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BTS沼とビートルズとはいからさん

ARMY(BTSファン)の間での有名な言い伝えがある。「あたながBTSと出会うのは、あなたが自分の人生の中で、一番彼らを必要としているとき。出会うべくして出会うんです」。確かにそうかもしれない。

私は自分がBTS沼に入った瞬間をよく覚えている。頭の中でハッキリと音がして、「あ。はまった」と分かった。
それは2020年11月ごろ。ARMYが編集したYouTube動画の中で、ダンサー兼シンガーで童顔小柄のジミンが、真剣な表情でインタビューに答えていた。「僕は歌がうまくなりたい。誰よりも高い声、誰よりもいい声を出したい。だから、誰よりも練習するんだ」
音楽に対する真摯で誠実な姿勢がヒシヒシと伝わってきた。それからジミンの歌が気になって、過去のMVのジミンの歌を注意して見始めた。ジミンは確かにいい声だけれども、センターを張るのは必ず最年少のジョングクだ。
「それでもジミンは、誰よりも一番歌がうまくなりたくて、努力を続けているのか。。。」
求めても届かない切なさは、人生の中で何度も味わってきた。あきらめないジミンに、すっかり感情移入した。

↑こちらの動画はちょうど沼入りしたころに日本の歌番組でOAされたDynamiteのパフォーマンス。ジミンとVしか区別がつかなかったけれど、ふたりがカッコよくて、なぜか誇らしかったことをよく覚えている。

Dynamiteがヒットする前から、BTSは気になる存在だった。何しろ、アメリカの3大ネットワークの人気トークショーにゲスト出演して、韓国語で歌うボーイズグループだったのだ。アメリカのテレビでは英語以外の言葉を聞くことはない。ニュース番組も、日本のニュースと違って外国人のインタビューは字幕でなく必ず英語に吹き替える。そんなアメリカの人気番組で、まさか韓国語の歌のパフォーマンスがあるとは! 初めて見た時の衝撃は忘れられない。

アメリカの3大ネットワークの深夜のトークショーはいずれも長寿番組の定番だ。中でもCBSのLate Show with Steven Colbert(レイト・ショー・ウィズ・スティーブン・コルベール)は、ビートルズをアメリカに紹介したことで有名なエド・サリバン・ショーの流れを汲む正統派のトーク番組だ。

ブロードウェイにあるエド・サリバン劇場で、スティーブン・コルベールはエド・サリバンに扮してBTSを紹介し、画面も白黒。観客席ではレトロな服を着た女性たちがキャーキャー叫んでいる。BTSをビートルズになぞらえた、ちょっと陳腐な演出だった。

このときはBTSの良さはサッパリ分からず、あのビートルズとK-POPアイドルを同列に扱うなんて納得いかないと思ったが、それでも強烈なインパクトだった。

最近では、むしろビートルズとBTSの共通点に目が行く。ビートルズはその圧倒的な人気を背景に、アニメ映画を作ったり、実験的なミュージックビデオを作ったり、世界中の優秀なクリエイターが集まって彼らを題材に新たなアートを生み出し続けた。BTSを擁するHybeも、BTSを主人公にしたウェブ漫画や、新たなマーチャンダイズの手法など、さまざまな新たな試みを続けている。

さて、沼入りの話に戻ります。
BTSが本当に気になり始めたキッカケは、こちらのnoteでした。

経済産業省の若手官僚がすごい熱量で、BTSの多文化パフォーマンスを分析して書いていた。おすすめします。

そして、2020年夏のDynamite。初の全英語曲。底抜けに明るくて楽しいディスコナンバーに、先が見えないコロナ下での生活を癒してもらった。Dynamiteの次のシングル「Life Goes On」の、「それでも人生は続く」というメッセージにも心打たれた。

2020年秋から冬。会食はゼロ、夜の外出もなく、ずっと在宅勤務で気分が沈みがちな日々。仕事は忙しかったが、毎晩BTSの動画をYouTubeでむさぼるように見た。ジミンとVを最初に覚えて、だんだんメンバーの見分けがつくようになると、楽しみが何倍にも増えた。とにかく1ー2カ月は毎晩3時間くらいYouTube見まくっていた。気がついたら3時、という日もザラだった。

彼らに惹かれた理由。
(1)アーティストとしての完成度の高さ。ダンスと歌の出来栄えは、ブロードウェイのパフォーマンスにも引けを取らない。
(2)ポジティブなメッセージ。みんな違ってみんないい。
(3)ギャップ萌え。配信専用バラエティ番組「走れ!バンタン」で見せる彼らの自然体の笑い声と、おっちょこちょいだったりおバカだったり、完璧なパフォーマンスとは真逆の親しみやすさ。
何よりも、彼らのメッセージにはとにかくネガティブな要素がない。悲しさや怒りを歌うことはあっても、嫉妬とか、暴力とかパワハラとか、とにかく実社会で直面する嫌な感情とは無縁だ。
そして7人がとにかく仲良しで、全員が努力家。そしてもちろんイケメン! 

7人の髪色がどんどん変わるのも、とても楽しくて驚きだった。昔の少女漫画に出てくる金髪やピンク色の髪色の超イケメン主人公たちが、そのまま現実世界に降りてきたかのようだった。ときめきトゥナイトとかはいからさんが通るとか青池保子先生のイブの息子たちとか。。(古すぎてすみません)

(青、金、ピンク・・・数十年前の少女漫画の自由な表現にあらためて感動)

メンバー間の人間関係で、ソフトなボーイズラブ的な雰囲気にもワクワクドキドキしている。私は圧倒的クオズ派(95年生まれのVとジミンのペアの呼び名)。仲良しのVとジミンの間に、最年少のジョングクがちょくちょく割って入るように見えるので、その「三角関係」には今でもヤキモキしています。(いい年をして我ながらバカだな〜と思うけれど、楽しいものは楽しい!)

彼らの魅力は万華鏡のように、光をあてる方向でどんどん変わる。何よりも、努力と才能と、ファンの心情に真に寄り添う誠実さがある。BTS沼からは当面、抜け出せそうにない。

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