野草食日記 171 椿の花の栄養学その 1 アントシアニンのこと
椿の花の甘酢漬けを使ってちらし寿司を作りました。
彩りもよく、先日鎌倉の由比ヶ浜で行われた「山菜の会」で、お集まりの皆さんにお出しした時は、「わぁ、綺麗!」と喜んでいただけたのですが、いかんせん椿自体に特徴的な味や食感がないのが残念なところ。
話題性というところではピカイチかもしれませんが、もしも、「赤梅酢に漬けた紅生姜と色が似ているし、わざわざ椿を使わなくてもいいんじゃない?!」と言われちゃえばぐうの音も出ない。
何とか椿の肩を持って応援したい。
甘酢漬けを作ったお母さんは娘のためにがんばりますよ。
「山菜の会」に東京家政大学で名誉教授をされている中村信也先生が参加されていました。そこで、食後のコーヒーを飲みつつお聞きしてみると、椿花の特長としては2点あるとおっしゃいます。
① 色
② 油
当日お聞きした話をベースに、後日書籍やネットで調べた事柄をプラスして、今日は椿の栄養的側面の「色」について掘り下げてみようと思います。
①椿の色について
椿花のマゼンダカラーはアントシアニンによるもので、1988年、鹿児島大学の坂田祐介さんの学位論文の中で、椿花弁中に15種類のアントシアニン色素が存在していることが報告されています。
アントシアニンといえば、すぐ思い出すのが目に良いというブルーベリーですね。
そういえば、アントシアニンがなぜ目にいいのか、その理由をきちんと知りませんでした。更に調べてみます。
後日、中村先生に電話してお聞きすると、アントシアニンはビタミンAの前駆物質なんだよね、とのこと。
主婦業うん10年やってきて、ビタミンAという言葉は知っていてもどういう働きをするのかも知らなかった。
それなのに息子にはニンジンは身体にいいから食べなさいと言い続けたのですよね。
これではチコちゃんに叱られそうです。
図書館でこんな本を借りてきました。
以前からずっと気になっていた本。
取り寄せしないと無理かな?!と思っていたのに、当たり前のように近くの図書館に並んでいて驚きました。
この中のプロビタミンAの項を見ると。
『ビタミンAは視覚に必要不可欠な物質です。網膜の感受性を高める視紅、つまり「ロドプシン」の合成に関わる働きがあります。」と書かれていました。
ビタミンAが欠乏すると夜盲症、ドライアイにもつながるそうです。
また、ドライアイと同じく乾燥という症状は鼻や喉、気管支の粘膜、腸や泌尿生殖器管内に生じることもあるとのこと。
ロドプシンはネットからの情報によれば、目の中にある紫色の色素で、オプシンというタンパク質とビタミンAから合成されるレチナールから成り立っていると書いてありました。
このロドプシンですが、光に当たることでビタミンAに分解し、それが再びロドプシンに合成される、また光に当たって分解→再合成・・・ それを延々と繰り返しているそう。
なんか忙しいことですね。
長時間目を酷使すると、ロドプシンの再合成が追いつかなくなります。その再合成をアントシアニンが促進してくれる、そんなシステムのようです。
色々調べているうちに、アントシアニンは目に良いという他に以下のような効果があることもわかりました。
◎抗酸化作用
老化や種々の疾患に深い関わりがあるとされる活性酸素を除去する働き
◎コラーゲン安定作用
瑞々しい肌を保つのに必要なコラーゲンを促進
コラーゲンは目の網膜や水晶体にも含まれているので、目の健康にも有効
傷の回復を促進する作用もあり
◎毛細血管保護・強化作用、循環改善作用
血管の透過性を適度に保つ
血液をさらさらにする
◎抗炎症作用・抗潰瘍作用
アントシアニンが炎症を抑える効果はアスピリンの10倍以上、しかも胃に負担をかけない
局部の血行を高め、潰瘍などの粘膜の欠損を埋める
◎血糖上昇抑制作用
目に良いという他にも、女性に嬉しい美容効果も期待できそうですね。
かと言って甘酢漬けにしても食べる量はそう多くはないですが、知らずに何となく食べるよりも、こんな働きもあると思うと、ちょっぴり嬉しくなる。
そういう「ちょっと嬉しい」を日々感じることも、長い目で見たら健康につながっていくんじゃないかな?!と私は信じています。
「椿の栄養学 その2 オレイン酸のこと」 へ続く
協力
東京家政大学名誉教授 中村信也先生
まほろば東京クリニック 小林蓉子さん
参考文献
ナチュラリストのための食べる植物栄養学 フランソワ・クープラン著
参考ウェブサイト
総説 ヒルベリー由来アントシアニンが目に与える機能性
野草の勉強や観察会のために使いたいと思います。