仙侠BL概説

仙侠というのは中国語圏のネット小説の1ジャンルであり、中華風ファンタジーをイメージしていただければわかりやすいかと思います。中華版ハリー・ポッターという例えを見かけたことがありますけど、だいたいそんな感じです。

BLに限らず、男性向け女性向け一般向けなど様々な作品が作られておりますが、BL以外はだいたい超がつく長編(数千万字のものもざらにある)になることが多いので、俺ツエー系のようにたまに読みたくなりますけど、なかなか最後まで読めません。対してBL作品はだいたい50万字以下の物が多く、大変手頃です。

だからというわけではないですけど、去年の半ば頃にずっと気になってたみんな(?)ご存知の『魔道祖師』を読んでから片っ端から仙侠BL(時々武侠や歴史系)を読みまくって、(ほぼ)一人で萌え悶えてきました。

作品を勧めあったりするネッ友もいますけど、好みが微妙に違うので頑張って布教することにしました。布教させてください。

さて、ひとくちに仙侠と言っても様々なタイプがあります。細かいのはめんどくさいので、一番まとまりやすい修真系から説明しましょう。他は細かいのでそのうち作品単位で布教します。

修真作品は乱暴にまとめると修真者の話を書いた作品です。修真者というのは特殊な方法に従って体内のエネルギーを強め、常人離れした力を身に付け、最終的に飛昇するために修練を積む者たちのことです。飛昇とはその世界の軛から自由になり、別のより高次と思われる世界に入る=仙人になることです。飛昇まで行かない作品も多く、また主人公たちが飛昇できても飛昇自体がゴールだから、それ以降について触れる作品はあまり多くありません。

修真者の呼称は作品によって違いますし、修行段階(ランクのようなもの、だいたい境界と言います)の分け方も様々ですが、特徴はだいたい同じです。

修真者になるためにはだいたい、5、6歳から10代前半くらいまでの若さで修真門派(魔法学校のようなもの)の選抜試験をクリアして、そこに弟子入りする必要があります。ショタコンにはたまらない設定です。

門派に入ると、そこで修行方法を教えてもらい、自然エネルギーである霊気を感じることができれば、練気期という境界に入ります。練気期の修真者は体力増強程度の恩恵しか得られませんが、霊気を体内に取り込み、貯め込むことで、次の段階である築基期に入れば、そこでようやく正式に修真者と呼べるようになります。

築基期に入ると、食事を食べる必要がなくなったり、寿命が伸びたり、術が使えたり、作品によっては剣を操って空を飛んだりできるようになります。ここまでくるとすでに結構常人離れしてきましたけど、主人公は大体天才か、天才並みの成長を求められるので、更に強くなるために、体内に溜め込んだ霊気を圧縮して、霊気の核である金丹が出来ると、金丹期に入ります。

そこで寿命が更に伸びます。というかランクアップのたびに寿命が伸びます。そして大体の作品では、築基期か金丹期に入ると、容貌が固定されたりします。作品によっては、ある程度歳をとっていた場合、最盛期まで若返ったりします。

寿命の伸び幅は作品によって違ったりしますが、金丹までくれば200歳は軽く生きられます。それ以上も作品によってはかなり続きますが、寿命の伸び方も桁違いです。若作り爺好きにはたまらない設定です。

もうお気付きかもしれませんが、修真者になると寿命が伸びたり若返ったりできますが、その最終目標である仙人になると大体不老不死になります。なので皆死なないために、必死に寿命が尽きるまでにランクアップして、それを更に伸ばそうとするものです。まあ主人公は大体天才か、天才並みの成長を求められるのでそういうのとは無縁ですけど。

金丹期の次は元嬰期ですけど、元嬰期に入ると金丹がその修真者とそっくりな子供のような姿に変わります。それが元嬰です。元嬰ができると、本体が殺されても、元嬰さえ無事に逃れることができれば、新しい体を乗っ取り、生きながらえられるようになるので、結構やんちゃできるようになります。

修真者大体こんな感じで、次々とランクアップして強くなっていきます。資質次第でできない人のほうが断然多いですけど、主人公は天s(ry

余談ですが、このように主人公が順序立てて強くなっていくタイプの作品は、昇級流と呼ばれています。BLにもこのタイプの作品はありますが、どちらかと言うと男性向けや女性向けに多いイメージです。

体感だと、BLに一番多いのは復讐系の作品です。ここでいう復讐はだいたい自分のための復讐です。主人公(殆どの場合、受け)が攻めか、当て馬用の前世の恋人か、または何らかの理由で誰かに殺され、ご都合主義的に過去に戻ったり、死んだばかりの別の人の体の中で蘇ったりする話です。

また、日本のBL小説にも多く見られる転生系も結構多いです。現代人の主人公が事故で死んで、読んだことのある作品の世界に転生したり、全く知らない世界に転生したりする作品です。作者が自分が書いた作品の世界に転生しちゃう場合もあります。創作活動は慎重に行いましょう。先の復讐系のように、同じ世界で転生する場合もあります。というか普通同じ世界に転生するもんですよね。この場合、転生したあとに自分が生きた世界が物語の世界だったと知るケースも多いです。

上の二種類はだいたい主人公が何らかの悲劇的な結末を変えるために悪戦苦闘したりして、もとの話とは全く違う展開になったりします。もとの話もあって、二度美味しいです。まあ転生系はだいたいそんなもんですけど。

他には最初から強い主人公が何らかの壁にぶつかり、宿敵や赤の他人と協力して、何らかのゴールを目指し、その過程で仲良くなっていく(意味深)タイプもあります。

さて、ここまで読むと仙侠BLについて、ある程度お分かりいただけたかと思います。こんな文字を並べただけの記事を、ここまで読んでくださり、ありがとうございます。ここからが本番で、仙侠BLの魅力について説明いたしましょう。

と言ってもBLの好みは人それぞれですから、他の人から見ると、私が触れていない魅力もいっぱいあるかと思います。そこは各自上に書いたような設定を元に、想像の翼を羽ばたかせてみてください。あなたの読みたいものは(多分)きっと見つかります。

まあ基本最近流行りの(?)中世風ファンタジーの中華版と考えていただければわかりやすいですが、テンプレとかが結構違うので、新鮮な気持ちで読めます。
また最近(?)の中華ネット小説の主流は、ちょい悪ダークヒーローなので、天然無自覚自称平凡受け主人公ばかり読んでいて、口直しが欲しいときなどに読むと、いい気分転換になります。(なりました)

主人公たちが飛昇できそうなほどまでに強くなる作品はだいたい、世界の仕組みについて触れることになりますが、この手の話は私の大好物です。この場合、だいたい主人公たちの代まで何千年も飛昇者が出ておらず、何らかの不具合が推測されるが、他の人には手の出しようがないので、主人公たちが強くなって謎を解明したり、なにかぶっ飛んだ方法で世界の軛を壊してハッピーエンドという流れになります。大好物です。その過程で受けがその世界の神(天道)になったりしてめっちゃアツいです。攻めは何をしてるかというと死んでるか、協力してるか、場合によっては受けに監禁されてたりします。(容神マジ神です。詳しくは「第一仙师 妖月空」で検索してください)

そうです、受けが強いのです。強さによって寿命に違いが出てきてしまいますから、受けと攻めは最終的に同じくらいの強さになることが多いです。受けと攻めはどうやって同じ強さになるかというと、普通に一緒に修行して一緒に強くなる場合もありますけど、師弟ものなどでは弟子がめっちゃ強い師尊(だいたい師匠と同じです)をあとから追いかけなくちゃいけないわけですが、普通に修行を積む以外にもとても素敵な方法があります。

※ここ大事です。

その方法とは、双修(せくろす)です。

そうです、修真者は双修(せくろす)して強くなれるのです。やばいですね、修行して淡白な性格になるのに双修で強くなれるなんて、なんて破廉恥な。(ゴホンッ)

ちなみに普通の修行は自分で霊気を取り込んで、体内で循環させながら圧縮したり精製したあとに溜め込んで、さらに圧縮していく、というようなプロセスであることが多いですが、双修の場合は二人が体を繋げることで霊気を二人の体で循環させることができ、その際、強い方の修真者がもつ、純度が高くて強い霊力が弱い方の体の中に入り、経脈(霊気の通路)を広げたり、相手の霊力の精製を助けたりできるので、双修はどちらにもメリットがありますが、弱い方の伸び幅のが大きいです。

双修を行うには特殊な方法に則って霊力を循環させる必要がありますので、せくろす=双修というわけでもありません。

また双修だけでランクアップしても、強さが伴わない(同ランクに比べて経験などで劣ります)ので、やりすぎは厳禁です。とはいえ、双修専門の門派もありますから、一概には言えません。もっとも、そういう場合でも邪道であることが多いですが。

なんか一番大事な双修について書いたらあとは何をアピールすればいいかわからなくなりました。いくつかの細かいポイントがありますので、おまけに書いておきます。



おまけ

おまけとして、仙侠ものによくある小ネタをいくつか書いておきます。二次創作などのネタになれば幸いです。

築基すれば食事を摂る必要がなくなる場合が多いと書きましたが、食事を摂る必要がなくなるとどうなるかというと、アレな準備が簡単になります。(察してください)

修真者は修行で強くなる過程で体が作り変わったりしますので、みんな結構整った顔になります。また正道修真者は黒髪のロングストレートがデフォなので、髪フェチには非常に魅力的な世界です。魔修とかの場合は髪や目の色が変わったりしますが、妖艶な美貌を持ってたりします。

仙侠ものの中には、怪しい薬や果実などといったご都合主義アイテムで、男性が妊娠できる状態になったりする場合があります。中には催淫効果のあるものもあったりします。

修行中に、何らかのアクシデントで横道にそれたり、功を焦って邪道と見なされる方法を取ったりすると、修真者は魔道に陥ることがあり、これを入魔といいます。修真の概念はだいたい老荘から来てますから、修真者は基本淡白な性格になることが多いですが、入魔すると気分が荒ぶりやすくなったり、怒りや欲望を抑えにくくなったりします。一度魔道に陥ったものは二度と戻れない場合が多く、修行のために他人に危害を加えたりする人が多いので、世間では目の敵にされることが多いです。また最初から他人を犠牲にするような修行方法をとってる流派があったりしますが、そういう人たちと入魔した正道の修真者を一括して魔修とか邪修と呼ぶことが多いです。基本正道修真者とは犬猿の仲になるので、殺し愛の恰好なネタになりますし、仙魔の恋という禁断愛のネタにもなります。これも大好物です。


長々と書いてしまいましたが、中華BL初心者には多分、どこで読めるかもわからないでしょう。
この文章はどちらかというと、先述の『魔道祖師』を書いた墨香先生の作品を読んで、このジャンルについて若干分かる方のために書いたものなので、これを読んですぐ仙侠BL読もう!となる方は少ないでしょう。そういう方はとりあえず「魔道祖師 日本語」で検索してみてください。
他のおすすめの作品については、あとでツイッターで少しずつ布教していく予定ですが、自分で探索してみたい方は、「晋江文学城」や「长佩文学」などの大手投稿サイトを覗いてみると良いでしょう。ただ近年は中国本土のエロ規制が厳しくなって、こういった大手サイトに投稿された新しい作品は基本本番なしのものになります。本番ありのものが読みたい場合は、「长佩旧站」(allcpとかいう小説投稿サイトとは思えないBBSが出てきます)や「海棠文化线上文学城」で検索してみてください。

えっ、言語の壁?壁というものは打ち破るために存在するのですよ。(ドギなみかん

追記
他の記事も書いてますので、よかったら是非。


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