ゲロ袋


愛情という尺度を人生に取り入れると頭がおかしくなってしまう。愛しているのかわからないから愛されているのかもわからない。何を根拠に愛を信じればいいのかわからない。わかりやすい愛情が欲しい。腹の底を覗いてもいつだってそこは真っ暗だ。叫んでも虚しくこだまするだけでなんの答えもそこにはない。満たされない。毎秒愛してると言ってほしい。身動きが取れないほどに抱きしめて欲しい。私のために時間やお金を犠牲にしてほしい。プライドも正気も投げ捨てて惨めに私の前に平伏して足を舐めさせてくれと懇願してほしい。足なんて舐められなくないけど、そんなことしてほしいわけじゃないけど、そのくらいの気概ないと、そのくらいしてもらわないとわからない。愛がわからない。行動に移さなくても言葉で表さなくても伝わるだろうなんて傲慢だ。舐めたジョークも不愉快な揶揄いも許されるだろうなんて傲慢だ。言動全てが愛の証明でなくてはならない。お前は愛の証明を怠っている。そんなものかと落胆する夜を私に与えるな。

愛されていたのに「嫌われた!」といって泣いた夜が幾度となくあった。冷たい廊下を意味もなく往復した。心臓の鼓動が止まなかった。私の人生は愛だけじゃないのに蛍光灯に張り付く蛾みたいに愛から離れることができない。起こすのは可哀想だから電話はしなかった。そうして自分だけは愛を体現しようとしていたし、もしくは苦しみに耐えるマゾヒズム的な快感によって愛を実感したかったのかもしれない。苦しんで許されたかった。苦しんで復讐したかった。後日、会って微笑みに触れたら嘘のように安心できた。抱きしめられて愛を実感した。全てが嘘みたいだ。

どうせ私はお前にとっての1番になれないという卑屈な考えが頭によぎる。1番になれるのだったらお前じゃなくたっていいのかもしれない。誰か私を1番にして欲しい。いや、ほんとは皆んなからの1番が欲しい。皆んなの1番になりたい。私には1番が相応しい。1番で当たり前だと思う。皆んな私のために戦争してほしい。血を流してくれたら実感できると思うから。
もう本当にうんざりだ。余計な事で頭も心も使いたくない。人生の幸せは愛にあるというのに手に届かない。傷つけたい、許せない、誰でも良くない、お前の!お前の!お前の愛が欲しい!

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