「道行の美学」@ワキタコルディアホール 2022年12月24日
福岡の公演から、新幹線で大阪へ。雪で遅延するかな、と心配してましたが、丁度晴れてきて気持ちよく移動できました。
ワキタコルディアホールにて。長唄とのコラボという背景もあるのか、お着物姿のご婦人方が多く、華やかでした。和服いいなぁ。
道行の美学、と言う企画でしたが、私的な見どころはこんな感じ。
「義経千本桜」の「道行初音旅」
桐竹勘十郎さんといえば、狐忠信という役が代表作(?)のようで、今年の東京公演では存分に楽しみました。が、今回は、吉田玉男さんが狐忠信で、勘十郎さんは静御前という配役。数十年ぶりという配役みたいです。
勘十郎さんの静御前かっこよかった・・・。ドヤ顔で決めるところがさすがです。もちろん、人形なので顔の表情は変わりません。が、宝塚のトップスターの登場シーンのように、「私が主役(ドヤ」という雰囲気で登場するのですよね。特に今回は、幕が無い舞台だったからか、出てくるときにドヤ感強かったように感じます。これも芸なんでしょう。
「艶姿女舞衣」の「酒屋の段」
こちらも文楽では有名な演目だそうです。YouTubeでもたくさん出てきます。夫に不倫されている妻、いわゆる「サレ妻」の嘆きがメインの場面。とはいえ、夫とその愛人は結婚前からの関係だそうで、夫の親が「息子を更生させようと無理やり結婚させた」というシチュエーション。夫一人が悪いわけではないという不幸な成り行き。お園という名前のサレ妻ですが、夫に本気で恋してしまうという、また不幸な成り行きで・・その想いを独白する場面。
「お園のくどき」動画こちらにあります。
「艶姿女舞衣」という演目は、このお園の嘆きの場面だけが上演されることがほとんどだそうです。心中モノなので、本来心中するカップルが主役のはずですが・・・。サレ妻の嘆きの場面だけが生き残っているという。
三勝道行
今日の舞台では、心中カップルを主役にした道行の段を、長唄と文楽のコラボで復刻するという企画。この段は長唄しか残っていないそうで、桐竹勘十郎師匠の振付で復刻されました。
お園が主人公のこの演目にも、他方には心中した愛人がいるわけで。愛人である三勝という女性をフィーチャーした道行の段ですが、三勝が後ろ姿を見せた瞬間が美しく。華奢な肩を見て「この人もいろいろと背負っているのだなぁ」とつい思ってしまいました。そんな風に思わせてしまうのも、芸なんでしょうね。
ちなみに、今回の山場は、脇田社の社長さんの朗読テキスト。お園の手紙という朗読コーナーが挟まれています。
一般の方のようですが、神がかってました。こんな形で「艶姿女舞衣」を拡張するなんて…。ここ、本気で泣いてしまったところ…。
ヒロインのお園さんだけでなく、心中カップルの三勝さんの想いを補完してくれたことで、最後の三勝道行とカーテンコールの意味合いがだいぶ変わりました。
素晴らしい企画で、大阪まで行って良かった、と、心から。
「三勝道行」本格的に人形浄瑠璃として復刻してほしいです!
カーテンコールの撮影オッケーとのことで、感謝感謝です。
こちらは企画者の方のブログです