バンドリ7thライブDAY3《Jumpin'Music♪》ライブレポ(嘘)


□はじめに

 このエントリは、平成31年2月23日に日本武道館で行われた『TOKYO MX presents BanG Dream! 7th LIVE DAY3 Poppin'Party《Jumpin'Music♪》』をライブ・ビューイング(以下LV)で観戦した、ポピパのファンによるライブの感想……に名を借りた、不満の表明。ポピパ等についての説明は割愛。
 ええとも、今さらです。
 あ、申し遅れましたがはじめまして。namezokenと申します。たぶん、しばらくは書いたとしてもバンドリのことくらいだろうけども、よろしくどうぞ。

□前段

 セトリ等はアニメ系メディアのライブレポを参照したほうが早いので割愛。
 誤解のないように7thライブDAY3で行われたことを書いておくが、ポピパの演奏に問題があったわけではなかった。むしろ、愛美のMCにもあったように、彼女たちはさらに上手くなっていた。前回の武道館公演と比べても、ミスをしても笑い飛ばせる度胸を得ていたし、楽器を見なくても余裕で弾けるようになっていたり、演奏しながら歌やコーラスをするのも、さらに完璧に近づけていた。ギターソロもアレンジをより減らし、CD音源に近くなっていたし、ティアドロップスのように披露を重ねた曲や、キズナミュージックのような勝負曲は特に完成度が高まっていた。初披露となったJumpin'もラストにふさわしく、ばっちりキマっていた。
 それだけでなく、円形ステージで互いの姿が見えなくなることも多いにも関わらず、いちいち目を見合わせて確認しなくても、息を合わせて演奏できていた。クリックあるんだから当然といわれればそれまでだが、バンド演奏者としてのポピパは、ますます力を付けていた。
 ただ残念ながら、LVでのカメラのスイッチは問題が多く、多段円形ステージなのに寄りが多すぎて、演者たちがどういう位置関係なのかわかりづらかったり、キズナミュージックのギターソロで、リードギターの大塚紗英(さえチ)を映していなかったり、切り替えた先のカメラで演者がなにかの影に隠れて見切れていたりするなどの面では現地と大いに差があったように思う。現地との差ということでいえば、会場での音響の問題なのか、映画館の音響装置がショボかったのか不明だが、裏声等の高音部分が総じて潰れたように聴こえたのも甚だ興ざめだった。アンコール明けで一時映像が中断したことも含め、こうしたLV特有の問題が、この感想に加味されていることはご承知おき願いたい。

 MCもよくなっていた。リラックスした5人が、互いの空気感を理解しあった上で、相変わらずのツッコみ不足を繰り広げ、しかし最後にはばさっと強制終了することを覚えていて、これまでのライブで最も笑えた。
 その上に、4thあたりから演者が出演して盛り上げてくれている幕間映像の出来も過去で一番だった。5th、6thと続いた謎のバラエティ路線を踏襲せず、これまでのポピパの変化と、現在のそれぞれのバンドへの思いが聞けたのは、二度目の武道館という舞台にぴったりだった。個人的にも(これは単なる5人のロングインタビュー映像だったが)、以前からドキュメンタリーをしてほしいといっていたので、この路線はまたいつかやってほしい。
 VTRのなかで、インパクトがあったのは、ベースの西本りみ(おりみ)が告白したLight Delightで泣いてしまう理由。これまでも上京時の心境にハマる、"大丈夫だよ 一人じゃないよ"あたりから特に泣けるといったような話はしていたが、かつて、訳あって学校へ通えなくなってしまったこと。そんな孤独のなかで、ただひたすら天井を見つめていたという、いくばくかの暗い青春時代の話は、少なくとも個人的には初めて聞いた。それを乗り越えて、ここに立っているというメッセージと共に、そういう過去も話せるようになった、彼女の成長にグッときた。
 そして、さらにその上をいったのがアンコール前の愛美のインタビュー。そのなかで、3rdライブ『Sparklin'PARTY』の振り返りがあった。4th武道館ライブ発表の場でもあった3rdでは、それなりに仕上げていき、大きな発表をしたにも関わらず、シークレットゲストとして初登場したRoseliaに、完全に話題を奪われた。このことについて、愛美本人が触れたことは、相当な衝撃だった。
 当時、時系列で考えれば、すでに武道館に向けての練習も始まっていたことだろうし、3rdライブにもその練習の途中までの成果が見て取れた。技術的に向上していたことは間違いない。
 一方のRoseliaは、ほうほうの体だった。そもそも、元々経験者らしい経験者が、ピアノを習っていた明坂聡美くらいしかいなかったのだから仕方がない。7thDAY1でRoseliaが見せた姿と比べても、演奏的には雲泥の差で拙かった。
 けれども、ポピパを観にチケットを取った筈の観客が、圧倒的に支持したのはRoseliaだった。熱狂した会場で、Roseliaがはけた後の観客の声援は、先程までと比べるべくもなく、まるで、Roseliaで力を使い果たしてしまったかのようだった。そのことにショックを受けたのかどうかわからないが、アンコール後の1000回潤んだ空の披露がボロボロであったことは、7thで久々にこの曲を聴いたファンからも語られているし、後のインタビューでもポピパ自身から、反省点があった旨が述べられている。
 この後にポピパが、デビューしたばかりのRoseliaに、あっという間に追い抜かれてしまったことは、バンドリのオタクを名乗るのであれば、誰でも知っているようなことだ。だけど、発端となった、あの3rdライブでの《食われた》出来事を指して、愛美自身が「悔しかった」と振り返ったのは、個人的にもあまりにも大きかった。
 ステージに立って、声が出なくなることもあった。雑誌のインタビュー等では、最初の頃は苦しくて、泣きながら練習に取り組んでいて、ただ将来的な成功を夢見ることだけが支えだったということも語られている。そうして、技術を磨いてきたのに、技術的には未熟だったRoseliaに完敗を喫した。「悔しかった」なんて、一言で語りきれるような感情だっただろうか。
 後から3rdの映像を見る限り、個人的には、なぜRoseliaにあれほどまでに食われてしまったのか、納得いかない。納得できないから、映像を見てじわじわと悔しさを覚えたし、それが武道館の発表で解消されるような流れに救いもあった。だが、今回の7thで、愛美自身の口から悔しかったと語られたことで、ステージ上で、裏で、食われる一部始終を見ていたメンバーが、特にリーダーの愛美がどういう心情だったのか、考えようとしていなかった自分に気づかされた。後から映像で見ているだけのファンの立場で悔しいのに、そこでポピパのメンバーたちが感じたかもしれない悔しさ、無力感、やるせなさ、不安感、挫折感に思いをやることを無意識的に避けていた。彼女たちが深く傷ついたかもしれないのを想像したくなかったために、自然に考えれば、当然気づかなかった筈のない、Roselia登場の衝撃をなかったことにしていた。
 愛美のインタビューがアンコール前で、順番的に最後だったので伝わりづらかったが、時系列的にいえば、それまで何度もライブをこなしてきたにも関わらず、4th武道館公演まで、メンバー間が、特に多忙なドラムの大橋彩香(へご)は打ち解けられていなかったようなことが、各メンバーの口から何度か示唆されていた。その上に、愛美個人としてもバンドリ!プロジェクト立ち上げから二年以上もやってきたのに、後輩バンドに一発で追い抜かれるという、惨めといえばこの上もなく惨めな経験までした。そんな、腐って投げ出しても仕方ないような状況下で、メンバーをして「一番寝てない」と泣かれるまで、リーダーとしてポピパを引っ張っていき、ついには、埋まるかどうかすら心配された日本武道館公演を成功裏に終わらせたこと。結果として、この武道館公演をきっかけにポピパが一皮むけ、バンドとしてチームとして、違うステージにススみ、現在の成功と見なされる立場まで繋がったこと。一度目の武道館が大きな節目だったことは、これまでにも語られてきたし、この7thライブのVTR中にも話に出てきていたが、3rdライブのエピソードがそこに加わり、ストーリー性がより鮮明に映えた。この企画に期するもの、色々なことで後塵を拝し続けながらも乗り越えてきた裏側に感じ入るものがあり、素直に脱帽するし、正直、観終えてから少し泣いた。

□失望

 だからこそ、である。
 この7thライブ。ポピパのファンにとっては、あの伝説ともいえる4thライブ以来の日本武道館への凱旋だ。大きくなったポピパが、どんなものを見せてくれるか。期待をふくらませるなというほうが、無理筋というものだろう。
 そうでなくとも、バンドリ初の3days公演で、DAY1のRoselia、DAY2のRAISE A SUILEN(RAS)の後を締める大トリ。平日開催となった前日までと違って、土曜日の開催でもある。バンドリのメイン・バンドを謳うだけある好待遇といえるだろうし、少なからずいた全通のファンは、二日分の冷めやらぬ熱を持ち込んでの最終日だった。
 ところが、このDAY3はその負託に応えうるステージではなかった。

 バンドリ!プロジェクトのキャッチコピーといえば、古くからあるのが"キャラクターとリアルライブがリンクする、次世代ガールズバンドプロジェクト"だ。このテの2.5次元的な要素を持つ、声優ユニットの活動を柱のひとつとするコンテンツには、多かれ少なかれキャラクターとのリンク性が求められるが、バンドリの場合は、キャラと同じバンドを結成し、同じパートを担当するというのが特異で、セールスポイントでもある。
 だが、声優は飽くまでも声の芝居のプロである。広くいえば同じお芝居という括りで垣根は低いが、基本的には、ライブのステージ上で客に向けて、その姿態も含めてキャラを演じきることのプロではない。ただ、キャラと同じ声の持ち主が、キャラに扮してパフォーマンスを見せる。そのなかに、客の側が二次元世界のことを投影する。そういうショーの筈だ。
 無理に演じよう、キャラを見せようとしても、自ずと上手くはいかないことは、意識的にか、無意識的にかはともあれ客の側も承知の上だろう。そこまでのことは求めていない。この際は説明を省くが、その点でも上手いのが、Roseliaなのだ。
 キャラと中の人の境界を曖昧にするネタにおいては、Roseliaのほうにはるかに分がある。だいだい、Roseliaの初期メンバーとポピパでは、元々のトーク力に差がありすぎる。初期のライブと比べて、ステージ上のポピパからキャラ色がどんどん薄れていったのも、アンコールまではキャラの体で続けるRoseliaとの差別化でもあるだろう。ならばこそ、ポピパは、この寸劇はキャラでやりきって、終わったらフリートークをするとか、境界線をはっきりと引くべきだった。4th武道館のように。
 だが、余裕が出てきたばかりに、脚本にも遊びの部分が最初から設けられているのだろう。寸劇中でもアドリブに入った途端、中の人が出てきてしまって、どこまでがキャラで、どこからが中の人なのか判然としなくなる。
 舞台上でのいわゆる"茶番"だけではない。一度目の武道館のセルフオマージュともいえるキャラクターソングのコーナーでも、慣れが蔓延していた。どうやっても、キャストがやればキャラになるだろうと思っているのではと疑わせるくらい、キャラに扮することへの気迫が不足していた。
 ポピパは絆の歌をうたう。ただ残念ながら、その絆というものが、長いあいだ続けてきて、なりゆき的に得られた現在の関係から生じてくる、なあなあの関係となって、今回のステージに影を落としていた。そういう側面を思ってしまう。

 ポピパらしい特徴のなかで最も大きいものの一つがアコースティック・コーナーだ。元々、愛美とさえチがアコギを弾けることもあり、うってつけで、今回のセクシー2のB.O.Fは、5thのTime Lapseに続いて、アコギ2本アレンジのやや無骨ともいえるかっこよさと、エモーションを込めるさえチ、メインボーカルの愛美、二人のハモり等がハマって、満足度の高かった曲の一つだった。
 ただ、このアコースティック・コーナーをやるには、セットチェンジのための中断が必要だ。そのあいだに着替えもするので、結果的に登場→アコースティック→アンコール前→アンコール後と、最低3回の衣装替えが行われる。ポピパの衣装が非常に多いのは、主人公バンドというだけではなく、この辺の事情も関係していて、今回新調されたキズナミュージックの衣装は非常にできが良かった。
 しかしだ。裏を返せば、それだけ頻繁に、ある程度の長さのインターバルが必要になる。ライブとして見れば、当然、一度上がった熱が途切れてしまう。ポピパの特徴であるものが、同時に弱みでもある。だからこそ、会場の空気を作れる曲がポピパには多く備わっているともいえる。
 例えば、Roseliaの楽曲には、ある程度の方向性が強い。BLACK SHOUTやNeo-Aspectらの代表曲にも見て取れるように、彼女たちの世界観を反映したゴシックで、なんであればV系の要素を感じさせるかっこいいロックチューン。その大きな幹があって、周りに枝葉として陽だまりロードナイトや軌跡のようなエモい泣き曲や、Sanctuary、Safe and Soundのような荘厳な曲がある。
 Poppin'Partyの持っている楽曲は、それより若干幅広い。コール&レスポンスが多く、楽しくポップな曲がメインのイメージではあるが、STAR BEAT、二重の虹、キズナミュージックのような明るいのにエモい曲もまた、ポピパの代名詞とされる。ティアドロップス、Time Lapseというロックチューンも持っていれば、1000回潤んだ空、キミにもらったもののような泣き曲もあり、Light Delight、ガールズコード、切ないSandglassのように新しい顔もどんどん見せてきて、ついにはWhat's the POPIPA!?のようなコミカルな曲まで出てきた。楽曲数に比例しているだけともいえるが、おそらく、バンドリ!コンテンツで最も多様なナンバーを揃えている。
 はたして、彼女たちはこのライブで、その多様な楽曲の持っているイメージや、エネルギーや、エッセンス、思い入れなどを表現できていただろうか。
 例えば、7thライブで特によく取り上げられる、Time Lapse→ティアドロップスの流れは、観戦したファンからは禁じ手だろうといわれるほどの盛り上がりを見せた。これは成功例だ。
 だが、その他の場面について、盛り上げるという点において、成功していたようには思えない。そもそもが、寸劇を挟んだ影響もあって、中断が多すぎてぶつ切りの印象になった。そこに加えて、ロックチューンを二度続けて出している上に、後述するが、初期曲もあまり使えない。そこで3rd以来の1000回潤んだ空、アコースティックverではあるもののライブ初披露となったキミにもらったものという泣き曲を二曲放り込んできたのだが、メンバーたちの砕けたようすと、エモさマシマシの世界観を持つこの二曲がミスマッチを起こしていた。
 Light Delightがセトリ落ちしたことも解せない点だった。確かに、香澄が声が出なくなってしまったアニメ1期後編を思わせる要素の強い曲ではある。しかし、幕間映像でおりみがたっぷり語っていたために、LV会場内でも、セトリ落ちを残念がるポピパファンの声が聞こえてきたほどだった。それだけでなく、当初はリーダーである愛美がひとりで気負いすぎていたが、最初の武道館ライブを経て、結束が強くなったという一度目の武道館が転機だったという話とも符号する。その上に、泣いてしまうようなつらいこととして、愛美の口から語られた3rdライブでの悔しさのエピソードがばっちりハマる。
 今回のセットリストからは、アニメ1期関連の曲が総じて外れていた。強いていえば、1期再放送版の特別EDテーマとなったティアドロップスは入っていたが、あの曲はもはや、ポピパにとって外せない十八番という位置づけのほうが強い。
 外せない十八番ということでいえば、メジャーデビュー前時代の1stライブ『春、バンド始めました!』から数えても、ポピパのワンマンでYes! BanG_Dream!もSTAR BEAT~ホシノコドウ~も入らなかったライブは、この7thが初めてだった。この二曲は、いってみればポピパの代名詞的なナンバーだ。それを初めてセットリストから抜いた。アニメ2期放送中のタイミングで、ポピパの歩んできた足取りの確かさを印象づけるようなこの挑戦は買いたい。
 だが、アニメ1期関連曲を外す、アコースティック・コーナーをやる、1回目の武道館のセルフオマージュもやる、もちろん2期のOPとEDも外せないと、結果的には自身の手足を縛りすぎていた。
 ライブの満足度を上げるために、完成度を上げるというのは地道なアプローチではあるが、正道だ。今回のセットリストは、19曲やったとはいうものの、キャラソンが5曲(1コーラス)に、カバーが2曲、さらに空オケだったWhat's the POPIPA!?(1コーラス)と、楽器を持っていなかったり、後ろから音が出ている曲数が多すぎた。バンド演奏が、バンドリ!コンテンツ最大の特徴ではなかったか。Roseliaが新メンバー二人を加えての初めてのナンバリングライブであるにも関わらず、史上最多の曲数を演奏してみせ、RASが一度も幕間を挟まず、ぶっ続けでパフォーマンスを披露したことに比べて、この体たらくはなんなんだと言いたくもなる。

 MCが、面白さという点においては従来で一番だったというのは素直な感想だ。最後の挨拶もいつもと違いがあって、いつもはそっけなく、お仕事モードを隠そうともしないへごが、それなりの長さのコメントをしていたのは、単純に嬉しい誤算だった。しかしそれは、さえりみの二人の最後の挨拶が長すぎたせいで、時間調整で短く済ませるだろうと予測していたからでもある。いつも、最後の挨拶が長いのがさえりみの二人だけれど、今回ばかりはだらだらと長すぎた。あまりに長すぎて、途中で聞いてるこちらの集中力が切れてしまったので、なにを喋っていたのかほとんど覚えていない。
 それ以外にも曲フリがぐだつくこともあった。特に冒頭のカバーコーナーに入る部分、へごが「ポピパじゃなきゃダメみたい!」と口にするシーンは、いつものへごへごした口調で、台本に書いてあることを読み上げただけと素人でも分かる言い方だった。そこは、どうせ曲フリだと分からせるなら、声を張って、次の君ダメへの期待感を煽るべきだったろう。茶番でぐだついてるのなんていつものことといえばそれまでだが、多くのステージをこなしてきて、5人がこなれてきたために、そういったメリハリ、聞く側のことをもう一段階ちゃんと考えるという、基本的なことができていないシーンが目立っていた印象がある。
 他に、幕間映像の中で残念だった点といえば、インタビュー中に何度か上辺をきれいに繕う回答、いってみれば中身のない回答が散見されたことだ。お手盛りのインタビューなのは自明だし、ぜんぶをガチで回答されると流せなくなるだろうが、インタビュー形式を取っている以上は、中身のない回答を連発されると時間潰しに堕してしまう。前述の、おりみや、愛美の少なからず赤裸々な回答があっただけに、そこの温度差は目立って見えて、ショーとしてのちぐはぐさを加速させた。
 3rdでの失敗を幕間映像で語りながら、同じ轍を踏んでいるのは滑稽ものとして狙った演出というわけではなかっただろう。3rdでポピパがRoseliaに食われてしまったのは、ポップな学生ガールズバンドというのに対して、ゴシックでメタルでハードという世界観の分かりやすさの差も少なからずあった筈だが、最も大きかったのはエモーション、気持ちの差だったと思っている。楽器経験者もあまりおらず、音源はおろか、自分たちのキャラを扱ったアプリもリリース前で、ポピパのライブ中に時間を割かれて飛び入りするシークレットゲストの立場での初お目見え、演奏にさほど自信もない中で、なんとか観客に認めてもらわなければならない。そんなひりつくような逆境が、技術的には未熟であったRoseliaのパフォーマンスをソリッドにさせ、その気迫の差が、ポピパとのあいだに如実に現れてしまった。この7thで見られた光景は、その再来になってしまっていなかったか。
 本作がデビュー作であるさえチ、おりみの両名には天然ボケ、引っ込み思案と基礎的な性格では中の人に似ているキャラを設定した一方、他の3人にはそうではないキャラが与えられている時点で自明ではあるが、Poppin'Partyもまた、裏方の側が困難を強いて、表側の人間が努力し、乗り越えていく、苦闘と成長をエンタメ化したコンテンツという側面がある。ゆえに、彼女たちが素晴らしいものを成し遂げた時だけでなく、もがいている姿そのものまでもウリのひとつになっていた。
 このライブを始め、インタビューなどさまざまなところで語られている通り、現在のポピパはセットリストはもちろん、ライブタイトル、演出まで手作り感をもって、演者たちに一定の裁量が認められているし、その裁量は4th以来どんどん増しているといっていい。反面、理不尽な要求を突きつけてくる《大人》の側のプロデュースを外れた部分に対して、なにを売るのか自身で考えていく必要があるということでもある。この7thライブでは、そこのところの詰めが甘いまま、ポピパらしさという言葉が上滑りしていたように見えた。
 背負うものをてんこもりに背負わせて、ポピパのキャストたちが潰れそうになりながらステージに立っている姿は見たくない。それで「キラキラドキドキ」といわれても説得力がない。だが、適度な緊張感が必要なのだ。一般論として、プレッシャーもゼロなのがいいわけではない、バランスが大事だといわれるが、今回のステージではそのバランスが壊れてしまっていた。
 リアルバンドもポピパ以外に2バンドもできた。声優がバンドを組んで、楽器を演奏して、カバー曲、そしてオリジナルの曲を十何曲も披露している。本来であれば、それだけで賞賛に値するパフォーマンスだが、演者自身にもそのような自覚が出てきているように、演奏は正直、もうできて当たり前なのだ。キツい話ではある。加えていえば、それほど音楽を聞きに来る客が優位とも思えないし、少しのミスなど全然ご愛嬌で片付けられてしまう。MCで愛美が自賛していた通り、確かにポピパは上手くなった。でもそれは、前日、前々日をやりきった他バンドも同じだ。それ以外のウリを見せられなければ、結果的に埋没していく。
 メンバーの口から語られたなかで通底していたのが、4thまでは大変だったが、今回のライブは楽しいというのが強調されていたことだ。この二度目の日本武道館という舞台は、ポピパにとってキャストへのご褒美だったのか? 極論すれば、この日のポピパのステージが3days武道館の最終日である意味があったのだろうか。ただ、最後にSILENT SIRENが登壇し、次のメットライフドームの告知さえすれば、どこでも同じじゃないのか。

 ステージ上の寸劇で、おたえが「Roseliaのライブにはどうやっても敵わない」と気落ちする、アニメ2期の流れを受けたような台詞があったが「私たちにしかできないライブがある!」と香澄が語るのならば、その私たちにしかできないライブで、どうやっても敵わないRoseliaのライブに負けないものを見せないといけないのではないか。1日目に登場したRoseliaの『Hitze』もLVで見たが、今回は、ポピパファンを自負する私でもRoseliaのほうに軍配を上げる。
 この7thライブが3days公演で、ポピパがその1日目、2日目とを見届けた上でトリを飾ったからか、DAY3は"ポピパらしさ"がキーワードとなっていた。率直にいってしまえば「ポピパらしさってなに?」という話だ。ポップで、かわいくて、フリをつけて、この5人特有の若干グダつく独特の空気感があって、楽しく、笑顔でいっぱいのライブだったらポピパらしいのか。では、アンコールでへご以外の4人全員が泣いてしまっていた一年半前の4th武道館での姿はポピパらしくなかったのか。
 "ポピパらしさ"というのは、それほど甘っちょろい言葉ではない筈だ。ポピパらしいステージを見せることを謳うのであれば、それで客を納得させなければならない。それには、常に前と同等かそれ以上のものを要求される。自分たちのポピパらしさで、それに応えていかなければならない。その覚悟が、ステージ上の彼女たちから見て取れただろうか。
 6thライブDAY2『Let's go Poppin'Party!』は現地参戦した。詳細は省くが、こちらも環境のいいなかでのライブとはいえなかった。ただ、悪条件下でも、ひどいライブだとは思わなかった。前年のリリース以来、披露されてこなかったクリスマスのうた、アプリでのポピパ2章の曲である二重の虹、6thライブの先行抽選申込券が封入されたガールズコード、さらに新アニメのOPテーマ・キズナミュージックという4曲もの新曲披露に加えて、既存曲もぽぴしゃ、ティアドロ、ときエク、タイムラ、スタビ、イエバンと盛り上がり必至の定番曲をこれでもかと詰めてきて、会場のボルテージは最初からクライマックスの熱いライブだった。アンコール後のMCで、新曲が多く、そのわりに準備期間が短くて、いままでで最も大変だったという苦労がこぼれていたが、その告白が意外に思えたほど、ステージ上の彼女たちは、苦しみながらも苦しみを見せずにパフォーマンスをしていた。苦しくたって、苦しみを表に出さず、最後は笑顔で帰ってもらうというのがポピパというのなら、6thの段階で、もうできていたことだ。
 厳しいいい方をしようというつもりはないのだが、今回は"ポピパらしさ"が、現状追認の言葉に聞こえてしまった。ポピパのオタクのなかには、これ以上大きくならなくていいよ。そんなことより、楽しそうな彼女たちの姿をもっと見たいと思っている人も多いだろう。だが現実、幕間のインタビュー映像のNext Stageでも、そして最後に発表されたサイサイとのメットライフドームでの対バンも、そうはなっていない。
 唯一、初期から活動してきたリアルバンドだけあって、昨今はコンテンツの広がりに驚くような声が、メンバーからもよく聞かれる。バンドリというコンテンツが、こんなに大きくなるなんてという感動だ。RoseliaやRAS、他の3バンド、アプリゲームが世に出て、リズムゲームアプリとしては、国内で3本の指に入るまでヒットし、大きく成長してきた。だが、コンテンツ全体として大きくなっていればそれで満足なのか。
 比べられないこともある。だが、数字が出る以上は比べられることもある。人気でもCDの売上でも最多動員記録でも、常にコンテンツ内の他バンドの後塵を拝し続けているなかで、Poppin'Partyというものを広げていく。今回のライブからは、その見通しが見えず、スローガン止まりになっていた。
 個人的に、キーボードの伊藤彩沙(あやさ)の最後のMCを評価しているのもその点だ。5人のなかで彼女だけが、メットライフドームという次のライブの舞台へ、LV参戦者を指さして来場を呼びかけた。いってみれば、ひとりだけ危機感を表してみせた。実際、これを書いている時点においても、メットライフドーム公演はチケットを売り切れていない。そんな条件で、どうして一致団結して来場を呼びかけるのではなくて「大きい会場で緊張していますが、楽しみです」なんて月並みなコメントになるのだろう。
 ステージ上で、最後は笑顔で帰ってもらうということを重視するMCも多く聞かれたが、そんなことは、極論すれば当たり前のことだ。ショービジネスの世界で客足が遠のく場合の典型は「ひどいショーでがっかりした」なんてことではないんじゃないか。「まあよかったけど、次はもういいや」。そうして、笑顔で楽しんでいた筈の客が、次の興行には来てくれなくなるというのが典型ではないだろうか。
 本人たちは、ポピパとしてのひとつの形を示せたと手応えをつかんでいたが、こちらからすれば迷走しているようにしか見えなかった。個人的に、ポピパのキャストたちがリアルライブをしていることは知っていたが、そこにハマるようになったのは、4th武道館公演のようすを収めた映像が、YouTubeの公式チャンネルに上がっているのを見てからだ。その4thが見たくて、CD派でもなかったのに、クリスマスのうたのBD付き限定盤を買った。今回の7thライブに、4th武道館の伝説の再来など求めていなかったが、それを超えるなにかをステージ上で見せてくれることを期待したし、最速先行も二次先行も落ちて、一般戦争でも負けた際には、チケットを取れなかったことを後悔する準備を始めたものだった。ところが、実際に見て最も大きく残ったものは、失望だった。
 ……問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。「やりきったかい?」と。

□Next Stage

 ここまで、マイナスなことをぐちぐちと書き連ねてきたが、自分とて一介のポピパオタクである。ポピパのことが嫌いになったわけではないし、まだまだ応援している。応援しているからこそ苦言を呈しているなどと、うっとうしいことを言うつもりもない。ただ、カネを払った客である以上、自分が満足できない、不満点のほうがずっと多く残るステージを見せられたら、自身の利益のために不満に思っているぞということを述べたほうがいい。そういう場合もあるだろうというだけだ。
 それに、これは特に客層が若めだといわれるバンドリのなかで、ポピパの人気が伸び悩んでいる原因のうちの一つでもあると思うのだが、ポピパは、できないところがかわいいという長所もある。
 仮に、これまで述べてきた不満点を片っ端から解決して、見事なパフォーマンスを見せてくれたとしても、きっとポピパのオタクは満足しないだろう。それは、もはやポピパではない。
 短所は長所でもあるという一般論にすぎないかもしれないが、なんだかんだ芸達者の多い声優界において、一向に並レベルにも達さないトークスキル、身体能力に優れた集団というわけでもなければ、アイドル顔負けの容姿の集団でもないし、売れっ子声優の集まりでもない。なんであれば、キャラたちと違って、高校時代は苦悩した経験のあるような子が多い。そんな彼女たちが、楽器を携え、マイクの前に立つと、途端に多くの人々を熱狂させる存在に変わる。だけど、話し始めるとポンコツ。
 ポピパのなかでも愛美やあやさ、へごがミルキィホームズ・フェザーズやアイマス等に出演しているように、ステージ上で歌って踊る企画はもはや飽和状態で、出てる声優も多いし、当然なかにはバラエティ的なスキルや要領のよさ、歌唱力、あるいは演技力、ステージング等の優れた能力を有する声優がいる。そんな業界で、声優自らがキャラと同じ楽器を演奏してライブするという、一種の隙間を狙ったバンドリであればこそ表出してくる、できなさ。そんなできないところが、差別化できるポイントでもある。できの悪い子ほどかわいいというやつだ。

 加えていえば、次の舞台、昨日からチケットが一般発売となったメットライフドーム公演『NO GIRL NO CRY』、ポピパ初の対バンライブ。
 おそらく、このステージはポピパが世に送り出されて以来、初めて観客席が埋まりきらなかったライブとなるだろう。対バン相手は、SILENT SIREN。ポピパ立ち上げ以来、パフォーマンスを参考にさせてもらってきたという、先輩ガールズバンドにして、一般音楽業界で10年弱を生き抜いてきたバンドでもある。ポピパがオープニングアクトにRoseliaとRASを迎えるのも初めてのことだし、そしてもちろん、初めてのドーム。さらには、このライブとアニサマを最後に、しばらくフルメンバーでのライブは行われないことまで本人たちが言及している。
 文句なしの、期するものに値する条件だらけの舞台である。気迫、プレッシャーにおいて、このドーム公演2daysは期待できる。加えて、曲数が絞られる上に対バンということもあって、定番曲中心の強いセットリストになることもほぼほぼ間違いないだろう。私はすでに両日のチケットを発券し終えた。
 二度の武道館を超えた先に、新たな、大きな試練に立ち向かうポピパの姿は、一見の価値がある筈だ。いまならまだチケットが取れる。ぜひ、彼女たちが見せるかもしれない、新たな勇姿を目撃しに、所沢の山奥、メットライフドームまで足を運んでほしい(ダイマ

 なお、『NO GIRL NO CRY』に関しては、このリンク先を参照されたい(ダイマ
https://bang-dream.com/popi_sp

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