた解説書によると、この程度は「山酔い」というそうで、本格的な高山病になるとひどい頭痛、吐き気でそれは苦しく、命に関わるそうです。
とは言え、本人によると、山酔い程度であっても、かなり苦しかったとのことでした。
予備の鎮痛剤、吐き気どめも入れて二万数千円でしたが、持って行って本当によかったと思いました。

高所ではなるべく深呼吸をして酸素を取り入れるようにこころがけるとよいとも聞きました。
それからツレによると、寝た姿勢では、呼吸が浅くなるのか、どうも具合が悪くなるとのこと。具合が悪い最中であっても、時々身体を起こした方がよさそうです。

宿泊

Snow Pine Luxury Wooden Cottage に2泊しました。パンゴン湖の岸辺には、バラック造りの宿泊所が何百軒も並んでいますが、私たちは体力に自信がないため、かなり高級な方のコテージを予約しました。湖をガラス張りの部屋から正面に眺めることができ、レストランは部屋の隣り、厚い毛布があったので夜寒いこともなく、大満足でした。スタッフの方もお茶は要らないか、食事の注文はどうだ、と頻繁に声をかけてくれ、とても親切でした。スタッフは自然や写真が好きで夏季のアルバイトに来ているような感じの人が多く、楽しそうに仕事をしていました。
ただし、ここは標高4200メートルの山の中です。電気が使える時間は限られていました。携帯の充電はできる時にしておかなければなりません。また、お湯は出ましたが、気温が結構低かったため、大事をとって、シャワーを浴びることはしませんでした。

ラダックの植物

パンゴン湖の砂浜は、ほんの少し緑の草が見える程度ですが、よくよく見ると小さな花が何種類か見つかりました。ここは草丈が高くても70センチ程度にしかならないようでした。地を這う棘のある細くて固い葉を持つ種類が多めです。牛が一頭いましたが、周囲に美味しそうな草もなく、一体何を食べて生きているのだろうと思ってしまいました。

その後パンゴンからTurtukへ向かう車から観察していると、少し高度が下がれば草丈が1メートルくらいになり、更に下がって人工的に灌漑しているらしきオアシスのような集落では木も生えていたり、と植物で高度の違いや土地柄がわかるようになって行きました。

感動的なのは、他にほとんど緑のない環境でピンクの野バラが満開だったことです。わずかな湧き水のある場所や川辺で高さ80センチほどの丸い茂みを作り、全体にびっしりと小さなピンクの花を咲かせています。岩山と石と砂とセメントを流したような灰色の川の風景の中に見えるピンク色はまさに「砂漠のバラ」という言葉そのものでした。
車を停めてもらってゆっくり写真を撮りたい気持ちもあったのですが、ガードレールなどない山腹の狭い未舗装道路ばかりなのです。対向車が来ないうちにとにかく先へ先へ進んでしまった方がいいのは明らかだったので、結局言い出せませんでした。車が停めやすいような場所には咲いておらず、記憶の中にだけ残っています。

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