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チャッキーの絵

 息苦しいような熱気から逃げて、カフェでチャッキーの絵を描いていた。クーラーの冷気が気持ちよく、集中していた。すると、隣の席に座っていた女性がわたしに話しかけてきた。
「チャッキーだ」
 驚いて顔を向けると、笑顔でわたしを見つめていた。初対面の女性との会話は苦手だったが、なんとなく彼女の雰囲気に安心感を覚えた。
「チャッキーがお好きなんですか?」
「ええ、まあ」
「映画チャイルドプレイおもしろいですよね」
「全部みました。最初みたの小学生のときなんですけど、笑い転げました」
 絵を描きながら30分ほどチャッキーやホラー映画について語った。
「名前をお聞きしてよろしいですか?」
「わたしは沖、翼と言います。あなたは?」
「私は絵美と言います。すみません、突然話しかけてしまって。ただ、あなたのチャッキーが目に入って。夜になったら本当に動きそうで」
 わたしは戸惑いながらも、この絵を自分の映像作品に使おうと思っているのだと、物語もイメージしながら描いているのだと説明した。すると、絵美は驚いたような表情を浮かべていた。
「なるほど、それは面白そうですね。私も小説が好きで、最近は自分でも書いているんです」
 私たちはお互いの作品について熱く語り合い、時間が経つのを忘れていた。絵美の作品をスマホで読ませてもらったが、彼女の人柄がにじみ出ており、心温まる物語だった。
「また会えたらいいですね」
「その時はお互いに、たくさんの物語を紡げていたらいいですね」
 わたしは支払いを済ませ、彼女に軽く頭を下げると店の外に出た。
 熱気に包まれて空を見上げると、夏雲が湧いていた。蝉の声が降りしきるように響いている。
 そっと目を閉じた。
 目を閉じているのに、太陽が燃えていた。

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