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「ひなたアカデミー」とは結局なんだったのか

「いや歌詞を忍ばせる演出は結局なんやってん」と思わせたまま終了した「ひなたアカデミー」ですが、他の番組には無い独特な特徴があったなと思います。その特徴について思ったことを整理してみました。
いろんな方の番組への印象も聞いてみたいので、よろしければコメントまでお寄せくださるととても喜びます。

続編、あるといいなぁ。


番組内容

そもそも「ひなアカ」ってどういう番組だったかというと、公式サイトから概要をまんま引用すると以下のとおりです。

日向坂46の新冠番組!企業の社長から今をときめく話題の人まで、各界の「陽の当たる人」に日向坂メンバーが徹底取材… 普段とは違った一面も観られること間違いなし!?

https://www.tv-tokyo.co.jp/hinataacademy/

「メンバー」が「陽の当たる人」を「取材する」という番組ですね。概要には記載がありませんが、一人のメンバーが単独で「陽の当たる人」のもとへ出向く、という構成でした。「普段とは違った一面」はおそらく「陽の当たる人」にも日向坂メンバーにも掛かっているんだと思いますが、これこそがこの番組のミソかと思います。

求められる役割:ホスト

番組の基本構造はディレクターが作るとしても、形としてはメンバーが単独で「陽の当たる人」に話を聞きに行くことになっています。隣に進行のアナウンサーや芸人が立っていたりはしません。つまりメンバー自身がインタビュアーであり、ホスト的な役割が求められます。この点が、「日向坂のメンバーが出演する他のバラエティ番組」と「ひなたアカデミー」とで大きく異なる点ですね。「普段とは違った一面」がここにあります。他の番組では原則、メンバーはゲストあるいは主役でいられます。たまにホスト的な役割があったとしても芸人横(MC横)です。

このホスト力、しかも「初対面のよく知らない相手」に対するホスト力は、ラジオを単独でやったり、比較的身内な相手に対してホスト役をしたりするだけではなかなか身につかないと思われます。どちらも「自分が主役になってもOK」な状況だからです。これは肩書上はMCである「キョコロヒー」でも同じです。大きな流れは番組側(スタッフ側)が、時にはヒコロヒーさんが作り、おきょんさんは原則それに反応していく役割です。番組にゲストが来ても、ゲストごと番組側が用意した企画に巻き込んでしまうか、ゲストにプレゼンターという役割を与えて(肩書上の)MC陣はゲスト的な振る舞いができる構造にして、しっかり主役でいられるようになっています。なので「大キョコロヒー」の時のように、ゲストが本当にゲストの振る舞い(主役)をする場合、おきょんさんのいつもの良さがあんまり出なかったりします。

こんな感じで、ホスト役に求められる力と、ゲスト役に求められる力は全然違います。そして「ひなたアカデミー」では、普段ほとんど経験の無い「ホスト」の役割を任せてもらえているという点で、非常に貴重な番組だと思います。

「ホストである」とはどういうことか

「ゲストであること」じゃなくて「ホストであること」が求められるとして、それが番組にどう関わってくるのか?
それは、「番組の質がメンバーのホスト力にけっこう依存する」ということです。

ホストであるということは、作られた台本をベースにしつつも、流れを上手く作り、その場その場の状況に応じて台本以外の着目点も作り、適切なリアクションを取って分かりやすく情報を伝えたり、さらなる情報を引き出したりするような技術が必要になります。しかも相手の話にうまく反応するには、一定の人生経験や教養も必要です。つまり「激ムズ」です。芸人ですら誰でも出来るわけじゃない難しい技術です。

さらに「ひなアカ」は、広報担当がいて取材経験も豊富な企業だけでなく、取材に不慣れな企業や個人も対象にしています。いろんな「陽の当たる人」を知ることが出来るのでそこがいいところなのですが、しかしその分、「陽の当たる人」側にホスト的な動きやプレゼンテーション力を期待できない場合、メンバー側のホスト力がかなりのウェイトを占めるので、どうしても番組の質が不安定になるという側面は出てくるなぁと感じます。特に、ゲスト力で尖っているメンバーにはなおさら難しい仕事だなぁという印象を受けました。

とはいえ、そもそもこればっかりは普段鍛えてない力なので、むしろ上手くやれてるメンバーの方が凄い、ということなんだろうなぁと思います。

ホスト力を超越するには

では、普段ほとんど鍛える機会のないホスト力を超越して番組が面白くなるには何が必要そうかと考えると、少なくとも以下の3つのことはあり得るのかなと思います。

  1. 「陽の当たる人」にメンバーが心の底から興味を持って、最高のゲストになってしまう

  2. 「陽の当たる人」がよく喋ったりプレゼン力があるなどで自然にホスト的な役割を果たしてくれて、結果的にメンバーがゲスト的な振る舞いを多くすることができる

  3. 構造的にゲストでいられるよう、番組自体を最初からそう構成する

1 はKAWADAさんやまなふぃがその片鱗を見せていましたが、結局「夢中は何よりも勝る」というやつですね。興味を持たれれば「陽の当たる人」側もノッてくるので、結果的にいろんな話を引き出すことになるという感じです。2 はほっといてもよく喋る個人や、広報がしっかりとプレゼンの枠組みを用意していてその流れに乗ればほぼ間違いないようなケースが当てはまるかと思います。なんとなくですが、放送回を重ねるほどに 2 の構造が増えていったような気がしています。

3 は、たとえば進行の人を別途用意する、とかでしょうか。あくまでメンバーは普段慣れているゲスト的な振る舞いだけで成立するような方針です。まぁ、ホストの役割を下ろしちゃうのでそりゃそうっちゃそうです。

この 3 に関連する流れなのですが、実は以前、日向坂がホストの役割を果たす番組、「日向坂46です。ちょっといいですか?シーズン1」がひかりTVで配信されていました。

シーズン2は最近までやっていましたし、現在も Lemino で一部が見れるのでご存じの方も多いかもしれませんが、シーズン1はもう視聴する方法が存在しておらず、どんな内容か知らない方も多いかも知れません。その概要をサイトから引用したものが以下です。

Season1では、日向坂46が記者になり、囲み取材に挑戦!
メンバーから飛び出す忖度なしの質問が、取材対象者の意外な一面や、隠れた魅力、門外不出の秘蔵エピソードなどを引き出す!?“囲み取材スタイル”のトーク・バラエティ番組!!

https://www.hikaritv.net/hinachoi/

もうそのまんま、話引き出す系です。「ひなアカ」とは違い、いっぺんに複数人のメンバーが話を聞き出すスタイルではありましたが、取材対象が主役でメンバー側にホスト的な力が求められるのは同じだったと思います。一方シーズン2はというと、

2021年4月からスタートのSeason2では、それぞれのメンバーがハマっていることを発表!グループでも流行らせることを目的に熱いプレゼンを行います!

https://www.hikaritv.net/hinachoi/

となり、メンバーの誰かがプレゼンした内容に他のみんなでわちゃわちゃとチャレンジする、というメンバーが主役の構成に劇的な変化を遂げました。

で、このシーズン1からシーズン2への変遷ですが、突然発生したわけでなく、以下のとおり予兆というか前段がありました。

  • 2020年3月14日、シーズン1の第1回放送スタート

  • 2020年4月18日、第6回にて初回放送の未公開シーンスペシャルが放送され、しばらくおやすみ

  • 2020年6月27日、お休みが明けて第7回の放送で EXIT がゲストに。ここから、話を聞くフェーズはあるも、ゲストが主導してメンバー自身にも何かにチャレンジさせる、企画的な流れが加わる

  • 2020年11月7日の第26回から3週連続のバーベキュー企画や、2020年11月28日 第29回のフィットネス企画など、かなり体験に寄った内容も出始める

  • 2021年4月10日、ラスト2回の総集編的な内容をもって、約1年でシーズン1終了

  • 2021年4月19日からシーズン2開始

こんな感じで、シーズン2自体は1年後からですが、番組のテコ入れ的な動きは放送開始からすぐにあり、メンバーにゲスト的な動きをさせる要素が増えました。この動きの早さからみるに、メンバーにホストの役割だけを与えるよりもゲストの役割を与えるほうが面白くなりそう、という評価もあったんじゃないかと思います。個人的にも当時見た EXIT の回はめちゃくちゃ面白くて、「あ、全然変わった。こっちのほうがいいな」と強く思った印象があります。
一方、「時期的にコロナが蔓延して囲み取材の形が取れなくなっただけじゃね?」という指摘もありえますが、物理的な距離と話を引き出す構造は分けて考えることは可能で、近くなければ話を引き出せないってことはないですし、コロナだけが理由ではないんじゃないかと個人的には推測しています。

こんな感じで、過去の事例からも、メンバーを完全にホストにするのではなく、できるだけゲストになれる構成にしたほうが番組としては計算しやすいという面は幾ばくかあるんだと思います。普段ホストをやってないのでそりゃそうではあります。

しかしこの「ホストを任せてもらえている」というのが「ひなたアカデミー」の特徴でもあり貴重さでもあったので、番組の質の安定とのトレードオフはありますが、仮に続編があるのなら維持してほしいところだよなぁとは思います。

「ひなたグルメ」の意図

「陽の当たる人には、必ず自分を上げるステキなグルメがある。そんなパワーフードを紹介」と銘打ったこのコーナー。最初はここの意図がよく分からず、類似番組である「カバン持ちさせてください!」にもある同じようなコーナーをただパクっただけなのかなと思っていたのですが、何回か放送を見て一つ仮説を持ちました。それは、「メンバーがゲストになる時間を作る」です。
すべての回ではないですが、このコーナーだけやけにメンバー自身のことを喋る機会が多かったと思います。番組内容的には「陽の当たる人」が主体なので、メンバーの話はむしろノイズなんじゃないかと感じていましたし、ホストにまだ慣れていないので、「陽の当たる人」に回してもらってる(回されてしまってる)状態になっちゃってるのかなとも感じていました。しかし回を重ねるに連れて、あまりにメンバー自身のことを話す頻度が多いので、「これは回してもらってるというよりは、そうなるように設計してるっぽいな?」と感じるようになり、となると「ホスト役に徹するとメンバー自身のことはなかなか出てこないので、ここでゲスト役になることでメンバー自身のことや魅力も知ってもらえる機会を作ってるのでは?」と思うようになりました。

もちろん、「陽の当たる人」の話が主のまま終わる回もあるので、必ずメンバーのことが出るようにしてるわけじゃなく、「出してもいい」という塩梅のスタンスなのかもしれません。

こういう意図が本当にあったのかは分かりませんが、個人的にはこう解釈しました。

続編はどうなるのだろうか

予定通りの9回で終了した「ひなアカ」。続編があるとしても、ホストの役割は引き続き与えてもらえるのか、あるいはひなちょいのように名実ともにゲストに回る構成になってしまうのかは分かりません。個人的にはできればホストのやりどころを残した状態で続編があると嬉しいなと思っています。

非難の声もあったけど

個人的に感じた「ひなアカ」のもう一つの特徴として、「日向坂が出てる番組にしては、なんか非難の声が(多数派じゃないかもしれないけど)目立つ気がするなぁ」というものがありました。
個人的にはこれまで述べたように、日向坂に任せるという気概と、番組の質の安定とでバランスさせる葛藤を感じながら、「とはいえ内容は結構メンバー依存で、なかなかどうしようもない部分もあるよなぁ」というのも感じてはいたので、それほど悪い印象は無かったです。なので、「日向坂への愛がない」とか「数字を取るために日向坂を出しとけばいいと思っている」みたいな印象は番組には感じませんでした。特に回を重ねるごとに、演出の方の調整もあったでしょうし、メンバーの頑張りもあって、番組自体も見やすくなっていたような印象です。

なんなら、めちゃくちゃ正直に言うと、「扱いが悪いわけじゃないんだけど、別に日向坂じゃなくても乃木でも櫻でも別のアイドルでもなんでもよくて、華としてとか、人気でファンを連れてくるから使ってる」だけに感じる番組とか、「あんま番組内容と関係ないけど、アイドルなんだしぶりっ子みたいな事させとけばファンが喜んで見てくれるだろ」みたいな姿勢を感じる番組なんて、過去にも現在にも他にあるなぁと思っています。性格悪いマンとしては、「ゴールデンのゲストだろうがレギュラーだろうがそんな番組に出して時間浪費するくらいならYouTube撮れよ」と過激なことを思ったりもしなくはないですが、そんな中で「ひなアカ」はむしろ「日向坂をホスト役に据えて、他にはない番組の特徴を持たせてしっかりチャレンジしてくれてるなぁ」という印象でいます。

先にも言いましたが、この番組には隣に進行のアナウンサーや芸人が立っていたりはしません。もし制作側がメンバーをハナから信用せず、客寄せパンダとして扱うのであれば、社員である局アナの方などを隣において進行させ、日向坂はゲストとして振る舞わせて適度に話を振るだけのほうが確実に計算できたと思います。でもそうはしなかったところに「その辺にある番組にはしない」という気持ちがあったんじゃないかと思いたいので、やっぱり個人的にはそんなに悪くは捉えることができません。

もちろん、制作側の本心として「いや、ただの客寄せパンダ想定でした」だったとしても、番組が持つ特徴的に日向坂のメンバーにとって経験値の多様さが増える、やる意味が大いにあるものだったと思うので、それだけでも十分価値がある番組だったんじゃないかと個人的には思っています。

ほかに、SNSの運用などで非難もあるかもしれませんが、基本的には積極的に放送までのカウントダウン動画などで盛り上げて多くの人に見てもらうために動いていると感じています。拙い部分もあるかもしれませんが、ハンロンの剃刀のように「無能で十分説明できることに悪意を見出すな」というか、頑張ってるけど単に不慣れで愚かになっちゃったり完璧には出来ないことなんていくらでもあると思うんで、そこに悪意までを見出す必要はないんじゃない?と個人的には思います。単に「下手やな」でいいというか。

あと、以前「このラジ」で話題に出た「直前まで具体的なことが決まってなかった」という話についても、テレ東出身の佐久間宣行さんのラジオを聴いてるとそういう事は番組制作において茶飯事のようなので、「ひなアカ」だけに特別に起こっているものではなく、特に深い意味はないと思っています。映像制作をはじめクリエイティブ職なら仕事が線形に進まないことのほうが多いというか、線形に進めないほうがいいケースも多いとすら言えるかもしれないので、その事だけをもって何かを語り非難する必要は無い気がしています。

まとめ

「ひなたアカデミー」は、メンバーが基本的にホストでありつつ、コーナーではゲストの側面も出せるような、バランスを意識した番組作りがされていたのかなと思います。いろいろ非難の声もあるかもしれませんが、個人的にはホストになれる貴重な番組だったと思っているので、その構造は維持したままいい感じに続編が決まるといいなぁというお気持ちです。

他にも個人的には、なのちゃんが結構うまくやれるんだなぁという発見や、予想通りなっちょは上手すぎていなくなっちゃうのがホントに惜しいなぁとか、みくにん絶対伸びしろあるよなぁとか、くみてんはくみてんやなぁとか、いろいろ注目ポイントもあって楽しく見れました。

見る人によっていろんな考え方で「自分はこう思った、こう感じた」という視点が出てきそうな番組ではあるので、あなたが実際番組についてどう思ってたのかは気になります。よければコメントなどでお寄せ頂けると嬉しいです!

ということで全9回、お疲れ様でした。

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