穢れたもの、ソルカナー

2年ほど前

ひきこもり状態が緩解し、外に出れるようになった僕だったが

相変わらず、誰かと話すのが苦痛で仕方なかった。

ゆるやかにでいい、自然に他者とコミュニケーションを取る必要があった。

そんな時、ふらっと入ったカード屋でなんの気なくマジックザギャザリングを買ったのが始まりだった。

MTGなんてブラックロータスしか知らない僕だった、でも不思議な引力が僕を誘った。

「真夜中の狩り」というカードセットを買ったのを覚えている。

そうだ、カードゲームの大会にでてみよう。

どういうわけが、そうひらめいた。

プレイ経験がなかったので、ルールを調べ、5パック程購入し近くのカード屋で大会に出てみた。

当然の話だか、どんなカードゲームも数パック買った程度でゴリゴリの構築フォーマットで勝てるはずもなく。



もちろんボコボコにやられた



でもラッキーで一度勝てた(二本先取の一本を取っただけなので試合には負けた)

速攻クリーチャーの滑り出しが良く、テンポ良くライフを削り

相手に盤面を制圧されかけた時にトップで引いた3点火力で焼き尽くして勝利したのを覚えている。


不思議なことにカードゲームをやりながらだと自然と会話できていたのが嬉しかった。

それから、体調が良い時にそのカード屋に通い、自然と話すことへの第一歩を踏み出した。

それから半月ほど経った時だろうか

「団結のドミナリア」というカードセットが発売された。

名カードも多いセットだが、特に注目されているのは「黙示録、シェオルドレット」のカードだろう。

市場では10000〜15000円ほどで取引されている

一度場に出てしまえは、突っ立っているだけで勝利できる制圧力の強いカードだ。

高いカードが有れば、安いカードもある

強いカードが有れば、その逆もある

「穢れたもの、ソルカナー」

というカードがある

市場では50円ほどで取引される神話レアのカードだ

競技プレイヤーには見向きもされない

いわゆるカスレアである

※カスレア
パックから出てきたらしょんぼりな残念なレアカードのこと

そんなソルカナーについて今日は紹介させてほしい。

(MTGを知らない人は読み飛ばして大丈夫)



「穢れたもの、ソルカナー」
青,黒,赤,②    クリーチャー
デーモン エレメンタル

あなたの終了ステップの開始時に、以下からまだ選ばれていない1つを選ぶ。
・カード1枚を引く。
・各対戦相手はそれぞれ2点のライフを失い、あなたは2点のライフを得る。
・クリーチャーやプレインズウォーカーのうちこれでない最大1体を対象とする。穢れたもの、ソルカナーはそれに3点のダメージを与える。
・穢れたもの、ソルカナーを追放する。その後、これを対戦相手1人のコントロール下で戦場に戻す。

5 / 5



わからない人が大半だと思うが

何が言いたいかというとこのカードははっきり言って弱い、欠点だらけのカード、ということだ。

欠点を簡単にまとめてみた。

欠点①
召喚しにくい
まず単純に三色の色拘束がキツい
ダメランやスロランのある多色環境とはいえ三色要求は事故率が高い、まず出し辛いというのがこのカードの大きな欠点としてある。

欠点②
仕事が遅い
ソルカナーは自分のエンドステップに一つづつ効果を発揮する都合、除去札の格好の的だ
エンドステップ前に普通に除去が飛んできて、何も仕事をやられていくことは一度や二度ではない。

欠点③
裏切る
このカードの最大の欠点にして個性
3つのメリット能力を使い切ったら、最後に残るのはデメリット能力だ、デメリットとして相手の盤面に移るというという、裏切りをやってのける


5/5のスタッツを生かす飛行もトランプルもない

欠点だらけのカードだ。

でもそんな穢れたもの、ソルカナーを始めて見た時に

これは、僕のことだと思った。

欠点だらけで

基本いいとこなしだ。

イラストもずんぐりしていて、なんとなく見た目も僕に似ている。

弱いけど、愛おしかった

不器用だけど、憎めなかった

なんだか、放っておけなかった。

当時、僕はとにかく自分に嫌悪感があった。

自分のことは素直に愛せないから

自分みたいな欠点だらけのカードを愛することから初めてみた。

そんな、欠点だらけのカードを大会で使うとどうなるかは明白で



当然ボコボコにやられる



プレイングの上達と相性差でたまに勝てるが

基本ボコボコだ

でもそれでいい

勝てなくても、自分が好きなカードを使ってコミュニケーションを取れるのが楽しかったし

デッキを構築して戦略を練っているときは自然と危険な願望から遠ざかることができた。

ソルカナーが盤面で頑張ってると勇気をもらえた。

それから、カードゲーム無しでも自然といろんな人とコミュニケーションを取れるようになっていった

MTGには感謝しかない。

それからカードに触れる機会も次第に減っていった。

ここのところカードに触っていなかったので

新しいカードセットを見てみると
「エルドレインの森」の

ベルーナグランドスコール(50円)というカードも僕っぽいということがわかった、いつか使ってみたいなあ。

カードゲームって社会の縮図だ

いろんな奴がいる。

走るのが早いやつも、勉強できないやつも、背が高いやつも、金持ってるやつも、なにやってもダメなやつも、友達作りが上手いやつも

それとおんなじだ

そういう、いろんなやつが一緒になって、一つのパックに入っている、そんな世界観が僕は好きだ。

また、大会に出てみようかな。


僕にトップレアは似合わない。

カスレアで勝負だ。

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