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目には目を、歯には歯を、傷口には塩を

わたしのマンションの理事会は、理事長と副理事長と会計の3人が中心となって運営します。わたしは2015年4月に初めて副理事長を引き継ぎましたが、引き継いだ直後の5月、さっそく面倒なことが勃発しました。

なんと給水・給湯管更新をめぐって訴訟を起こしたT氏の部屋の台所給湯管から、漏水が発生してしまったのです。
実はT氏の区分は、訴訟のすったもんだの挙句、給水・給湯管の取り換え工事をしませんでした。そしてT氏宅を除いた工事完了からわずか3か月後の今になって、漏水が発生してしまったのです。

T氏は理事長宛てで「専有部給水給湯管取り換え工事」実施要求の手紙を送ってきましたが、理事会は当然要求を拒否しました。そしてT氏には個人での工事手配と費用負担を求める回答を6月に送りました。
要するに“理事会はあなたのために動きませんよ”、という姿勢を見せたのです。

この文書を送った後、改めてわたしたち理事会とK氏らで構成する修繕委員会合同の打ち合わせが開かれました。そこではT氏が工事を行うにあたり、管理組合としていくばくかの費用を捻出することが決まりました。

T氏宅は給水・給湯管更新工事を行わなかったので、工事費はT氏宅分を差し引いて精算しました。その差し引き分だけを、今回のT氏宅の工事費として出すことにしたのです。

一部とはいえT氏宅の工事に、管理組合から費用を出す。この決定はよかったと思います。一時は対立したとはいえ、T氏は管理組合の組合員であり、修繕積立金だって毎月きちんと納めている区分所有者です。個別工事になるので全額はカバーできませんが、何分の一かは補えるはずです。

しかしこれに加えて、修繕委員会はT氏にすべての組合員に対する「おわび」の文面を求めることも決定しました。
わたしは押し黙っていましたが、この決定には反対でした。
だって、いまさらT氏に謝罪を求める必要って、あります?

T氏は、今回漏水で迷惑をかけた下階の所有者には謝罪するでしょう。総会での態度は確かに酷いものでしたが、T氏がそこまで非常識な人物には見えません。で、まだ全組合員に対して謝罪を要求する理由とは。

T氏に対して、なんか溜飲を下げたい気持ちはない?

T氏はどこか、負け戦とわかっていて訴訟に打って出た感がありました。工事を決めた当時の規約では、言い方や規約の解釈の問題はあるものの、T氏の主張したとおり専有部(ざっくりいうと、マンションの個々のお部屋の中ですね)は管理組合の影響外、という解釈もできたのです(のちに改定)。

「勝訴」とは言えませんが組合側に軍配の上がった話を蒸し返すより、ここらで諍いの禍根を断つことこそ、本当に必要なことでは? そして今後の理事会運営に協力をお願いする方がよっぽど建設的じゃん! というのが私の見解でした。
もちろんこんなことを提案したところで、聞き入れてはもらえなかったでしょうけれど。

でももしこのとき、T氏に謝罪なんて求めていなかったら。

2015年度の理事会は全員女性で、会計と副理事のわたしはこのマンションに移ってきて5年以内のニューフェースです。マンションの過去ン十年の事情なんて、フリをしなくったって本当に知らないのです。このストーリーでジェンダー論を展開する気はありませんが、やはり今の感覚からすると、修繕委員会のメンバーは全員男性で、考え方がマッチョすぎる気がしました。
しかもトップ(と勝手に自認している)のT氏は、今ならモラハラで即アウトになるような人物です。

結局、T氏からの「おわび」はあるわけもなく、T氏は管理組合の費用拠出の申し出も無視。工事費用は自身で全額支払いました。

過去に捉われこだわり続けたことで、わたしのマンションはずるずると禍根を残し続けています。

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