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六車奈々、会心の一撃!

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タレント・女優の六車奈々によるエッセイ集。子育てをしながら働く、ハプニングと全力投球な日常をエッセイでお伝えします。
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#まさかの

イヤよイヤよも好きのうち?

20代の頃、関西の旅番組にレギュラー出演していた。女性の一人旅という設定なので、いつもは自分一人での出演だ。 しかし今回は、夏休み企画。同じモデル事務所の仲良し、仮に名前をセイコにしよう、と一緒に出演できることになった。 「やったー!一緒に出られるなんて、めちゃ嬉しいなぁ!」 私たちは、大喜びをした。 ただし、ここには条件があった。 大自然の中でパラグライダーを楽しむシーンを入れたいので、二人にはパラグライダーをやってほしい。一人はインストラクターと飛ぶ映像を、もう一人は

奥様はチーズ

モデルの仕事をしていた頃、しょっちゅうお世話になったカメラマンさんがいた。 仮に名前を小山さんとしよう。 小山さんはカメラの技術も素晴らしく、まさに芸術家といったタイプであった。そして何より素晴らしいのは、愛妻家ということだ。 カメラマンの中には、モデルにちょっかいを出そうとする人もいるが、小山さんは全く無い。 「小山さんは、浮気しようと思ったことは無いのですか?」 「無いよ。だって、そういうことをしませんと誓って結婚したんだから、当然でしょ。」 ナント!素晴らしい。

トークの恩人

私は人前で話すことが、大の苦手だった。 16歳から始めたモデルの仕事は、人前で話さなくていい。 カメラの前で表現することは大好きだったため、モデル業はやりたいこととやりたくないことがピッタリ一致していた。 そんな私にリポーターの話が持ち上がったのは、大学を卒業してすぐのことだ。グリーンチャンネル『ターフトピックス』リポーターのオーディション依頼。毎週、栗東トレーニングセンターへ取材に行き、レース出走馬のインタビューやリポートをする仕事だ。 人前で話すことが苦手な私は、すぐ

『復讐』

「『フクシュウ』って、したことある?」 他愛もない会話の中で、いきなり妹が聞いてきた。 「『フクシュウ』って、復讐?」 「そう。」 私は考えた。 「実は、あるねん。一回だけ。」 「マジで!?なになに?」 「高校生のころ、あまりにもムカついて夜中に電話してやった!」 そう。一度だけある。 どうしても許せないことがあり、私は悩んだ末、仕返しをすることにした。若気の至りである。 さて、仕返しは何をしようかとあれこれ考えたのだが、 大それたことはできない。 自分にできる最大の

こんな偶然があるなんて!

関西のラジオ番組に、ブラックマヨネーズの吉田氏がゲストで来た。 吉田:「六車さんの従妹で、日吉ヶ丘高校に通ってた人います? 僕、日吉ヶ丘高校なんですけど、同級生に「六車さん」って人がいて。。。」 六車:「えーっ!そうなんですか!」 吉田:「年上の従妹で、『六車さん』ています?」 六車:「年上の従妹ですか?六車の姓が付く従妹は、全員年下ですよ。」 吉田:「あれ。お姉さんもいませんよね?そしたら誰や? その人、高校時代からモデルやってて、、、。」 六車:「え?六車の名前で、私の

接吻馬券

私には、節分の悶えるような思い出がある。 それは2008年の2月3日。 この年は節分が日曜日に当たり、京都競馬場では京都牝馬Sが行われた。 悪天候のおかげで、芝は雨を含んだ重馬場。荒れそうな予感がプンプンする。 穴狙いの私には、俄然楽しみなレースになった。 いつものように穴馬から狙い、命がけの予想。しかし結果は、大ハズレ。 当たっていれば、三連単で68280円の万馬券だった。 でも、こればかりは仕方がない。 私の選んだ馬が来なかったのだから、納得できる・・・ハズだった。

スポーツ万能

私は小学校の頃から運動が得意だった。 跳び箱は簡単に一番高い段を飛べたし、 クラス対抗リレーの選手に選ばれたし、 縄跳びも鉄棒も、運動なら何でもできた。 そう、私はスポーツ万能なのだ! 中学校では、バレーボール部に入部した。 一年生は球拾いと過酷なトレーニングばかりさせられたが、 根を上げることなく食らいついた。 そんな中学校時代のある日、体育でハードル競走の授業があった。 4人1組で順にハードルを跳んでいく。 私は自慢の脚で風を切って走り、軽やかにハードルを跳んだ。 全

幻のラブレター

あれは、小学1年生のときだった。 私は人生で初めて『ラブレター』をもらった。いや、正式には 『ラブレターらしきものが、ランドセルの中にグチャグチャに 押し込まれていた』のである。 その日は土曜日。 午前中で授業が終わり、帰る準備をしようとランドセルを開けた。 すると一番上に、グチャグチャになった『ざら半紙(わら半紙)』が 押し込まれているではないか。 何だろう? 最初は、誰かのイタズラかと思った。 恐る恐る広げてみると、アイアイ傘が書かれていて、 片方に私の名前が見えた。