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日向坂46 10thシングル「Am I ready?」にみるプロモーション施策の変化

本日、2023年7月26日に10thシングル「Am I ready?」が発売となりました。今回はそのプロモーションにおいて、これまでと細かい違いが主にウェブにおいてあったなぁと思ったので、その点をまとめたのがこの記事です。


ストリーミング事前登録キャンペーン

初めての施策1つ目です。「7月19日(水)~『Am I ready? (Special Edition)』先行配信決定、配信事前登録スタート!」と題して、Apple Musicの Pre-add か Spotifyの Pre-save をすると全員に「上村ひなの手書きメッセージ画像」をプレゼント、という内容でした。以前の記事で、ストリーミング指標等の下落傾向を述べましたが、その現状に対する施策かと思います。もちろん、事前登録は楽曲の再生を保証はしませんが、とにかくリーチを増やそうという算段かと思います。事前登録さえさせてしまえば確実に配信されますし、配信されれば一定の流入(再生)は確保できるはずなので、理にかなっていると思います。

配信キャンペーンの開始タイミング変更

6thから恒例になっている配信キャンペーンですが、今回は配信開始日の翌日からとなりました。通常、配信開始初日が最も再生回数が伸びやすいと思われるので、なぜ1日遅らせたのかよく分かっていませんが、もしかすると Apple Music や Spotify など他のストリーミングサービスでの再生回数を伸ばしたい意図があるのかなと推測してます。ファンのうち、もともと Apple Music や Spotify 等のユーザで、かつキャンペーンに参加する人であれば、1日程度であれば LINE MUSIC での再生回数に影響は無く、1日目の他のストリーミングサービスでの再生回数をそのまま上乗せできる、という目論見でしょうか。

あんまりしっくり来る推測ではないので、ぜんぜん違う狙いがあるかもしれません。

ショートMVの投稿

初の施策2つ目です。MVのショートバージョンが YouTube Shorts および TikTok に投稿されました。

@hinatazakanews

日向坂46 10th Single「Am I ready?」Music Video Short ver. #AmIready #日向坂46

♬ Am I ready? - Hinatazaka46

昨今は楽曲の流通にあたり、如何に楽曲がユーザのコミュニケーションのきっかけになれるか(コンテンツを作る動機を作れるか)がカギになっていると思うので、ショート動画を活用していくのは大事なことかなと思います。

現状はまだMVの切り抜きにとどまり、ショート動画専用のコンテンツではありませんが、コミュニケーション作りがしっかり設計されたような動きが今後さらに出てくると嬉しいですね。どうしても既存のコンテンツの流用に留まるならば、ひなリハはダンスの様子がよく分かるので、特徴的な部分を切り抜きしてショート動画としてアップするのはよさそうな気もします。ただ、縦なんだよなぁ。ひなリハはもちろん横長なので、そこをどうするかっていう問題はありそうです。

Spotify Canvas 映像の利用

初の施策3つ目です。Spotify での楽曲再生画面で流れる「Canvas(キャンバス)」と呼ばれるショート動画を日替わりで公開する、という内容でした。こちらも、ストリーミング指標改善のため、Spotify での再生回数を伸ばす目的かと思います。

Canvas と同じ内容を後からYouTube Shorts と TikTok でも公開しているので、ここでもショート動画への意識を感じます。

ストリーミング&ダウンロードのリンクを設置

初の施策4つ目です。各種プラットフォームでストリーミングやダウンロードのリンクをまとめた配信URLを併記するようになりました。「Linkfire」というサービスを利用していて、「hinatazaka46.lnk.to」というドメインになっているURLがそれです。

リンク先は Special Edition なので、これにより何らかのきっかけで興味を持った新規の方が、リンクをたどってカップリング曲も含めてリーチする可能性が増えるかと思います。

Twitter だけでなく、以下の画像のように 10th のMV 全てにおいて YouTube の概要欄にもリンクが張られています。左が Am I ready?、右が One choice です。見ての通り対象は 10th のみで、9th 以下はリンクが無いままです。

10th から YouTube 概要欄に配信URLが併記されるようになった

これから 10th のプロモーション期間本番ですが、何らかの露出で Am I ready? のMV再生回数が増えると、他の MV の再生回数も増える傾向にあるので、9th 以下にもちゃんとそれぞれの導線を張って取りこぼしの無いようにした方がよさそうとは思います。

くわえて、以下のようにリリース当日の発売報告ツイートには配信URLが無かったりと、まだ不慣れというか詰めきれておらず、シンプルにもったいないなと感じました。この辺はどんどん改善していってほしいと思います。せっかく Twitter にお金払って編集可能にしているので、あとからしれっとリンク追加なども簡単にできる状態を活かしてほしいなと思います。

「特設サイトを見せたいんじゃないの?」という声もあるかもですが、楽曲にリーチさせるにあたって特設サイトはステップが多く、離脱が増えそうです。既存ファンはすでに見てるし、新規ファンには余計なステップがかかるので、どちらにとっても中途半端な気がします。
もし、特設サイトをスクロールして出てくるMVを見せたいのであれば、ツイートに直接 YouTube の URL を書いた方が効率的かと思われます。

実際にやってみると分かりやすいですが、特設サイト内で MV を再生した場合、サイト内の埋め込みプレイヤーによって再生されます。こうなると、「保存」も「チャンネル登録」も「グッドボタンを押す」ことも出来ません。大事な旨味がかなり減ります。しかも、Twitter は外部 URL をアプリ内ブラウザで開くのですが、そのアプリ内ブラウザを閉じてしまうと当然再生も止まるので、回遊もしづらくなります。

対して、ツイートに YouTube のリンクを直接張れば、PCの場合はツイート詳細から Twitter 上ですぐ再生できてステップが少ないですし、スマホの場合でもアプリ内ブラウザで YouTube サイト自体を開くため、「アプリで開く」ボタンが表示され、YouTubeアプリに簡単に遷移できる導線が確保されます。Twitter のアプリ内ブラウザで YouTube にログインした状態である人はかなり少ないと思いますが、アプリにさえ遷移させればユーザにとってはいつもと同じ使い勝手になるはずなので、圧倒的に体験が良いと思います。

左:PCブラウザにて、ツイート詳細画面で YouTube 動画を再生している様子
右:Twitter スマホアプリから YouTube URL を開いた様子。右上に「アプリを開く」導線あり。

「特設サイトはMVを並べて表示しているので、その方がいろんなMVを見てもらえるのでは?」という声もあるかもしれませんが、まず「Am I ready?」のMVをしっかり見てもらえれば、関連動画でその他 10th の動画にはちゃんとリーチ機会が生まれるのでアルゴリズムを信用すればいい気がします。特に新規の人は、表題が気に入らなければカップリングまでわざわざ再生する動機が薄いように思うので、特設サイトにMVを横並びさせたところで、表題が刺さらなければあんまり意味を成さないように思います。なので、まずはとにかく「Am I ready?」を見てもらえるよう全振りしたほうがよさそうに感じました。

ウェブ周りは本当にこういう細かいことの積み重ねだと思うので、地道にやっていってほしいなと思います。

まとめ

10th では初の施策が多く見られ、ウェブにおける新規顧客の獲得に本腰を入れ始めたような感じがします。もちろん、まだ出来ることは多いでしょうし、初施策といっても他のアーティストでは一般的に実施されている施策が多いかもしれませんが、それでもコツコツと動きを重ねているのは事実なので、いい傾向かなと思います。今後にも期待ですね。

余談:ディレクター体制の変更

10th のスタッフクレジットで目についたのですが、ずっと続いていたディレクター2人体制が変わり、1人体制になりました。以下が日向坂におけるディレクターの変遷です。

日向坂46 CDブックレットのスタッフクレジットからデータ引用し筆者作成

10th からは、1st からずっと担当している堀内さん一人となりました。これまでの2人体制では、堀内さんより先に灰野さん・伊藤さんがクレジットされていたので、そういった意味でも堀内さんの裁量が大きくなってそうだなという予感はします。ディレクターの役割については「第1回〜音楽制作の仕事って何?」や「小室哲哉の何がすごかったのか? 音楽プロデューサー、ディレクター、A&Rってそれぞれ何する人なの?」が詳しいですが、要は音源制作を現場で進める人かと思います。となると、歌入れ(ミックス等もかな?)について、曲を聴いて 9th までとは違う何らかの変化を感じている人もいるのかもしれません。

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