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針の筵 (1000本)と命綱

<覚えておいてほしい登場人物> ※毎回載せてるので飛ばして読んでね♡
私の住んでいるマンションの住人
K氏…私のマンションの旧住人で区分所有者。現在は外部に居住中(所有権は維持)。居住中はマンションのガーディアン(守護者)気取り。実際はすぐ怒鳴る・キレる・自分以外の区分所有者は自分より下と思っている、モラハラ気質で“ダメな方の”昭和型ジジイ。
I氏…2016年度のマンション管理組合理事会の理事長。2017年度は監事。変節漢。
カワベ理事長(夫妻)…2017年度の理事長。穏やかな仲良しご夫婦。理事会も常にご夫婦で出席されました。
コヤマ姉妹(ユイちゃん、ミリちゃん)…副理事長。理事会にはお姉さんのユイちゃん、妹のミリちゃんのどちらか出席できる方が出てくれます。
イドさん…2017年度の会計。85歳を超えた高齢で、記憶に不安あり。新築時からの住人でK氏と親しい。
キヨタさん…区分所有の女性。2016~17年はS氏、O氏とともに大規模修繕委員会のメンバー。後年、理事会の役を拝命。

◆NPO法人マンション管理ネットワーク(マン管ネット)のメンバー
サトウさん…マン管ネットの理事長
ヤマダさん…マン管ネットのメンバー。建築家

<覚えておかなくていいけど出てくる人物>

M氏、N氏…2016年度、I氏とともに管理組合理事会の理事を務めたメンバー。どちらもこの時点で在住5年以内のニューカマー
S氏、O氏…キヨタさんとともにK氏によって指名された、わたしと同じ大規模修繕委員のメンバー。工事完了まで役を全うしてくれた、冷静で辛抱強くて、勇気のある区分所有者の方々

          *             *

2017年7月の理事会・大規模修繕委員会は、7月8日に開催される予定でした。
ところが前回、6月に開かれた2017年度第1回理事会の後、監事のI氏によって「修繕委員会はあくまで理事会の諮問機関であり、提案を上申はするが提案を審議・決定するのは理事会である」ということが主張されました。

で、翌7月の理事会召集の訂正連絡が回ってきたときには“修繕委員会の方のご出席はありませんので、よろしくお願いします。”という一文が追加されていました。
「なんのこっちゃ…」
と思いはしましたが、あまり気にないことにしてスルーしました。

そして第2回理事会の議事報告書で改めてNPO法人京都マンション管理ネットワークへのサポート業務の導入について、発生する費用も含めて臨時総会で審議するという一文が入っていました。

わたしはマン管ネットのサトウさんに連絡をし、臨時総会をすることになったから、それで承認されるまでサトウさんに動いてもらいづらいこと、できたら応募をかけたコンサル選定も一時ストップしたいと伝えました。
「今から止められませんよ。見積もり作成を依頼しているし、その費用を請求される可能性があります」
こちらの事情もきちんと説明したつもりだし、私のミスでもあることは伝えましたが、サトウさんはコンサル選定の一時停止を了解はしてくれませんでした。

わたしはわたしでサトウさんの回答には懐疑的でした。
私自身も仕事でクライアントワークをしていますが、今日び、見積もり作成だけで請求書なんか出したら、それこそ来る客も逃げてしまいます。
だからまずもってサトウさんの言うことは違うと思いましたが、何しろ業界が違う。違いすぎる。
この頃、東京オリンピックやインバウンドの高まりで飛ぶ鳥落とす勢いの建築業界と、年々歳々の斜陽産業である印刷会社では、あまりにスタンスが違いすぎます。

だから感覚的には「見積もりくらいで請求書なんか出せるもんか」とわかっていても、ベテラン凄腕建築業界人のサトウさんには、どうしてもそれが言えませんでした。

じゃ、どうすりゃいいのか。
サトウさんにこれ以上話しても無駄そうだったので、わかりましたと言って電話を切りました。
とりあえずコンサル選定の締め切り日までは1か月ほどある。とにかくそれまでに状況も変わるかもしれない。わたしは腹をくくるというより、不安のスイッチを一旦切ることにしました。

はるか昔、私に「人の生き死に以上に深刻なことは何もない」と言ってくれた人があります。もうすっかり連絡も潰えて、どこにいるかさえ今はわからない人ですが、なぜかこの言葉だけは時折、思い出します。
「人の生き死に以上に深刻なことなどあるもんか」
サトウさんも頼れない。コンサル選定は予定通り行わなくてはならない。臨時総会もやってくる。それは事実ですが、とにかく全部一旦流れに任せることにしました。

「なんか嫌な感じよねえ…」
わたしと一緒に修繕委員を務めてくれているキヨタさんと、この頃よく話をしていました。彼女は古くからこのマンションに住んでいることもあって、K氏の横暴な態度や、どことなく首を傾げるような理事会運営に対し、やはり嫌悪感を抱いてきた一人です。その分、修繕委員会の仕事や私に対してはとても協力的でした。

いっしょに委員をしている間、キヨタさんは頻繁に「今日おかずありますよ~」と連絡をくれました。
京都生まれ、京都育ちのキヨタさんがつくる「おかず」は手慣れた感じのする温かさがあってとてもおいしいのです。いくつか真似して作ったこともあります。彼女の存在はお姉さんのようで、いろんな意味でへとへとになりがちなわたしにとって、涙が出るほどありがたい命綱でした。

仕事で帰宅が遅くなった時でも、ピンポン(ドアのチャイムを押すことね)すると、きれいに小分けしたお皿に数種類のおかずを分けてくださったり、お手製のちりめん山椒を瓶に入れて分けてくれたりしました。
マンションのことについては、つらいつらい時期でしたが、キヨタさんのやさしさ(とおかず)には身も心も本当にずいぶん救われました。

こののち、臨時総会の準備とコンサル選定がパラレルで進行します。
目まぐるしい夏がやってこようとしていました。


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