見出し画像

SNSでポエムを売る、ということ

「怒りを歌え女神よ、ペレウスの子アキレウスの、おぞましいその怒りを」


私が好きな古代ギリシアのホメロスが残した叙事詩『イリアス』はこんな書き出しで始まります。
そもそも、古代人は怒りを「神聖なもの」として見ました。古代にうたわれた多くのポエムのなかで、怒りを発するのは「神々」です。


しかし、イリアスだけは、英雄アキレウスの個人的な怒りをテーマとしています。そしてこの病んだ英雄の怒りとともに、古代風の部族社会の迷妄からの個人の歴史的解放が高らかに告げられると。


■SNSにいるエモい人たち

NoteではSNSとまた違った人たちをフォローし、特にエモーションが駆動される人のnoteをよく読んでいます。素敵なエモにはサポート(寄附)することも。


昨今、SNSでポエムを売り、読者を慰めて暮らすというライフスタイルを取る人がでてきたような気がします。新しい生き方のようでいて、実は珍しくないのです。なぜなら、古代ギリシアの詩人たちもそうだったから。


ホメロスやヘシオドスは、各地を旅しながら、農民や奴隷に叙事詩を聞かせ、わずかばかりの代金を受け取り、放浪していたのだとか。ただホメロスは盲目な上に、身なりはボロボロだったそう。しかしただポエムを歌い散らすだけでなく、そこには世界の脱構築があったのです。


「労働」をうたったヘシオドスは、高慢で怠惰な金持ちたちを。そして冒頭で紹介したホメロスもまた、「イリアス」「オデュッセウス」を通じて、神々の名を騙って世界を思うがままに牛耳る権力者たちからの歴史的解放をうたっていたのです。


SNSでポエムをうたい、感動した人の奢りで飯に行く。良いですね。私もいち労働者なので、心に響くサーガを期待しています。


ご依頼等ございましたら、ここに少額を投げていただきメッセージを書いていただけると折り返します。