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ネタバレあり「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」小説 2023年1月2日

昨日読んだ小説、ネタバレありで感想を書き散らします。

近松半二を描きつつ、お三輪という架空の女性を軸に、半二の周りにいる女性達のあり様に、作者のメッセージを感じました。

当時、女性は自分の人生の選択の決定権はほとんどない時代。

お末とお佐久、そしてお熊さんという登場人物達は、

狭い選択肢の中でも、ここぞという時に、人生を豊かにするささやかな選択肢を選んで行動してました。

なにも、人生の選択は大きな選択だけじゃなくて、

物事の捉え方を変えること。現実解を見つけて、行動に移すこと。


それも、自分が自分の人生を変えることができる選択肢。

小さいけど、変化の幅が大きい選択肢なわけです。

過去は変えることはできないが、未来は変えることができる、というやつ。

人生の決定権がない時代に生きた女性は、

決定権がないからこそ、

捉え方を変えること、

日々の行動を通じて他人の選択を自分の正解にする、

諦めと覚悟をもって、行動すること、

それが、幸福を掴むための数少ない選択肢だったのかもしれません。


一方で、架空の女性、「妹背山婦女庭訓」の主人公の一人であるお三輪。

「なんで、女は男に従うしか選択肢がないのじゃ」と叫ぶ。

そして「女性こうあるべし」というルールを飛び越えて行動して、愛する男性の為に命を落とすのです。

普通の女性はここまで行動できません。

とはいえ、女性は「そうしたい」と妄想する。

だから共感できるし、魅力的なんでしょう。

現代は、当時に比べると格段に女性の決定権は広がりました。

とはいえ、決定できるもの、できないもの、という次元を超えて、巡り合わせや、生来持って生まれた身体的なものや、置かれている環境によって、自分を曲げなければならない状況は多々あります。

自分で選択できる現代だから、むしろ全てを手に入れたい、という執着に悩まされるように思います。

科学技術がそれをどんどん可能にしてくれますし。「できないことはない」と煽ってきますし。

それに乗っかって突き進んだ先に、どうにもならない現実に打ちのめされる人もいるでしょう。

そんな時代に生きてるからこそ、自分の意思を貫き通したお三輪よりも、半二を取りまく三人の女性達に清々しさを感じてしまいました。

単に近松半二の小説にとどまらず、多くの人を感動させるのは、そんなメッセージのお陰かもしれません。

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