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BTS〜アメリカン・ミュージック・アワード大賞に至る共感ストーリー

約50年の歴史を誇るアメリカの音楽賞「アメリカン・ミュージック・アワード(AMAs)」で11月21日、BTSが2021年の大賞を受賞しました!
ポップ部門のデュオ・グループ賞、ソング賞あわせて3冠の快挙です。

BTS、2年ぶりの対面ライブ

授賞式のパフォーマンスは異例の2回の登場、2番手と大トリをつとめ、圧巻の存在感を見せつけました。
AMAsは配信・アルバムセールスとラジオ放送頻度そしてファン投票のみ、つまり「完全にファンが決める(脚注1)」音楽賞です。業界有力者の審査員が受賞者を決めるグラミー賞と違い、アメリカでの人気がそのまま反映される仕組みです。

AMAs受賞_BTS公式_FExJ8DHacAQDLyd

BTSが観客を前にパフォーマンスをするのは約2年ぶりで、ロサンゼルスの会場に詰めかけたファンたちは大興奮。「会場のマイクロソフト・シアターの音響システムよりもファンの叫び声の方が大きかった」(脚注2・音楽専門サイト「バラエティ」評)ことは、SNSに投稿されたファン撮影の映像からも伺えます。

人気を決定づけた4年前のAMAs

BTSファンのARMY(アーミー・BTSファンの呼称)にとって、AMAsは忘れられない重要な音楽賞です。BTSは4年前の2017年11月、AMAs授賞式でアメリカのテレビに初めて生出演し、当時のヒットソング「DNA」を披露しました。

韓国語の歌にアメリカの10代が熱狂する。英語以外のコンテンツを消費したことのない親世代にとって衝撃だったはずです。
このときの客席の異常な熱量と彼らのパフォーマンスの完成度の高さは、その後のアメリカでのスターとしての地位を決定づけました。

↓会場の熱気が伝わるファンカメラ映像(2017年11月撮影)
https://youtu.be/PgX3z22Q_I4
https://youtu.be/GTlqQnCG9LE

このとき、普段はクールなラッパーのSUGAがひどく緊張していたことは、BTS沼にはまったARMYなら誰もが知っています。
BTSが世界的スーパースターに上り詰めていく歴史は一つ一つ動画に記録され、YouTubeですべて無料で追体験できます。いつファンになっても、8年前にデビューしたBTSが成長していくストーリーをドキドキしながら味わえるのです。

↓2017AMAs舞台裏 ファンによる日本語字幕版抜粋

参考・公式チャンネルの舞台裏映像
https://youtu.be/OMjMmULhl_M

授賞式に散りばめられたファンとのストーリー

2021年授賞式で披露した2曲目のButterのパフォーマンスでは、BTSとARMYの絆の象徴であるパープル色が派手な演出に取り入れられて、ARMYを喜ばせました。

「ボラへ보라해 (I purple you /ムラサキするよ) 」は、5年前のファンミーティングで紫色のペンライトに染まった客席を見たメンバーのVが使い始めた言葉として、ファンの間で広く知られています。
V本人のMCによれば「相手を信じてお互いに末永く愛し合おう」という意味が込められているそうです。

ARMYにとって特別な色を、AMAsの特別なパフォーマンスで華やかに使う。ファンを大切にするBTSの思いが伝わり、ARMYはますますBTSのファンになってしまいます。

大賞の授賞スピーチで、リーダーのRMは「4年前にこのステージに立ったときには、僕たちが大賞を受賞するなんて誰も思っていなかった。ARMY以外は!」と語りました。

ARMYにとって、BTSとの共通のストーリーがまた一つ、紡がれた瞬間でした。

感動に笑いを添える最年少メンバーの失敗「focus on」

大賞受賞スピーチでもメンバーの個性が出て、ファンにとってはたまらないエピソードが加わりました。
特に一番年下のジョングクが慣れない英語で必死にスピーチして言葉に詰まり、時間切れのため最年長のジンにスピーチ途中で強引に連れ去られるところは何度見ても笑ってしまいます。
ジョングク「focus on... あー!」(背面からジンに抱えられ連れ去られる)

授賞式の直後、BTSの7人は、ファン向けの配信プラットフォームVliveで受賞打ち上げを無料でライブ配信しました。この場では彼らはいつも韓国語しか話さないのですが、世界中のファンがアクセスしたため、しばらく配信が止まっていました。(画面上は1000万アクセスを記録)

この打ち上げの場でも早速「focus on」がネタにされ、配信のタイトルも「focus on」、乾杯の発声も「focus on」。メンバーたちが仲良くジョングクの失敗をネタにしている様子をファンとリアルタイムで共有しました。
そのハイライトをファンはすぐに別のSNSにあげて拡散します。

世界的スターになってもファンとの近い距離感を自然体で保ち続けるBTSはただただ凄い。そしてARMYたちは日々積み重なるBTSのストーリーに共感し、そのストーリーを何度も消費し、最終的には彼らとの思い出の品にお金を出し続けることになります。
今回のAMAsでも、究極のストーリー消費、プロセスエコノミーを体感したのでした。

【脚注】
注1 “The American Music Awards winners are voted entirely by fans.” https://www.theamas.com/about/
注2  https://variety.com/2021/music/news/bts-american-music-awards-1235117136/

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