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バンドリ!8th☆LIVE 追加公演《Breakthrough!》DAY2 ライブレポ

 このエントリは、令和2年10月9日に行われた『BanG Dream! 8th☆LIVE 追加公演 《Breakthrough!》 DAY2 《ドキドキ☆SpecialDAY!》』の自称どこよりも遅いライブレポート……に名を借りた、個人的な備忘録を兼ねた感想記事です。
 今回もBanG Dream!やPoppin'Party(ポピパ)等についての説明は割愛します。
 なお、前日のDAY1はライブビューイング(LV)で観賞し、当日はプレミアムシートで観戦したこと及び、過日の配信によって内容を補完していることを申し添えます。

□総決算

 前年2月末の7thライブ以来、1年半以上ぶりのPoppin'Partyによるワンマンライブ。同5月のNGNC後に始まった"修行期間"が明ける号令代わりの、彼女たちにとって初の二日制ワンマン。当然、発表以来ポピパのファンからの期待はかなりのものがあったが、結果的には、現在の彼女たちが持ちうるもので、じゅうぶん期待に応えてみせたといえるライブだった。
 理由は様々だが、最大の理由は、なんといってもセットリストの強さだろう。例えば、インタビュー上でギターボーカルの愛美の口から、とっておきにしている旨が明言されたReturns、あるいはワンマンでは5thライブ以来の披露となった、前へススメ!、Light Delight等の貴重な楽曲。例えば、ときめきエクスペリエンス!、キズナミュージック♪、イニシャルのオープニングテーマ3曲。例えば、Yes! BanG_Dream!、STAR BEAT!、ティアドロップスなどの、みんなが聞きたい定番曲。7thで初期曲のほとんどを封印してみせたのとは打って変わって、いまの手札のなかで、最も強いカードをすべて切っていくようなゴージャスなセットリストだった。
 前回の8th☆LIVE 夏の野外 DAY3『Summerly Tone♪』からの期間が短かったこともあり、ライブタイトル『Breakthrough!』にちなんで2ndアルバムから数曲を追加し、そこから副題である"キラキラ"と"ドキドキ"をテーマに2、3曲入れ替えるだけで、セットリストはそんなに変わらないという予想を、いい方向に大きく裏切ってくれた。
 正直、目立つ演奏ミスは少なくなかったように感じていて、もちろんミスがないに越したことはないのだが、ポピパの魅力というのは、完璧な演奏で度肝を抜くとか、そういうものではないということに、ようやく説得力を持たせるようなライブでもあった。愛美は、確かDAY1で自身らを「いいバンドになった」と自賛していたと思うが、いいバンドというよりは、いいチームになったというのが率直な感想だ。

 会場となった東京ガーデンシアターは、オタクには馴染み深い地である有明に開業したばかりの国内最大の音楽ホールだが、ここもよかった。
 動員数的には、ナンバリングライブとしては1stの品川ステラボールに次ぐ三千人弱という、首都圏の会場では二度とないレベルの少なさだったが、その人数でもリードギターの大塚紗英(さえチ)に「圧が違う」といわしめる少数精鋭感は、前回の夏の野外 DAY3では感じられなかったものだった。個人的には、本当の1stライブである『春、バンド始めました!』のグッズTを着ているファンを見かけたことに、少し感動した。
 会場そのものも、プレシ以外の3階席や2階アリーナ後方でも、そこそこ近くでステージが見られるし、音楽ホールということもあってか、音響的にもよかった。地味な点でいえば、トイレも多いし、商業施設やホテルと隣接しているのも好条件だった。
 一点、残念だった点を挙げるとすれば、ほぼほぼ全編、5人ともハンドマイク(+マイクスタンド)だったせいもあり、演者どうしの絡みがあまり見られなかったことか。前々日のMorfonica(モニカ)のMCで、コロナ禍の影響で、ソーシャルディスタンスを取っているような説明があったが、そのわりには、ポピパは近い時はかなり近かったので、なんだかよくわからない。
 いずれにせよ、キャパは小さめではあるものの、会場自体は素晴らしかったので、アフターコロナでもう一度ライブしてほしい。

 新型コロナウイルス感染症が流行している影響という点では、調べてはいないが、8th 夏の野外と変わらなかったように思う。強いていえば、今回のほうが、観客側がやや笑い声も抑えていたような気がするが、定かではない。夏の野外の時は、完全声出し禁止のライブに少し戸惑ったけれど、今回は、演者側も観客側も前回より少し慣れていたような気もする。
 とはいえ、こうした特殊な状況下でのライブとなってしまったのは、少し惜しい気持ちもある。今回のライブは、ありていにいって修業期間の、否、この二年間の総決算ともいえるライブだったからだ。

□キャストごとに

 順を追ってライブレポートの形式とするのは、公式その他のメディアや、記憶力のいい個人に任せるべきだろう。ここでは、個人的にポイントで押さえたい部分について言及する。まずは、キャストごとに。その次は楽曲ごとに。

◆大塚紗英(Gt)
 DAY1の、特にアンコールのあたりからシリアスな表情をしていることが多く、なにか発表でもあるのかと少し恐々とさせられた。
 現地でも、Light Delightの前振りのあたりから、単なる立ち姿なのに、一人だけかなり違う雰囲気を漂わせていて、スポットライトの当たらないところで泣いているのを見つけてからは目が離せなくなった。曲の終わり頃、観客席に向かって微笑みながら頷いていた姿が、あまりにも印象的。
 配信映像でも、以前ほど暴れているわけでもないのに、なぜか目で追ってしまいがちなのが不思議。それがバンドにおけるギターというものなのかもしれない。ライブでは全員いい表情をしているけど、なかでも最もいい顔をするのが彼女で、ライブに向かう姿勢も含めて、彼女はステージに立つ星の下に生まれてきたのだろうと思わされる。
 演奏面では、ギターソロや前へススメの出だしでのミスなど、目立つミスもちらほらあり、この後の日清パワステリブートでの配信ライブが会心の出来だったと自賛していたのを鑑みても、この日は少し本調子ではなかったのかもしれない。とはいってもイニシャル、Hello! Wink!等ではサビでも細かめのフレーズを弾いていて、付け焼き刃ではない実力も感じさせた。二日間通して1曲目だったBreakthrough!もDAY1ではややグダってしまっていたが、DAY2で修正してきたのはさすが。
 幕間映像は、基本的には演者たち自身もライブで初めて見るようで、一人ひとり別撮りのVTRだった今回、自身以外がなんと話していたかはライブのなかで知ったらしい。次の目標について「(結成当初からの夢は総なめで叶えてきたので)目標はない」と回答したVTRに対して、その答えを改めて最後の挨拶に持って来たのは、Ms.ストイックらしい内容も含めて、感心させられた。出てきた数字は若干ガバガバだったけど(笑)
 これは完全に邪推だが、VTR内の回答に他のメンバーとの温度差が出すぎていたため、少し修正する意図もあったのではないか。

◆西本りみ(B)
 最初のMC部分での「今日は拍手が歓声だからね」というフォローといい、バラエティコーナーでのまさかの大逆転といい、言わずもがなのLight Delightといい、2回連続で簡潔にまとめた最後の挨拶といい、一歩いっぽたくましく成長していく彼女をこの先も見ていきたい。反面、回を重ねるごとに、大きくなる腕のテーピング。ずっと心配しているのだけど、ポピパを続ける限りは心配し続けることになるのかもしれない。
 3年前の5thでのLight Delightでは、歌詞に重なる部分が多すぎて、泣きながら演奏していたのが彼女だっただけに、今回のライブで、曲の雰囲気に不釣り合いなほど笑顔を振りまいていた姿が印象深い。歌詞中に"笑顔で唄うよ だから"、"自分のこと好きになれるよ だから"という箇所があるが、彼女も自分のことを好きになれたからこそ、今度は泣かずに、笑顔を届けようとパフォーマンスしているのだとしたら、かなりエモい。ポピパの涙もろいクイーンの座は返上かもしれない。
 そんなおりみの挨拶に感動して、さえチが泣いていたくだり、実質的にはバンドリ!からキャリアをスタートさせた二人の、異なる方向への成長が端的に表れていて、心温まる一幕だった。
 それと、衣装紹介の時、背中側にリボン等の飾りがある場合、おりみさんは壇上でくるりと回って、カメラ(観客席)に向かってお尻を振って飾りをアピールしてくれることが多いのだけれど、あれめちゃくちゃ可愛くないですか。あまり他のところでも言ったことないけれど、あれ好きです。

◆大橋彩香(Dr)
 バラエティパートのクイズコーナーで、両日合わせて6問を全問不正解、文句なしの罰ゲームはある意味さすが(笑)
 前の夏の野外ではモニカのmika、RAISE A SUILEN(RAS)の夏芽という二人のプロドラマーとの共演で、ちょっと割を食った格好だったが、今回――キックなどでは、やはりかなりの出音の差はあったけれど――夏ほどの格落ち感はなく、相変わらずあれだけ叩きながら、あれだけ笑顔で、あれだけ歌えるのは尋常じゃないなという感慨を抱いた。
 シンバルを増やした影響なのかは分からないが、マイクの位置が遠く、最初のBreakthrough!などではかなり歌いづらそうにしていたので、次回以降のライブでは高いところから吊るなり何なり、スタッフにセットを見直してほしいところ。
 バンドリ!プロジェクトでは、ドラムの先生でもあるmikaがモニカになったことで黒子に徹する必要がなくなり、スタンディングドラムの際、沙綾のドラムセットに座ったmikaと師弟で絡んでいたのにはほっこりした。
 だが、そんなことよりなによりも、彼女がフルのドラムセットに座って12曲も叩くのは、いつ以来だろう? もしや初めて? ここに来て、彼女が多忙なために曲数の多いライブができないなんて声を跳ね返すハイ・パフォーマンスを見せた、彼女のプロ根性には脱帽である。

◆伊藤彩沙(Key)
 前回のライブから1か月余りで迎えた初の単独2days、二日間ほぼ変更なしのセトリだったとはいえ俎上に乗った16曲。5人のなかで最も楽器経験が乏しい彼女に、その影響が顕著に出ていた。キーボードが変な音が鳴ってる時(ex:Breakthrough!)と、ちゃんとした音が鳴っている時(ex:ときめきエクスペリエンス!)の差が激しいのもあるけれど、単純に和音が汚く鳴ってる箇所や、演奏ミスがやや目立ってしまっていた。
 特に、前へススメの出だしで先にミスったさえチにつられて、前奏部分がボロボロになってしまったのはちょっと頂けない。ポピパの曲にはキーボードが印象的なフレーズが出てくるものも多いので、彼女がそこを仕上げていけない環境にあるということは、ポピパの状態としてベストではないということになってしまう。
 インスト曲の謎の手拍子練習も、NGNCなどでも見られたけれど、特にその後の曲で使うわけでもなし、何だったのか毎回困惑してしまう。特に、今回の2例目の手拍子はあまりにも難しく、当日の会場でも完成度が低かったし、そのくせ、愛美が「完璧で~す!」と締めるのもなかなかとぼけていやがる。個人的には、例のインスト曲はポピパのなかで最もロック方面でかっこいい瞬間だと思ってるので、お遊びをやるなら、なにか別のインスト曲を開発してほしい。
 ただ、今回は初披露の3曲以外にも、あまり披露回数が多くない曲がセトリに載ってきているなか、サイサイ譲りの困ったらキーボードを見ろの精神は定着しつつある。特に、事前説明のなかったHello! Wink!の"Masquerade, Masquerade step"のフリを、なんだかんだ前方席の観客の多くがやっていた時に実感した。
 それと、毎度ながら、ポピパのトークはあやさちゃんがいないと空中分解するのではと思わせる危うさがあるので、そういう意味でもなくてはならない存在。ファンミーティングツアーのテーマソング作りや、夏の野外 DAY3での夏空SUN! SUN! SEVEN!の茶番劇などを見ても、現在のバラエティ路線は、彼女の貢献なくして成り立たなかった。

◆愛美(Gt/Vo)
 5thあたりから何度かポピパのライブに行かせて貰えているが、もしかしたら、歌唱は今回が最もよかったかもしれない。立ち上がりこそ、地声での高音に苦しんでいるところもあったが、曲を重ねて調子を上げていくのは、一端のバンドマンのようでもある。中盤以降は、高音部での裏声もほぼほぼ音源通り、音を取りづらそうなようすもなく、勝負どころでは実に伸びやかで、安定感が半端なかった。
 昨今のなにかと配信が増えがちな情勢下で、持ち前のポンコツぶりを遺憾なく発揮しているシーンも少なくないが、ポピパだとやはりリーダーという顔を見せていたし、なによりこの日、かなりギターを弾いている場面が目立った。感覚的には、5th以前に戻ったような印象。
 ギターを弾きながら歌う愛美は、バンドリの原風景といっても過言ではないので、今後とも期待したい。
(ときエクの1番終わりの間奏で、さえチと向かい合って演奏する場面で、いまいち合わせられず苦笑し合ってたのはご愛嬌)
 ただ、イニシャルのブレイクで顔を逸らす振り付けは単純にダサいので、なにかまた別に考えてほしいところ……w
 MCでは、最初から最後の挨拶まで、一貫してお客さんへの感謝を伝えていたのに気づいた時はグッときた。特に、「ここに来るまでに色々な考えがあったかもしれないし……」と観客側の事情にも思いを寄せてくれたこと、実際、この日のライブに行けるのか悩んでいたこともあり、胸の奥のほうに響いてきて、素直に嬉しかった。

□楽曲ごとに

◆Returns
 残念ながら、あまりよい披露とはいえなかった。手数が多くない曲だけに、音がバラけると途端にショボく聞こえる。とはいえ、ある意味3rdの1000回がファンの記憶に残り続けていたり、4thの開幕ときエクだったり、そういうのと同じように、メットライフドーム公演『NO GIRL NO CRY』(NGNC)のReturnsが越えられない過去の幻影と化した感じはある。ステージ上では泣かないことが信条のへごですら、不覚を取りそうになったほどのエモさは、今回見られなかった。
 じゃけんNGNC円盤買いましょうね~(ダイマ)

◆What's the POPIPA!?
 現地ではアリーナの真ん中あたりにいたので、ステージ上の愛美はとにかく、ステージ脇から登場した4人は見えず、映像で初めて確認したのだけど、出だしの各キャラソンのエッセンスを入れているAメロで、おりみが過去のキャラソン披露でもやっていた"チョコレイト"の小さなフリをやってくれたのが嬉しい。細かいところだけど、そういうところでファンの気持ちを察せるのがおりみの強み。
 愛美がずーっと言ってきた(5年越しらしい)飛びたいという夢、DAY1でスタッフが後ろのほうでごそごそしているのを見ても気づかなかったくらいで、まさかここでやってくるとは予想外だった。彼女がフライングした瞬間、飛んでる? 本当に飛んでるじゃんと目を疑ったものだし、DAY1はLVだったので、映画館のスクリーンいっぱいに広がる、星をバックに歌う姿が面白すぎて、笑いをこらえるのに苦労した。それから、弾きはしないのに、わざわざフライングのためにランダムスターをぶら下げていたのは、完全に解釈の一致。
 演奏から解放された愛美が、こぶしに近いようなトーンで力強く歌っていたのも印象的だし、戸山香澄としてはやりすぎ感もあるが、ポピレンジャーだからこそ許されるところもあるので、ライブ披露としては大正解ではないだろうか。正直、この曲に関して、全員が楽器を放り出してカラオケをすることに説得力を感じなかったのだが、こういう使い方ができるなら、むしろこの曲しかないということになるだろう。
 ただ、ポピパにはめずらしい曲調ではあるものの、いつか、彼女たちが演奏込みでこの曲をやってくれる日が来ることを、私はまだあきらめていない。

◆Time Lapse
 出だしの全員歌唱パートで、4人が人ではない(違)をやっていたシーン、ちょうどいいダサさで実は好きでした。
 愛美飛翔後に即入ったので、出だしの歌に愛美がいないというレアケースが見られたし、この曲には、ポピレンジャーのお遊び感から一撃でライブに戻すだけのパワーがあるので、この曲順を考えた人を褒めたい。

◆Hello! Wink!
 ごりごりに色々な楽器音のある曲という印象で、これまたポピパにとってはめずらしいが、音の強さが出ていてかなり盛り上がれるナンバーではないだろうか。今回のライブでも仕上げてきた曲のひとつだったし、このライブを皮切りに、日清パワステREBOOTや超次元音楽祭2021、JAPAN JAMでも披露していて、愛美も新たな定番曲にしたい旨を公言しているので、演者側も手応えがあるようだ。
 なんといっても、ライブにおけるこの曲をモンキーダンス抜きには語れないが、まず、開始前に丁寧にレクチャーしていたのが奏功していて、当日見える範囲からは、自分も含めてほぼほぼ全員が踊っているように見えた。他の人のライブレポートに便乗すれば、演者と観客の一体感。これぞやはりライブの醍醐味、といえるだろう。
 それから、間奏に来るベースソロがめちゃくちゃかっこいいのもこの曲の見どころ。思わず声を上げそうになってしまうレベル。
 残念だった点を挙げるとすれば、2番のラップっぽい部分。ここはライブでもかなり歌いにくそうだと思っていたが、演出・歌唱ともにさらっとこなしてしまっていたので、ここに工夫があれば、さらなるブチアゲ曲に化けそうな予感がある。

◆ティアドロップス
 個人的には、この曲は低音と一体となってドシンドシン来るのが盛り上がるのであって、ギターの曲ではないイメージを持っていたし、もっといえば、バンドを始めたキャラポピパの面々が、私たちもロック調の曲をやってみたいということで作り上げたってイメージなので、正直、今回のギターのアレンジ変更はまだピンと来ていない。
 ピンとは来ないが、一昨年の夏あたりから、あまりにも多用されすぎているので、新たな試みそのものは理解できる。
 今回のライブでいえば、アゲ曲を立て続けに叩き込んでくるような曲順もよかった。

◆前へススメ!
 本人たちもファンからの待望を感じているほど、人気の高い楽曲だが、意外にも10曲以上やる大きなライブでのフル演奏は、4th武道館以来。
 昨年のファンミツアー東京での音スカスカ具合に比べるとはるかに良くなってはいたけれど、出だしのミスをきっかけに、Bメロのへごのソロパートあたりまで、ドラムに対して音が乗っていないような感じでバラバラだった。そういう流れもあってか、愛美が2番サビの"そうだ どんなに雨が強くたって"を「風が強くたって」と間違えて歌っていたりもする。
 個人的には、この曲がなければバンドリにハマることはなかったであろう、思い入れの強い曲なので、ばっちり仕上げてきての披露をいつかは見たいもの。
 終わったあとのMCで、すかさずさえチが「(修行は明けたけど)もっともっとやれることあるよね」といっていたのには、少し安心してしまった。

◆Yes! BanG_Dream!
 大きなライブでイエバンを最後に持ってくるのは、2018年末の6thライブ以来。
 この選曲の解釈は色々あるだろうが、本エントリで注目したいのは6th以来というところ。6thライブと今回の8thライブファイナルには共通点がある。初めてナンバリングライブに参戦したRAISE A SUILEN、そしてMorfonicaという新参のリアルバンドの後を継ぎ締める役割を、プロジェクト最初のバンドであるPoppin'Partyが担ったということだ。
 往々にして、プロジェクトの看板を背負う最初のユニットというのは、プロジェクト内でも人気が高いもので、その人気を当てにしてバーターで日程を組む場合もあるだろうが、ポピパの場合は少々事情が異なる。「彼女たちも応援してあげてください」などという立場にないポピパからの控えめな、しかし確かなメッセージがイエバンという曲に込められていた、というのは単なる深読みだろうか。
 RASも、モニカも"Yes! BanG Dream!"であると。
 イエバンそのものは、ポピパのなかでも最もよくライブ披露されてきた曲のひとつだけれど、今回のイエバンは、ひょっとすると歴代でも最高の出来だったかもしれない。これまでのライブのイエバンを聞いていて、最初の楽曲だし、もはやこの頃のサウンドを演者やスタッフがよしとしないので、音源通りのサウンドを志向しないのかと感じていたが、今回のライブでは音源通りのギターサウンドが出ていて、特にギターソロは、サウンド・演奏両面でこれ以上ないほどのクオリティだった。アームを交えて煽る最後のかき回しも高まる高まる。
 ライブの後に出たインタビューでは、最近音作りを見直して、特に足元などがごちゃごちゃしてきたのを整理し、楽器本来が持つ音を活かす方向にしたと語られていたが、その効果が最も顕著に出たのが最後に来たイエバンだったのは、ライブ作りの妙といえる。

◆CiRCLING
 この8th☆LIVE 追加公演の各日の副題は、DAY1が「キラキラ☆FestaDAY!」、DAY2が「ドキドキ☆SpecialDAY!」で、この英語部分はCiRCLINGの歌詞中の合いの手と同じであり、久々のセトリ入りを予想していた。この曲の、腕で輪っかを作る振り付けは、声が出せない状況で会場の一体感を出すのにうってつけでもある。
 しかし、まさかのセトリ落ち。……と、思いきや、終了後のあいさつのBGMがこの曲。スタッフもニクいことをすると思っていたら、愛美が部分的にカラオケで歌唱し、観客が輪で応える、最後の最後での熱いタイトル回収。このサービス精神も、ポピパの現在地を示す一幕だった。

□その他

◆カメラワークや演出
 ほとんど披露しない曲ということでいえば、事前予想通りにReturnsが来た上で、Light Delightまであったのは完全に予想外で、DAY1ではイントロの演奏が始まっても、しばらく何の曲か分からなかったほどだった。この曲のライブ披露といえば、5thの初披露まで遡るが、5thのライブBDでは、この曲だけ違う映像フィルターがかかっていることでも話題になった。今回の現地のディスプレイにも同じフィルターをかけた映像が映っていたのだが、これを配信では採用しなかったことは激賞したい。今回のライブで見せた姿は5thの後追いではない、いまのポピパのLight Delightだったからだ。
 イニシャルのライティングは素直にかっこよかったが、Cメロの"連続する日常と 断続する非日常が"の画面上の演出はなかなかなだけに、"halation"の部分はもう少し凝ってもいいのではないか。
 配信映像に関していえば、モニカでも同じことがいえるが、胸より上のアップを使いすぎ。せっかく弾いているし、せっかくの新衣装なのに、手元や下半身が映らないのはもったいない。
 あと、ソロパートを弾いてる半ばでカメラを切り替えることが、やはり少し多い。他の間奏のあいだは存分に他のカメラを切り替えてくれて構わないので、ギターソロならギター、ベースソロならベースを映し続けてくれてもいいのに、とずっと思っているけれど、もしやそういう需要は少ないのだろうか。

◆音作り
 いつもよりコーラスや合いの手の生歌率が高かった気がする。録音と比べると、音程でもタイミングでもズレることが多くなるのは致し方ないが、こんな時期だからこそのファンサービスだとしたら嬉しい。
 前の夏の野外では、ポピパのライブで初めてドラム等の低音がずしっと腹の底に響いてくる体験ができたのだけれど、野外仕様の一度きりかと思っていたら、この日もしっかり響いてきたのは嬉しい誤算だった。これはぜひとも継続してほしい。
 7thあたりから恒例行事と化していた、高音部でボーカルが潰れたようになる現象も、今回現地で聴いた限りではなかったような気がする。
 逆に、これ以上ボーカルの音量上げると、現地だと潰れてしまうのかもしれないが、毎度毎度、映像になると現地よりボーカル、ギター、キーボードの音量が上がっているのは、そろそろどうにかならないのか。一定程度はご愛嬌、どこでもやってることとはいえ、一か月そこらでの最速配信ともなると、サウンドの差がちょっと露骨だった。私の家の音響の問題なのだろうか。

□新境地

 現地では分からなかったけれど、配信では、Morfonica 1st LIVE『Cantabile』の配信を見た翌々日に、この日の配信を見てなにか物足りなさを感じた。そこで想起したのが、8th夏の野外 DAY3の評判が、モニカの記念すべきライブ初登場と、前島亜美 a.k.a 丸山彩、上坂すみれ a.k.a 白鷺千聖のライブ初共演に集中していたこと。そして、3rdでのあのRoselia初登場の衝撃である。
 遡っていけば、COUNTDOWN JAPAN19/20でも、NGNCでもポピパがだめだったというわけでもないのに、同日に共演した別のアーティストのライブパフォーマンスのほうが楽しめてしまった。そして今回だ。あの3rdでRoseliaに《食われて》しまった事件は、相手がRoseliaだったから起こったことだと思い込んでいたが……もしかしたら、相手が誰という問題ではなかったのかもしれない。
 言い方を変えれば、それはポピパ自体が抱えている問題ということだ。私でもそう思うのだから、いわんやポピパのファン以外をや、である。
 結局のところ、多くのオタクがバンドに求めているのは《かっこよさ》なのかもしれない。ニュートラルとポップをプロジェクトから至上命題とされた主人公バンドが、他のバンドと比べてサウンド面や、これといえる特色、バンドの持つ世界観について不利となるのは当然ともいえるし、物足りない面は否めない。
 バンドリ!プロジェクトは大所帯になっている。修業期間に入る前と比べても、さらに1組リアルバンドが増えたし、ナンバリングライブは複数日程で、非リアルバンドからの参加も恒例となりつつある。勢い、どうしても他バンドとの比較となってしまう場面も多い。オタク流行語を借りれば、ポピパしか勝たんと言ってしまいたいところだが、なかなか難しさもある。
 数字が出る以上は比べられることもある。だが、比べられないこともあるだろう。比較して物足りないから、いいライブではなかったというわけではない。特に、これまでにも書いてきたように、今回のライブはセトリも出音も会場もよいなど、好条件が揃っていた。
 個々のライブ単体を見てよかった悪かったというのも大事だし、観客の誰もが同じコンテンツを追い続けられるものでもないが、ポピパには、この声優がキャラクターと同じ楽器を担当してバンドを組み、継続的に活動していくという、最初は無理ともいわれた試みの先駆者として、常に模索し続けていくものがある。幕間のインタビュー映像でも、いくつものライブを経ていくなかで、彼女たちがなにを考えていたのかが映し出されていたが、それらがひと連なりのストーリーとなっていく、と捉えるのはいささか好意的にすぎるだろうか。彼女たちに起きていく変化が、点と点が繋がって線となる面白さというのは、翻って彼女たちの営為そのものの面白さともいえるのではないか。
 へごが最近機材にも興味が出てきたと言い出した修行明けでドラムセットにシンバルが増えたり、ROCK IN JAPAN FESTIVAL2019の出場でボロボロだったのを受けて問題意識を抱き、目に見えてギターを弾くシーンが目立っていた愛美だったり、たぶんそこには、リアルな物語がある。

 今回のライブのコンセプトとなっていた「背中を押す」。これがコンセプトとしてうまく機能したのは、程度の差こそあれ、コロナ禍で誰もが我慢や苦難の生活を強いられてきたという時世にハマったというのが大きい。そういったご時世だから「背中を押す」をコンセプトにしたといったほうが正しいだろうか。
 ただ、これが4thあたりまでのポピパであったなら、背中を押すというのは、ちょっと大それた目標に感じたかもしれない。振り返ってみれば、ポピパには背中を押すような歌詞の曲が多かったというのもあるが、いまの彼女たちの、どこかに持っている余裕が、良い方向に作用したのは間違いあるまい。
 そこにキャラクターのPoppin'Partyの物語とのリンクが働くのは、意図的なものか。はたまた、"キャラクターとリアルライブがリンクする次世代ガールズバンドプロジェクト"の必然なのか。
 客席から見ていた戸山香澄がGlitter*GreenのDon't be afraid!に背中を押され、バンド活動へ突進していったのと同じように、倉田ましろや朝日六花の背中を、今度はポピパが押してきた。一方で、ミルキィホームズに導かれていたリアルポピパが、いまでは観客の背中を押している。

 2019年9月に始まったファンミーティングツアーは、全国5都市を回る、ポピパ単体としては初の全国ツアーイベントとして、修業期間の一環として行われたもので、私は地方公演を3か所回り、東京公演もLVで見た(チケットが取れなかった)。
 この修業期間に培ったものをどうやって見せるのかと思っていたところに、ワンマンライブと銘打ちながら、そのなかで堂々とクイズコーナーを設けてきたのが今回のトピックだった。この力技でもって、ファンミツアーの経験を還元してきたのは完全に予想外だったが、それに意外なほどに順応出来てしまった自分もいる。
 もしこれが、NGNCの直後に行われたライブだったら、おそらく受け入れられなかった。だが、前記事で酷評した、7thからのポピパらしさであるリラックスした雰囲気や、演者自身の持つ空気感、演者とスタッフが二人三脚で作り上げるライブ……そういうものを含めた素地。これは彼女たち自身が作り上げてきたものだ。
 NGNCからの彼女たちは、名実ともに、リアルバンド・Poppin'Partyとして通しでライブに立つようになった。コンテンツを背負った声優ユニット、それは次元を越境し、二次元と三次元のあいだに片足ずつ踏み出したような存在である筈が、キャラクターは会場内の大型ディスプレイ、すなわち二次元のなかだけに登場するという逆転現象が起こっている。
 ファンミツアーファイナル東京の即興劇でも、入りこそはキャラっぽく入っていくものの、あっという間にそれが解けてしまっていた。彼女たちの歩みは長く、キャラとして収録で培った経験より、キャストどうしが積み上げてきた関係性のほうが大きくなってきている。キャラのなりきり即興劇をするのは、今更すぎるのかもしれない。
 へごが最後の挨拶で口にした「実家感」。ここのところ、特に彼女が何度か言っているキーワードだが、最初は、なんとなく寛げるゆるい空気感のことをいっているのだと思っていた。しかし、改めて見つめなおすと、ポピパの「実家感」はよりリアルな意味を持ってきていた。漫然と存在し、ありがたみに欠け、人によっては厭わしさすら感じる……ただそこに、安心感や、居てもいい場所としての価値もある。5thあたりから、ライブ中のキャラクターのパートを激減させて、なおBanG Dream!としてのライブが成立することを証明し続けてきた彼女たちは、ついにこの日、演者自身のパーソナリティをライブの場でも前面に押し出すという方向に着地させた。
 カラオケも、フライングも、クイズコーナーも、もちろん演奏も、すべて含めてこれがポピパのライブなのだといえる。成立している。その境地に、いよいよ足を踏み入れたようなライブだった。これが、冒頭で総決算と述べた理由だ。

 会場では、横浜アリーナで、走り始めたばかりのモニカとの対バン……Freindship LIVEが開催されるアナウンスがあった。この対バンはLVで観ていたのだが、この日は、モニカとの共演ということもあってか、本編中はキャラの体で進めていたのが逆に新鮮だった。特に、MC中のウェーブのくだりであやさちゃんが思わず素に戻ってしまう一幕があったが、そこにさほど違和感が働かないのは、大げさにいえばポピパにしかできない芸当だろう。
 そして、その横浜アリーナでは、『Breakthrough!』の幕間映像であやさちゃんも言及していたRoseliaとの対バン、BanG Dream! 9th☆LIVE『The Beginning』が発表された。Roseliaの活動開始から4年余組まれることのなかった対バンが、 ついに実現する。ただ、盛り上がる会場のオタクを尻目に、私はうまく拍手することができなかった。
 これまで述べてきたリアルポピパの新境地も、メリットばかりではない。一度きりのライブにかかるエモさ、一曲で放出する熱量に関しては、どうしても不利に働く。共演したバンドに話題を持っていかれがちな、ポピパのウィークポイントだ。まして、今回は3rdの頃とも、まだファン層が固まりきっていないモニカとの対バンとも違う。非リアルバンドを含めても、バンドリ!コンテンツで最もファンが多いのが、現在のRoseliaだ。
 バンドシーンの実際を無視して、あえて対バンの"対"を対決の略とするならば、甚だ不本意だが、明らかにポピパに勝ち目はない。こんなところでも、アニメ3期のGirls Band Challengeの話とリンクしてしまうのは、ひどく皮肉だ。
 逆に、まったく勝ち目がないからこそ、声出しのできないコロナ禍で対バンが組まれたというのは邪推がすぎるだろうが、あやさちゃんが映像内で触れていた、互いの積み重ねた時間の話は、その時間の経過がなければ実現しえなかったカードであることを窺わせる。

 今回は、なんとか両日のチケットを確保できている。この対バンには、どうしても参加したい理由があった。もちろん、ポピパのファンが一人でも多く会場にいたほうがいいというのもある。だがそれ以上に大きいかもしれないのが、やはり、あの3rdでの出来事だ。
 今更、ポピパがあの時の借りを返してくれるだなんて、想定してはいない。リアルバンド活動において、Roseliaがポピパのライバルバンドとして構想されたのは、ほんの初期の一時期のことであって、バチバチにやり合うこともないだろう。
 勝敗は関係ないと言いきってしまいたい反面、正直、悔しさもある。ただ、見ていて悔しいのに、指をくわえているしかなかった3rdライブ。もう触れることはできないと思っていた、自分がバンドリにハマる以前のあの日の出来事に、4年半の時を経て関わることのできる機会が巡ってきた。望外のチャンスといえるだろうし……本人たちのなかではもう決着がついていたとしても、こっちはまだ決着していない。リアルバンドのPoppin'PartyとRoseliaの関係は、《食われた》ことに端を発している。8月21日、22日の二日間、彼女たちの再戦を見届けることで、その因縁をもう少しポジティブに再評価できるのではという希望があるし、実際、そうしたいのだ。

 Poppin'Party×Roselia。リアルバンドの対バンの組み合わせとしては、全6組中の3組目となるが、ポピパはもちろん、Roseliaもまたこれまでとは少し違う、新たな姿を見せてくれるのではと期待している。これまでにもガルパライブやNGNCなどで共演しているとはいえ、最初のリアルバンドであるポピパとの対バンは、Roseliaにとっても何かしら期するところがある筈だ。知名度ではワンツーの両バンドだけに、この対バンが最初で最後になる可能性もあるだろう。
 会場は、バンドリ!コンテンツでは三年連続となる真夏の富士の麓、富士急ハイランド・コニファーフォレスト。都心部からは距離があるが標高が高い分、東京よりは涼しい。一昨年のFlamme、昨年の8th夏の野外の双方とも出音もよかった。反響がない分、強めに出しているのか、低音の迫力は特筆に値する。
 新型コロナウイルス感染症が流行しているなかでのライブという点でも、バンドリ!はライブ実績に関して先駆者といっていい。都心部は凄まじい状況下だが、山梨県にて、換気は万全の野外ライブでもある。昨年同様、感染者を出さないライブを期待したい。
 そんな、BanG Dream! 9th☆LIVE『The Beginning』は、開催前日の現在、DAY2のみ一般発売中だ。なにかと気がかりの尽きないご時世ではあるが、基本的な感染対策をして、リスクも承知の上で、会場に足を運ぶことができそうな人は、一緒に楽しめると幸いだ。

 なお、BanG Dream! 9th☆LIVEに関しては、こちらのリンク先を参照されたい(ダイマ)
https://bang-dream.com/9th-live-thebeginning


//セットリスト

01.Breakthrough!
02.Returns
03.イニシャル
04.ぽっぴん'しゃっふる
05.Step×Step
~インスト曲~
06.ときめきエクスペリエンス!
07.キズナミュージック♪
~バラエティコーナー~
08.What's the POPIPA!?
09.Time Lapse
10.Hello! Wink!
11.ティアドロップス
12.Light Delight
13.ミライトレイン
~EN~
14.前へススメ!
15.Yes! BanG_Dream!
~あいさつ(CiRCLING)~

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