ネット詐欺しておいて天国に行けると思うなよという思い出


 ハローこんにちは、なまむぎなまこです。今回は私がネット詐欺の被害者になったときの思い出でも語ろうと思います。笑ってください。そして被害者になる人がひとりでも減れば、私は報われます。

 私には以前からものすごく欲しい本がありました。これです。

アイクかっけえ


『ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡設定資料集 テリウス・コレクション上』

 この古いゲームを知らない方は、「ん? 昔のゲームの設定資料集? 買えばいいじゃん別に」と思われたことでしょう。

 じゃあ、いくらなのか見てみましょうか。

※中古での値段です


 ね? 目ん玉ひん剥くでしょう? 
 ゲームの資料集(中古)がこの値段になる例を、私は他に知りません。
 いちばん下の楽天ブックスの価格が本来の、販売されていた当時の価格です。こちらは「在庫なし」と書かれており、ということは上記の高騰した値段でしか今は販売されていないということです。

 要するに、こちらの資料集はものすごく人気で、いまやどのような手を尽くしても再販されない限りは正規の値段では入手不可となり、要するにプレミアがついてしまったということです。

 「プレミア本だから欲しいのか?」と思われたあなた、私がなぜこの資料集を欲しいのか、ちょっと聞いてくれませんか?
 そう、あれはまだ私が小学生の頃のことじゃった……

 2005年4月20日、とあるゲームが販売されました。『ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡』その当時の私は、ゲームが大好きな女児でござった。
 でも、ゲームソフトを何本も買えるようなお金など当然ありません。「親にねだって買ってもらう」のハードルは普段から鬼ほど高く、というか「ねだって何かを買ってもらった」という経験が私にはありません。欲しいものはなんでも自分のお小遣いの内からなんとかしなさい、が我が家のルールです。
 いや、ですが別にそのことは当時も今も全く恨んでいませんので! 誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントもございましたので、全然! ご心配なく……! 今の子はすごいよね…!
 よそにはよその家計や事情がございますし、そのことを不公平だずるいあれもこれも(なくても困らないようなものが)たくさん欲しかったのに買ってくれなかった、と今でも親を恨むようなアラサーは、正直言ってヤバいしキモいじゃないですか。(※個人の感想です)
 というか、当時の家庭ってそういう家庭が普通じゃなかったかなあ……?

 話が逸れました。とにかく、ゲームソフトなんてわかりやすい娯楽品、自分のお小遣いで購入しても良い顔をされないのに、家計から買ってもらえる可能性などもちろんありません。ねだったところでシベリア氷河をもう一つ作れるような冷たい目で見られることはわかりきっています。
 そんなわけで、毎月一度だけもらえる1000円のお小遣いを握りしめて、月刊ゲーム雑誌『Nintendo Dream』(600円くらいだったかな。愛称は「ニンドリ」でした)を一冊買って、雑誌の中で紹介されているいろんなゲームを眺め、投稿されたみんなの感想を読み、自分もプレイした気分に浸るのが当時の私の、月に一度の楽しみであり、お小遣いの使い道でした。28の私は、いまそのことを思い起こして「なんて健気な…」と泣きそうです。大学時代がゲームで溶けたわけだよ。

 そして、そんな日々の中で、ある日突然。出会ってしまったのです。

『ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡』



 (この主人公の男の子………カッコいい……………!!!!!)

 まさにその当時の、私が見たニンドリ表紙のアイクの画像をネットで探したんですが見つからなかったので、実家に帰省して発見したらそのニンドリ表紙の写真と差し替えます。見て欲しい。

 その真ん中に大きく描かれているキャラクターを見て、10歳の女児の胸はときめきました。芸能人もクラスの男の子にも関心を示さない内気な女の子は、そのとき稲妻に打たれて恋に落ちました。
(かっこいいかっこいいかっこいい……ほわあああ………かっこいい……)
 ふわふわしながら購入したニンドリをめくると、青い髪の凛々しい表情のあの男の子は「アイク」という名前で、『ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡』というゲームの主人公であることが、ニンドリには書いてありました。朴訥で素直な、まっすぐな性格であることも気に入りました。
(どうしたらこの男の子に会えるの?)
 もはや頭の中はアイクで埋め尽くされました。アイクがしゃべるところ、戦うところ、動くところがとにかく今すぐに見たい。どんな風に話して、どんな風に勇ましく戦って、どんな風にそのゲームの世界の中で生きているのか、目に焼き付けたい。

 しかし、そのゲームの対応ハード(それをプレイできるゲーム機のこと)は、「ゲームキューブ」でした。
 私の指はページの上で止まり、そろそろと、「対応ハード」の欄を指します。読み間違いではありません。
 ファミコンでもロクヨンでもスーパーファミコンでもゲームボーイアドバンスでもなくて。そのどれかだったら、うちにあるのに。どれも親戚がくれたから、あるのに。唯一ゲームボーイアドバンスは誕生日に買ってもらった宝物で、私の大好きなゲームはみんな、ゲームボーイアドバンスで遊べていました。
 しかし、ゲームキューブは、我が家にはない。いや、欲しいとは思っていたけれど、たぶん、これは、ちょっと。

 何故って、ゲームボーイアドバンスは当時の価格で9800円でした。お願い、クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントを一つに合体させて買って。そんなお願いでやっと買ってもらえた宝物です。

 ゲームキューブは当時、2万5000円でした。さあ、クリスマスプレゼントに買ってもらえるものの値段は5000円までで、誕生日プレゼントも5000円まで。そんな不文律のある家庭の子供に、2万5000円のゲーム機はあまりに遠いものでした。
(今年の誕生日とクリスマスを合体させたら10,000円でしょ? 来年の分の誕生日とクリスマスを合体させてもまだ20000円だから足りない。ここに再来年の誕生日の分も使って、やっとお願いできる?)
 そんな風に、ノートに計算します。
 しかし、このとき私は想像しました。
 今年、ゲームキューブと『蒼炎の軌跡』を買ってもらったとして、来年のクリスマスも誕生日も、そのまた次のクリスマスも何もありません。楽しい楽しいクリスマスと誕生日。
 もしかしたらケーキは買ってもらえるのかもしれませんが、兄と妹にはわくわくと飛びついて開ける素敵な箱が用意されているのに、私には「あんたにはもう買ったでしょ」と、前借りした分、そのときは何もない。
 プレゼントのないクリスマスと、誕生日。それが数回。
 当時の私は、そのさみしさと悲しさを想像して、ニンドリのアイクを眺めながら唇を噛みました。
 かっこよくてかっこよくて、しかし、どうやら彼がゲームの中でどんな風に描かれている人物なのか、詳細に知る日は、来ない。
 (……いいもん。雑誌で見るだけで、いいもん)
 芸能人を好きな子だって、雑誌やテレビで見るだけの相手に恋し続けられるではありませんか。私は、しょんぼりと拗ねながら雑誌を眺め続けました。断片的な情報を集めて繋ぎ合わせて、アイクはやっぱりなんてかっこいいんだろう、と想いを募らせていきながら、そして、11年の月日が流れましたーーー。

「!!!?」

 まさかそんな失恋の思い出を蘇らせるゲームの資料集が10年以上経って発行されるなんて誰が思うよ????????このときの私がこの資料集をどれだけ欲しかったかわかります????????そして今でも欲しい。のに。ねえ。

 さて、10歳の女の子は、21歳の女子大生になっておりました。
 こう思われるのではないですか?
「なら買えるじゃん。バイト代で。当時は3000円代だったんでしょ?」と。
 ごもっとも。その通りですね。
 しかし、ここで悲しいすれ違いが発生します。恋ってそういうものなのかも。

 発売当時の私は、TwitterもFacebookもやっておらず、ネットはもっぱらニコニコ動画で一挙放送されているアニメを観るために使うもので、失恋の傷を抉る『ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡』を検索することなどなく、検索履歴からおすすめの情報を見せてくれる機能があったとしても、それは私にその情報を教えてくれませんでした。

 要するに、この本の発売当時、発売されたそのことを知らなかったのです。
 だって!!!!! 11年の時を経て!!!! 急に!!!!!! 出たから!!!!!! 誰が「そろそろ本が出るかな〜?」なんて思えるよ!!!!!!? 誰に予測できたよ!!!!!!!!!!!!!!?

 そんなわけで、その本が出たのを知ったのは、更に月日が流れて2023年。今年です。ファイアーエムブレムシリーズのゲームが買えるようになり、プレイしてみたらどハマりし、「そういや蒼炎の軌跡のアイクが好きだったな〜Switchでリメイク出ないのかな〜アイクが見れる画集とかないのかな〜」と検索してみたら、この設定資料集の情報がやっと出てきたわけよ。発売から7年経過したこの本は、既に相当に高騰したプレミア価格となり、私を仰天させました。なあ。そんなに俺が悪いのか。

 私は、久々に蘇った恋の炎に焼かれました。アイクが見たいアイクに会いたいあのゲームがどんなものだったのか知りたい!!!!!!うおおおおアイクーーーーーーーッッ!!!!!!!!!!!!この本が!!!!!欲しい!!!!!!

 そして、当然ながら思いました。

(中古商品の値段って、店によって何千円か違ったりするんだなあ。ということは、もっとちゃんと探したら、適正価格の安いものもあるんじゃ? だって、ネットは広いじゃんね〜)

※このさき、詳細にネット詐欺に遭った当時の被害状況を書いてしまい、加害者が読んだ時に特定できるかもしれない可能性のために有料にしております。
 もう書いてしまったから載せたいが、しかしあんまり人の目に触れさせたくない、というジレンマを、有料にすることで解決しようという自己満足です。
 ここまでお読みいただきありがとうございました!
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