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罠はエサをやった後に訪れる 全健会体験2

こんにちは、なめこです。
この記事は、前回の記事の続きです。

さて、カイロから帰ってきたその夜。
身体も軽くてうきうきです。やっぱり整体っていいなー!
年末からの体のだるさ重さが嘘のようです。

お風呂から上がって髪をふいていると、ふと「うわっ」と気持ち悪いものを見てしまいました。

お名刺です。
そう、あの中二病チックな自画像と目が合ってしまいました。

なんでこんな絵柄にしたんだろう……でも、そういうのって個人的な趣味も大きいし、私が嫌いでも他のお客様は先生のこういう名刺が好きな人もいるのかもしれないし、うん、人それぞれだもんね。

無理やり納得しようとしても、どうにも気持ち悪い。
生理的に気持ち悪い。
見たくない。

人目につくところに置いておいたのが悪いのだと名刺整理ファイルに収めようと思うけれども、どうにもこうにも気持ちが追いつかない。


この名刺
名刺ファイルに入れるの嫌だ

意味不明なこんな感覚がわき上がってきて、戸惑いました。

ただの名刺ですよ?ビジネス用の名刺。
お名刺が大切なものであることは通常業務の中で良く知っております。だからこそ個人的にはちょっとと思う方でも大切にお名刺だけは保存しておくものです。案外あとから役に立つこともあります。

だから、機械的に名刺ファイルの中に整理して入れてしまえばよいのです。でも、いやだ。

戸惑いました。
だって、今日の施術は大変良かったんですよ。
実際に、今の体だって軽くていい感じですよ。なのに、名刺がどうしてもキモイ。

うーん、困った。
とりあえず私はファイルとファイルの間に名刺をつっこんで、お茶を濁すことにしました。

後から思うと、自分の感覚って何て正確なんだろうって驚きます。
第六感ってやつなんでしょうかね。

与えて与えて与え尽くしてくれる人って、怖くない?

さて、2回目の施術です。
2回目からは1回目とは違って、施術時間が短くなります。最初の問診などが無くて身体の状態のチェックもないからです。

だから私は「時短ですね!」といいました。効率よくやるべきことはやるという意味で。
そうすると先生は「そうではありません。手抜きすることはないですよ!」とにっこり笑顔で返しました。

なんか、喉に小骨が刺さったような違和感がありました。
やっぱりこの人笑顔を作っても目が笑ってない。そして、言葉をネガティブな方にとらえて自己防衛しようとする感じがする……。

「骨盤をなおすとすごく体調が整うんですね」
「そうですよ!カイロをやるとまず悪くなるってことはありませんから!」

えっ
えっ
ちょっと、そんなこと言っちゃっていいの?

どんな治療、例えばスタンダードな医療の手術だって「まず悪くなりません!」とは言わないでしょう。だって、人相手のことなんだもの。99人は良くなっても1人は悪くなることはある。

なんか、この人、自分に自信のない人なのかな?

私は違和感に理由が欲しくて色々と考えました。
普段から様々な経営者を見ていますが、やはり上手くいっている人というのは余裕があるんですよね。全てにおいて。ちょっとミスを指摘されたとしても「あーすまんすまん、俺もぼけてきたなーワッハッハ」と笑うくらいの鷹揚さがあります。ミスをする自分を突きつけられても、それで傷ついてしまうような弱さはありません。余裕があるんです。素敵です。

逆に、事業が上手くいっていない人はぎすぎすしていて負のオーラが出ています。端的に余裕がありません。こちらが書類の記入に関するちょっとしたミスを指摘しただけでも「そちらの説明が悪いからこうなったんでしょう!あんたらのほうで直してもらおう!!」なんて怒鳴ったりします。余裕ないんです。見ててつらいです……。

カイロの先生には、この後者のタイプと似た感じがしました。

でも、この人とても努力されて頑張ってる人なんだろうなっていうのも伝わってきたんですよ。ベースとしてはこの人相当コミュニケーション能力が低くて中学や高校のクラスで隅っこで存在してるかしてないかわからないようなタイプだったと思うんです。いわゆる陰キャ。

だけど整体の先生になって施術をされる今は、患者さんから生活状態や精神状態を含めた心身状態を聞きだすためにカウンセリングのテクニックを身につけておられる。だから、こちらも話がしやすいんです。

しかしあくまでもテクニックを身につけただけであって、ベースのコミュニケーション能力に優れているわけではないです。なぜなら、業務分野以外の雑談力が低いから。美容師さんレベルの高いトーク力はない。(そしてそれは業務的にそこまで無くてもいいと思います!)

上から目線で人のコミュニケーション能力についてジャッジして申し訳ございません。しかし、私もそうだからこそ、「この人は努力してコミュニケーション能力を身につけたのだな」と思ったんですね。

私はバンギャルです。ヴィジュアル系バンドのことが好きな女子のことをバンギャルといいます。私の場合はもう”ギャル”とは言えず”オバンギャ”といったほうがよいかもしれません。

私世代でヴィジュアル系バンドが好きな人は希少なうえ、いたとしても人見知りをされる方が非常に多いです。一緒のバンドが好きな子と出あえるなんて、それってマジ運命だよね!みたいな感じなんですね。感動の一瞬。だからそんな子を目撃したら絶対仲良くなりたいんです!!!

でも、相手は内向的だから「仲良くしよう!友達になって!!」なんてストレートに言うと恐れられて逃げられちゃいます。こっちが必死になればなるほど「なんで私なんかにそんなにかまうの」と疑いの目を向けられてしまいます。

そこをナチュラルにスムーズに距離をつめて仲良くなっていくには、コミュニケーションのテクニックが必要です。だから、カウンセラーの技術とか本も読みあさりました。おかげさまで、かわいいバンギャルちゃんたちと友達になれるようになりました。推しの話が通じる友のいる生活は幸せです!

だから私はカウンセリングでどんなテクニックを使うのかということを知ってるんです。先生はそれを使ってるなっていうのが見てて分ったんですね。だから、努力しておられるのだな~って思ったんです。

「ここの治療院ってすごいですよね」
「そうですか?」
「ええ、すごいですよ。だって、集客とリピートにすごく力を入れてらっしゃるでしょう。はじめの施術から回数券を提示する流れ、鮮やかでしたよ」
「皆さんによくなってもらいたいですからね。やはり通っていただかないと良くはなりませんから。時間をかけないと」
「1回来たお客様って、そのままだとなかなかリピートしないでしょう?」
「そうなんですよ。大体来なくなっちゃう」
「なるほどね~」

このとき、私は深く考えずにいました。
本当にいい整体だったら、良い施術をしてくれるなら、回数券なんて買わなくてもお客さんはリピートすることを。

私自身、7年間通ったおじいちゃんの治療院では一度も回数券を売られたことが無かったです。多分おじいちゃんの治療院に回数券はなかった。でもリピートした。それはおじいちゃんの施術に信頼感があったからです。

乳を触られ「こんな乳の状態では良い乳が出ないぞ」と説教されても(つか授乳してないし産んでもないんですが…)通ったわけです。なぜなら、そうやって乳をさわって良い母乳が出ない状態だったとしても「こうやったらよくなる」という方法を教えてくれたし、実際にそうすると生理前の胸の張りなどは楽になりましたから。

「先生、本当に経営に関して研究されていますよね。本などを読まれて勉強されているのですか?」
「いや、全然してないですよ」
「えっ!?それなのに口コミ1000円バックとかホットペッパー通さずLINEで予約とか回数券の提案とかしてるんですか!?」
「そういうことは同業者の研修会で勉強したりしますからね」
「へえー」

そう、先生は独学で勉強していたわけではなかった。
多分このカウンセリング技術も含めて、胴元である全健会から教えられたことだったのでしょう。すごい、全健会。

さて、施術が終わって体も軽くて上機嫌。
そんな私に先生は白湯を提供してくれ、今回の施術で変わったところなどを写真を見ながらていねいに解説してくれました。

そして、帰りぎわに「これもあげます」と小さな箱をとりだしました。

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施術してくれた上に、ビタミンサプリまでくれる。
私はちょっと恐縮しました。「えっ、いいんですか?」と。

先生は「どうぞどうぞ。良くなってほしいですからね。毎日の栄養に気をつけることも大切です」といって私の手に置きました。

ありがたい。
こんなによくしてもらってうれしい。
けど……何なんだろう、この違和感は。

家に帰って箱を見ると、黒のマジックボールペンで手書きで「1000円」と書かれていました。

「いや、1000円って。ちょっと無理でしょそれ……」

会計事務所脳な私は、いろんなビジネスを見た時に「ここではこれくらいの経費が掛かってここでこれくらいの損失が出る、一番純利益が得られるのはここで、それで埋め合わせると最後はプラス」みたいな、一人頭の中で勝手に貸借対照表を作り上げるのが職業病というか趣味になっています。

あの立地で家賃は安くてこれくらいで、人件費は今は院長一人、客単価は一人頭平均で4500円くらい、ホットペッパーに1日6人限定って書かれてたからMAX6人ならば平均4人で稼働を週5日と仮定すると――

頭の中でカシャカシャカシャカシャ計算すると
どうしても赤字なんです。

なんか、この人、自分に自信のない人なのかな?

施術中にふっと感じた違和感。それが今になってよみがえってきました。
事業がうまくいっていない経営者と同じ硬い雰囲気。
普通に回したのでは赤字になるばかりのビジネスモデル。

パズルのピースが、ぱつん、ぱつん、ぱつんとはまっていきます。

しかし、わからないのです。
あんなに素晴らしい集客モデルや広告の使い方をしていた事業者が、なぜこんな利益の出ない無理のあるビジネスモデルを採用するのだろうかと。

私は考えましたが、答えは見えませんでした。
でも、次の施術でその答えは残酷にも提示されます。
「次のカモはお前だ」地獄の窯が、開いたのです――



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