私はちゃんと1番の理解者になれたかな
私たちの出会いはお互いの欲望を垂れ流す
Twitterのアカウントの中だった。
だからなのか、不思議と私たちは
何でも話し合えた。
他にたくさん女がいることは会う前から
とっくに分かっていた。
ひとりの女に執着するのもされるのも
嫌いなことも分かっていた。
きっと面倒臭いのが嫌なのもあるんだろうけど
あの人は優しい人だから
きっと相手の気持ちも考えてしまうから
嫌なんじゃないかなって思ってた。
だから、それで構わなかった。
そんなところも好きだった。
「こんな俺を理解して、受け入れてくれてる」
「性のこと何でも話せるのはナナだけなんだよ」
「ナナは俺のことよくわかってると思う」
もしかしたら遊び慣れたあの人は
そんな言葉、軽率に他の女にも
言っているのかもしれないけど
きっとその言葉に嘘はないって
直感で思った。
特別扱いしてもらえたことが
嬉しかったんじゃない。
だって誰かを特別扱いなんて
したくない人のはずだから
たぶんそんなつもりはなくて
心の声がポロリと出たんだよね。
普段は仕事人間で
バカまじめで
女になんか興味ない
って顔してるんだよね、きっと。
そんな人が
一瞬でも、少しでも、心の内を
見せられる相手ができたことが
嬉しかった。
愛情表現の全くないSEXでさえも
私をその気にさせないためなのだろうと思うと
愛おしくて愛おしくて、
堪らなかった。
キスもハグも
好きも可愛いもないSEXだけど
誰に抱かれるよりも
大きな優しさを感じていた。
だって本当はほんの少しだけど
私にハマってるのも知ってたから。
「一番の理解者でありたいなって思ってるよ」
付き合いたいなんて、
本命になりたいなんて、
私のことを見て欲しいなんて
欲は捨てた。
プロのセフレになろうと
心に誓った。
本命の彼女には言えないようなことすらも
言い合えるような、
愛や永遠を誓わないからこそ築ける
名前のない唯一無二の関係になりたいと思った。
これは強がりではない。
本当にそう思った。
好きな人の心に触れられるなら、
それだけで十分で
関係性なんて何でもよかった。
でも、そのためには、
私は本気で好きになり過ぎた。
絶対に言わないと決めていた言葉が
口から零れ出てしまった。
きっと、なかったことにして
そのまま関係を続けることもできた。
でも、私のプライドが許さなかった。
それに
私がこれ以上近くにいても
本来の目的を達成できない
ような気がした。
私の気持ちを知られてしまった以上、
今まで通り、気を遣わずに一緒にいられる
自信がなかった。
一番の理解者でありたいのに、
本当の気持ちを隠されてしまう気がした。
それなら私が側にいる理由はない。
ただの都合の良い1セフレになるのだけは
死んでも嫌だった。
「大好きだから、もう会わない」
一方的に送り付けたLINE。
私の気持ちに「ありがとう」と答えてくれた。
次に会う約束も、準備もしてたのに。
自分勝手だって怒られても
おかしくないのに。
最後まで本当に優しい人。
それっきり私たちは終わったはずだった。
さよならを告げて、たった3週間。
TwitterのTLに流れてきた
「元セフレ」を称賛するツイート。
いつも私の技術を褒めてくれたけど
私が特別上手なわけじゃないと思うんだ。
きっと、私に心を許してくれてるから
うまく自分を解放して
気持ちよさに溺れられるんだと思うよ。
たくさん他の女を抱いて、
ナナと比べるんだって言ってたけど
関係が切れた今でも思い出してくれてたんだね。
それ、本当は空リプなの知ってるよ。
戻ってきてもいいよ、って
言ってくれている気がした。
我慢できずに送ってしまったDM。
当たり前のように返って来る返信。
まるで日常が戻ってきたみたいだけど
今までとは少し違う距離感。
今まで、自分の気持ちを押し殺して
隠し通すのに必死で、
私自身が心を開き切れていなかった。
これからは、もう何も隠さない。
好きなものは好きだし、
私はプロのセフレになりたい。
本当の気持ちをぶつけても、
一緒に居てくれたら嬉しいな。
もし、
私の解釈が間違ってたら、そっと訂正してよ。
もし、
私がちゃんと1番の理解者になれていたなら
お願い、もう一度そばに置いて。
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