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幅1禁黒マス3連禁複ループ可ヤジリンPR

ペンシルパズル Advent Calendar 2021 14日目 よろしければ他の記事もどうぞ。

 こんにちは、ななてふです。趣味でパズルを解いています。しかしまだニコリ歴は1年もなく、また初めてnoteの記事を書きます。よろしくお願いします。タイトルに"PR"とあるのですが、今回私はこの場を借りて自分の変種パズルを売り込むことにしました。

幅1禁黒マス3連禁複ループ可ヤジリンとは?

 幅1禁黒マス3連禁複ループ可ヤジリンはパズル界ペンシルパズル門ループ綱黒マスも置く目ヤジリン科ヤジリン属における変種ヤジリンの1つであり、私により今年発見されました。すでに絶滅が危惧されており、Puzzle Square JPで1問保護されています。自身で整理する目的も兼ねてここに基本的生態(ルール)の完全版を書き出します。

ルール(完全版)
1.盤面のいくつかのマスに線を引いて1つ以上の輪っかを作りましょう。(作るループの数は自由ですがループの一部になっていない線があってはいけません。)また、線が通らないマスは黒くぬり、黒マスにしましょう。
2.数字は、矢印の方向に入る黒マスの数を表します。
3.数字のマスに線を引いたり、黒マスにしたりしてはいけません。
4.線は、マスの中央を通るようにタテヨコに引きます。線を交差させたり、枝分かれさせたりしてはいけません。
5.ループに囲まれてできる図形が幅1で長さのある部分をもってはいけません。
6.3マス以上の黒マスのかたまりができてはいけません。(これに反しなければ黒マスの配置は自由です。)
(一部ニコリホームページ/ヤジリンのルールの表現を使用)


幅1禁黒マス3連禁複ループ可ヤジリンはいかにして生まれたのか?~悲しみの複数解形~

 この変種ルールは通常のヤジリンの問題制作から発想を得て生まれました。パズルはよく「解くように作れ」と言われますが、ヤジリンを何問か作ったことがある人はほとんど次のような状況に出会ったことがあるでしょう。

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図1

あああよくあるやつだ。ペンシルパズルでは作るにも解くにも相当特殊な場合でない限り解がちょうど1個であることが暗黙の了解とされますが、この手の状況は発生した時点で複数解が確定します。他にもありますね。

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図2

ああ本当になんてやつだ。何度繰り返したら気が済むんだ。
 そこで私は考えます。「このような状況で複数解とならないようなルールを都合よく作ればいいのでは?」

 上にある状況でありえる解を網羅的に考えると共通してループの内側(Q1)に幅1で長さのある部分ができることに気がつきました。(図1では「首」の形状、図2では「岬」の形状)これがルール5の誕生です。先に挙げた例にルール5を適用すると見事に解がなくなりましたやったーーーーーー!(Q2)
 ルールの細部を詰める過程ではオリジナルルールとの対応を参考にしました。角の2マス隣がヒントマスである状況を考えます。

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図3

ルール5の追加だけでは左上に線が入っても黒マスが入っても破綻です。そこでルール6を追加するとこの2マスがともに黒マスとなることが確定します。ルール5,6についてさらに考えると角の2マス隣が黒マスにならないことがわかりますが、これはオリジナルルールで角の隣マスが黒マスにならないことに対応します。
 また、ルール1の変更は下のような状況からできました。オリジナルルールでの解からの変化を線の方向転換とみなすと輪がちぎれたものと考えられます。(オリジナルルールでこのような線の端2*2をうっかり2ヶ所同時に作ってしまうとそれなりの割合で複数解)

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図4

ルール1を変更すると喜ばしいことに、さらにオリジナルルールにおける「小ループ禁による線の延伸」に対応する挙動として「幅1禁による線の延伸」があることがわかりました。(オリジナルルールでは灰色線で線の位置が定まらず複数解)

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図5

本当に改善したのか?~「悲しみの複数解形」を再検討する~

 勘のいい読者は気づいたと思うが新ルールによって新たな複数解形が発生したかもしれないと考えられます。ここでは新ルールの特性とオリジナルルールにおける複数解形から新ルールで複数解想定される形の候補を設定してそれらの解複数性を考察します。
 新ルールでは線の曲がり方に制限があります。これはルール5が線によるいわゆる「岬」の形状を禁じることに由来します。例えば角に線を引くとその両端が2単位分延びます。

図6

この例を代表に新ルールには「線が盤面を広めに使って展開する」という特性があるといえます。(一方で先に挙げた並行線の延伸はオリジナルルールと同じスケール)

例1:図2の拡張

図7-1

 図7-1の線がすべて繋がって1つになることはありません。下の2通りが考えられます。黒マスの位置が異なることに注目してください。

図7-2
図7-3

例2:図1
 図1の状況は新ルールを完全に適用すると再び解が発生して下の2通りが考えられます。黒マスの有無が異なることに注目してください。

図8-1
図8-2

例3:図1の拡張

図9-1

3*3の領域に電卓の1~9の配列を当てはめてください。(線の四端が1379)
4が黒マスであると仮定するとその隣に2マスの空白マスが生じて破綻。
6も同様。
456を区切る2辺をいずれも✕(線が通らない辺)として上と併せると3マスの空白マスが生じて破綻。
45を区切る辺のみを✕として56間に線を引き上と併せると5にある線の端が2に向かっても8に向かっても破綻。
結果として下の2通りが考えられます。

図9-2
図9-3

 オリジナルルールと異なる考え方で3*3の領域をちょうど90度回転させた解が得られました。衝撃の結末だけにこれは映画化を期待してもいいのではないでしょうか。今この瞬間にも制作会社に目をつけられているかもしれませんよ。

 以上の例をまとめると盤面の各ループが黒マスを含みやすく、その黒マスの位置や有無が解によって異なるために新ルールは複数解を発生させにくいといえるでしょう。
 今後の課題としてもっと大きな形で複数解をもつものがあるか、また図9-2,3や図4のような「90度回転則」がいつ成立するか研究してみるとおもしろいと思います。

おまけ

よく出現する形 気を抜くと結局これかこれなんよ

図10

補足

 この記事では変種ルールを題材に、問題制作での複数解を発生させにくくするためにルールのうまい設定を提案したものでした。執筆の過程で関連しそうな記事を見つけたので紹介します。同じブログのもの2つになってしまいました。

 この記事では(編集中)

 この記事ではパズルの性質としての理想から、「ユニークネス状態」、すなわち唯一解前提で「解きを効率化できる」状態が考察の対象となりました。「ユニークネス状態」の例4類型が示されているので図1や図2の回避の分類を試みました。しかし、盤面の状態ごとの関係が普段あまり念頭に置かれないことから所属を決めるのが難しいように思われます。強いて言えばヤジリンの「ユニークネス状態」は他から干渉(考察&編集中)。盤面の状態から所属が従うのではなく、1つの状態に「ユニークネス推論」を用いる過程で複数の形態がある順で認められるという説も考えられます。またこの記事によると、「『手筋』と『ユニークネス推論』との間に階層構造を見出し」(考察&編集中)

 みなさんもぜひ幅1禁黒マス3連禁複ループ可ヤジリンを作ったり解いたりしてくださいね。本編は以上です。ありがとうございました。

Q&A

Q1:どうしてループに対して内側だけなんですか?
A1:対称性が壊れているほうが考察の幅が広がっていいと思いました。

Q2:解がなくなっていいんですか?
A2:この変種ルールに限らずパズル一般にいえることだと思うのですが、解の存在を犠牲にしてでも解複数性をなくすことには2つの利点があると考えます。1つめの利点は解き手側から作り手側への接続にあります。解複数性をに関する知見は問題制作でこそ重要視される一方で解き手にとってはほぼ意識されない(場合によっては意図的に忌避されてしまう)事項であり、いわば裏方同然であるといえます。ある程度解き慣れた方がいざ問題制作を始めたとき、新たに現れる障壁が少ないほうがいいと考えます。2つめの利点は大会の運営と参加にあります。例えばtwitter上で有志によって開かれる大会は1問を解く時間を競うものが多いです。解の有無を前提としない(編集中)

新作問題

問題


問題URL
Penpa (opt-pan.github.io)

解答判定つきです!
ただし解答判定が解答を判定するかは私とあなたの運次第!(そんな逃げ道ありなのか)


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