地上アイドル/地下アイドルって何やねん

2023年に自分の身に起きた一番大きな変化って何?と聞かれたら、まず間違いなく「地下アイドル現場に通い始めたこと」と答える。

そもそも地下アイドルという呼称自体あまり好きではないが、今回の記事の性質上その呼び方を使っていく。
一言で言えば、地上と地下の違いとかいう擦られまくったテーマを、非常に個人的な感覚でダラダラと考えるだけだ。

強く注意しておくが、これはあくまでも私個人の経験に基づいた私個人の考えであり、全員が共感できるものではない。その点にだけ留意してお読みいただきたい。



筆者のアイドルオタク遍歴

なんでこんなことを考えるに至ったかという参考のために、簡単に私のドルオタ遍歴を記す。
語ろうと思えばいくらでも語れるが、本題ではないので手短に。

私は2017年頃からアイドルをテーマとしたアニメやゲームなどのコンテンツに触れ始めた。
そんな私が2019年に初めてハマった3次元のアイドルが、ハロー!プロジェクト、通称ハロプロだ。今でも1ヶ月〜2ヶ月に1回くらいのペースで現場に行っている。

次に触れたのがオーディション番組であるPRODUCE 101 JAPAN、通称日プ。
シリーズ最新の日プ女子まで追っている。本国(韓国)版はPRODUCE X 101のみ見た。全てデビューグループについては見守る程度。
次いで日プきっかけでK-POPに落ちた。2020年の頭頃か。こちらは2023年に綺麗さっぱりオタ卒した。

そしてK-POPのオタ卒と入れ違いかのように、昨年行きついたのが地下アイドルだ。推しや好きなグループは伏せるが好きな女性アイドルが複数いて、現場にはどんなに少なくても月1~2回は行っている。暇な時期は週3くらいのペースで行く時もある。

他にも基本流行った曲やグループなどは把握するようにしているが、主な流れとしてはこんな感じだ。
まあ要は規模デカめのアイドルを推してたところから地下に行き始めたということだけ抑えておいてほしい。


「地下」アイドルって?

いきなりだが、「地下アイドル」の「地下」とはどういう意味かご存知だろうか。地下にあるライブハウスで多くのライブを行っているから、というのが由来らしい。
では、彼女らはなぜライブハウスという小さい箱でライブをしているのか?
地下アイドルを知らなかった頃の私は、正直「その程度の人材しかいないから」だと思っていた。

先ほど地下アイドルの推しメンは複数いると言ったが、今この記事を書くに至ったきっかけとなったアイドルが明確に一人いる。
そのアイドルは歌もダンスもめちゃくちゃ、本当にめちゃくちゃ上手い。あんまりこういう言い方はしたくないが、地上でも余裕で戦えるというか、その中でもかなりいい方なんじゃないかと思っている。贔屓目もあるだろうが、初めて彼女を見たときにそれくらいの衝撃を受けた。
顔も可愛い。少なくとも私は好き。明るくて話も上手。
要はぱっと見アイドルとして欠点がないのだ。まあ背がそんなに高くないくらいか。でもステージで歌って踊ってたら気にならない。
なんでこの子は地下やってるんだろう。あまりにも失礼だが、最初は正直そう思っていた。

そんな彼女が生誕祭でこんな話をしていた。

「昔からダンスを習っていたのでオーディションを色々受けていたが、とあるオーディションで『ダンスは上手だけど歌は下手だね』と言われてとてもショックだった」
「今の事務所に入って、ボイトレの先生に出会って、少しずつ歌にも自信がついてきた」

このオーディションが地下のものか地上のものか、そもそもアイドルのものかはわからない。が、彼女に出会って、この言葉を聞いてから、先ほどの「地下なのはその程度の人材だから」という考えが変わり始めた。

他にも色々な現場で色々なアイドルを見た。
可愛くてスタイルも良くて歌が上手い子は、世間が思っているよりもたくさん存在すると知った。
地上のアイドルに憧れてアイドルを目指し、地下として活動している子がたくさんいることも知った。

「所詮地下アイドルなんて」と考えていた自分が恥ずかしい。
地下アイドルでもアイドルとして輝ける、輝いている子はたくさんいる。
そして地上だとか地下だとか関係なく、彼女らは彼女らなりにアイドルという職を全うしているのだ。

それでも世間では「地下」として明確にメジャーアイドルとは区別される。
この差っていったいなんなんだ。


地下堕ちしたら戻れない?

よく地下アイドルのオタクが「一度地下堕ち(地上から地下のオタクになる)したらもう地上には戻れない」と言っているのを見る。
しかし、地下にハマって8ヶ月ほど、私は今でもハロプロの現場に通い詰めているし、まだハロオタの方が自分のアイデンティティだと思っている。

「地上に戻れない」と言っているオタクの多くは、地下アイドルの距離感の近さを理由に挙げている。
地上アイドルの接触イベントはそう頻繁に行われるものではないし、CDを何枚も積んでやっと1分も話せないかな~程度だ。ファンの数も多く、アイドルから認知をもらうのも大変だ。
対する地下アイドルは大抵週に2回はライブをしているし、その度に特典会を行っている。特典会では1000~2000円程度でチェキを撮り、サインを書いてもらい、1分程度の会話もできる。超人気グループじゃなければ、ちょっと通えば割とすぐ認知してもらえる。
会いに行って親しくなるためのハードルが段違いで低いのだ。

ライブのチケットの値段にも驚く。
ハロプロのライブは8000円前後で1時間半~2時間半のライブが基本となっている。地上はどこもそんなもんだろう。K-POPなんかは10000円超えがスタンダードだ。
対する地下アイドルは、単独公演なら一般チケットだと2500円くらい、本編1時間程度+特典会のものが多いように思う(ちなみに多くのライブではチケットにグレードがあり、SチケットやSSチケットだと倍以上、場合によっては30000円とかもある。その分特典が豪華)。
対バンはものによりけりだが、これも一般2500円程度のものが多く、中にはチケット代無料のイベントも山ほど存在する。この場合各アイドルの出演時間は大体20~30分程度で、イベント全体の時間は出演グループ数による。

かくいう私も、地下アイドルに通い始めた頃は「2500円でこんなにアイドル見ていいんですか!?やっす!」と喜んでいたが、今では「2500円?うーん渋いな…」と思うようになってしまった。これも地下アイドルオタクあるあるだ。もうチケ代1500円以下じゃないと出し渋ってしまう。

だが不思議なことに、ハロプロのチケ代8000円はポンと出してしまうのだ。この8000円でサイン有りチェキが4枚撮れるんだなと思うことも多いが、それでもまあまあな頻度でライブに行ってしまう。
それがなぜかと言われれば、ライブ本編の満足度が全然違うからだ。

アイドルに必要なのは何か、という話題は度々論争になる。
ここでそれを議論したいわけではないので、これはあくまで個人の意見として受け取ってほしいのだが、私はどうしても歌やダンスといったパフォーマンスを重視してしまう。
これはライブを重視するハロプロで育ったことも大きな要因だとは思うが、その根底、そもそもそんなハロプロにハマった理由として、幼い頃からなんとなく「アイドルは歌って踊る人」という印象を持っていたことがある気がする。

地下アイドルのライブだってもちろん楽しい。というかライブが楽しいと思うところにしか通っていない。でもライブが終わった後に特典会に行かずに帰れるか、と言われると、正直私は難しい。
ハロプロのライブではそれができる。特典会なんて当たり前にないけど、ライブを見るだけで満足して帰ることができる。
認知なんてもらってない。もちろんレスも来ない。それでも高い金を払ってライブを見に行きたいと思える何かが、ハロプロのライブにはあるのだ。
(ちなみにK-POPのオタクをやめた理由もこの辺りにあると感じているので、これはこれでいつか言語化したい)

じゃあその何かって何なのか。
さっきも言ったように、私の好きな地下アイドルは地上でも十分に戦える実力を持っていると思う。なら単純なパフォーマンスのクオリティの差ではないのだろう。
大きな舞台を広々と使った演出、凝った照明、いい音響、豊富な曲数を活かしたバリエーション豊かなセトリ…
アイドル本人の力だけではない、様々な要因が合わさって、私が満足できると思うライブというのは作られている。身も蓋もないことを言うと、それらに共通して必要なのが資金力だ。
そしてこの群雄割拠のアイドル飽和時代、元から資金力のある事務所に入れなければ、要は地上アイドルになれなければ、のし上がることはなかなか難しい。

となると、やっぱり考えたくなるのが「地上アイドルになれるのってどんな人?」ということだろう。
素質がある人?その素質って何?


オーラはどこからくる?

芸能人を語る際によく用いられるのが「オーラ」という言葉だ。
ある人が放つ独特な雰囲気。では、その「オーラ」はどこから来るものだろうか。生まれつき?それとも環境が育む?

私個人は、圧倒的に「環境が育む」派だ。
これまた私がハロオタであることも大きな要因かもしれない。
ハロプロのアイドルは「一見普通の女の子がアイドルとして磨かれていく」ということを楽しむ側面が他よりも強い。スキル・ビジュアルともに加入当初からは予想もできなかった激変を遂げ、立派にアイドルをやっているメンバーがたくさん存在する。
そういう子たちを見ていると、アイドルの素質なんてそう簡単に見極められるもんじゃないな、というか、素質ってなんなんだ、という気持ちになってくるのだ。

オーラとは少し違うが、さっき述べたこの記事を書くきっかけになった推しメンの発言。
オーディションでは「歌は下手」と言われたらしいが、今ではむしろ歌のイメージの方が強いメンバーとして知られている。
そして、彼女はそこに至った理由をボイトレの先生に出会えたからだとしている。要はきちんとレッスンさえ受ければいくらでも伸びる余地があったのだ。
オーディション当時の彼女の歌の実力はわからないが、その子が将来どれだけ化けるかなんてそう簡単に測れるもんじゃないんだろう。

そりゃ極稀に橋本環奈のように生まれもったオーラで一気にスターダムへの道を駆け上がる人もいる。
だが逆に言えば、そんな橋本環奈でも地下アイドルをやっていた時期があったのだ。
そう考えると、地下アイドルなんてやるのは地上アイドルとしての、芸能人としての素質がないからだ、というのはあまりにも暴論のように思う。


結局違いって何?

ここまではオタクの微妙にお気持ち表明みを帯びた怪文書を綴ってきたが、ここから先はまあ誰が考えてもそうやろ、みたいなありきたりなことしか書いてないので飛ばしてもらって全然構わない。

前の項目では、人の面から見ると地上と地下の違いはオーラだとか素質だとかそういうものにはよらない気がする、ということを述べてきた。
じゃあ結局何が違うのか?

そう簡単に一言でこれだとは言えないが、そもそもアイドル本人がどこまで目指すか、というのは確実に影響する。

ハロプロのOCHA NORMAというグループで活動している窪田七海さん。
彼女はハロプロ研修生に入る前、地下アイドルのオーディションに合格していた。しかし「もっといいところに行ける」と信じていたお母様がハロプロのオーディションを受けさせ、見事研修生入り、現在はデビューまで掴み取っている。ハロオタ内では有名なエピソードだ。

この場合は本人ではなく親の意向だが、ハロメンだって一歩違えば地下アイドルだったのだ。
正直今は国民的というほどの大人気の女性アイドルグループはないし(そりゃ坂道とかは変わらず人気だけど一時期ほどじゃないし、とき宣やふるっぱーもまだそのレベルではない)、最近のSNSバズなんかを見てると、そもそも地下アイドルグループが憧れの対象になりつつあるとも感じている。となると最初から地上を目指さない子も今まで以上に増えていくだろう。

そんな中でアイドル本人が地上への強い意志があった上で、更に必要になる…というか大きく関わってくる要因は、やはり時の運だろう。

地下地上の違いは単なる素質だとかオーラだとかにはよらないと思う、というのは何度も述べている。じゃあオーディションでは何を見てるのか。
それは「今その時に、そのグループに必要かどうか」だろう。

ハロプロのオーディションだって、何回か受けた上で合格した子も沢山いる。そういう子は本人のスキルアップももちろん要因としてあるだろうが、やはりその時事務所が欲しい子と本人のイメージが合致したことが大きいだろう。
というか研修生からの昇格とかまさにそうじゃないか。「今この子をここに入れたらおもしれー」って事務所が思うからこそ娘。13期みたいなのが生まれるわけで。

余程のスター性がない限り、結局そういうところが上手く噛み合わないと、誰でもオーディションに落ちたりデビューできずに終わる可能性が高いような気がしているのだ。

しかも元も子もないことを言うと、アイドルになった後の売れる売れないってもはやメンバーの質というより、地下地上関係なく結局大人にかかってるし。
いい曲用意して、いいライブブッキングして、頑張ってプロモーション打って…そういう売れるための行為を大人がやらないと、どれだけ輝かしい人材を集めても売れないもんは売れないだろう。

ということで簡単に所感をまとめると、アイドルを目指して地上になるか地下になるかは、オーラや素質ではなく本人の意志と時の運次第。更にその中で売れるかどうかは環境次第。というところ。なんとも残酷な話だ。


まあ、どっちもいいよね

ここまでらつらつらと地上と地下の違いについていかにも嘆かわしく述べてきたが、序盤にも書いたように、今は別に地上の方がいいとか思ってない。思ってるならこんなハマってない。

地下に通い始めた当初はレスをもらうと気まずいというか、ステージにいるのにオタクのこと見なくていいから!と思っていたのに、今じゃすっかり我が物顔で受け取ってるし。「アイドルと…話せる…!?チェキも撮れる…!?」ってビビってたのに「もう話すネタが無いんだよな〜」とか言ってるし。
(本当にアイドルを友達だと思ってるわけではないが、地上との相対評価として)ちょっとした友達感覚でライブを見て話しに行くのも結構楽しいもんだ。アイドルにSNS監視されるのはまだちょっと嫌だけど。

先日初めて認知をもらってるアイドルが卒業するという経験をした。
彼女が最後の特典会で涙ながらに、「ファン一人一人と深く関われるのがこういうチェキ撮ったりするアイドルのいいところだよね。皆にありがとうみたいな感じだったら私多分こんな泣かないもん」と言っていたのをよく覚えている。

オタクはみんなどんなアイドルが好きか、どうアイドルを応援したいかが違う。それはきっとアイドル側だって一緒で、アイドル一人一人どんなアイドルになりたいか、どう活動していきたいかはそれぞれなのだ。
だからまあ、地上とか地下とか関係なく、全てのアイドルが本人にとって満足のいくアイドル活動ができればいいな〜と思う。

てなわけで、今日も月末のひなフェスのことを考えながら、今週末にチェキを撮りに行くか悩むこととするか。

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