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NVファンが考えるNVというチームの強さ

PUBGモバイルの世界大会PMGCを現在2連覇中の中国チームNV Tencent TV(以下NV)。 
その技術力の高さは1月6日から開催される世界大会PMGCでのプレーを実際に見れば伝わるはず…!なので、今回はNVファンの観戦勢という視点でNVを見てきて感じた強さを語ります。
(※PMGC2021優勝時に書いたものの再編集となっており、一部内容が古い事をご了承ください😅)

1.長所を活かすスタイル

強くなるには、上手になるには、勝つにはどうすればいいか?

ゲームでも勉強や仕事でも、そう思った時真っ先に考えるのは自分の苦手な部分、人と比べて弱い部分の強化ではないでしょうか。でもこのチームは弱点の克服以上に人と比べて優れている部分を活かすことに注力している傾向があります。

わかりやすい例がParaboy。
彼はプロ選手では大変珍しい2本指プレイヤー(※でした。2022年に4本指に転向)。好きな武器はDP-28や単発撃ちしかできないM16A4と普通のプレイヤーなら選ばない銃。
2本指」「DP」「16」・・・ 今でこそ"Paraboy" という実績がありますが、それを除けばマイナスの印象しかないキーワードではないでしょうか。実際彼はプロ選手を目指していた頃これが理由で複数のプロチームに落ちたといいます。そんな選手をチームの柱として採用したのが当時のXQF(現NV)でした。

Paraboy本人は親指2本で操作する理由として中距離のエイムの安定性をあげています。一方で操作する指の本数が少ないと細かいキャラクター操作がしづらく、近距離のファイトで差がつきます。実際Paraboyより近距離ファイトが強い選手は中国国内でも世界大会でも数多くいますよね。
そんな中で指の本数を増やして近距離でそのレベルに肩を並べようとするよりも、世界で群を抜いている中距離のエイム能力を活かすほうを選んだのがParaboyという選手であり、その長所を買ったのがNVというチームです。

チーム全体のプレイスタイルにもこの方向性が表れています。
PMGC2021でのNVは中心を抑え、中盤は他のチームを寄せ付けない戦い方でキルポイントを稼いでいました。(詳しくはざわしさんのnoteへ)

NVはセーフゾーンが大きく外れた時の動きが非常に苦手。PMGC2021のリーグ戦で苦しんでいたのもモバイルの仕様の違いでゾーンを外れることが多くなったことが一因だったと思います。普段戦っている中国リーグではセーフゾーンが”同心円”、ほぼ同じ地点を中心に収縮する傾向が(※当時は)あったので、セーフゾーンが外れた時=弱点を強化するより、ゾーンが外れない前提で得意なムーブの精度を極めるというのが今までの方針だったのではないでしょうか。

チーム内の構成もそうです。
NVの場合、選手の命は平等ではありません。武器も弾もスコープも、アーマーも回復も、ダウンした際の蘇生順も基本的にParaboyとOrderの2人に優先権があります。必要な物資を集めて2人に届けに行き、彼らを車で迎えに行って送り届け、ダウンした人を蘇生するのは基本的にオーダーのJimmyやサポートの仕事です。(※JimmyはPEL蘇生回数歴代1位、2021PMGCリーグ戦でもトップ。)
強いチームには自己犠牲精神が必要という意味ではなく、このチームにとってはParaboyとOrderの火力が他のチームを上回れるポイントだから。彼らのリスクとタスクを最大限減らして撃ち合いに集中できる時間を増やし、その火力を徹底的に活かそうとした結果の構成ではないでしょうか。

一方的に撃てるポジションが作れればParaboyと交代したり、グレネードを投げる場面でわざわざParaboyにグレを渡して投げさせたり、後部座席が落とされやすいバギーだけは普段運転しないParaboyとOrderが運転したり。一つ一つのプレイにもその方針が徹底されているのではないかと思います。

Orderの役割の変化

2021PMGC配信でYamatoN先生がOrderの仕事が増えたことに触れていましたが、これもチームスタイルが出ていると感じます。
それ以前、2020年頃のOrderはゴリゴリのアタッカー気質。一人で戦闘を始めて死んでしまい、みんながこう動いてくれたら勝てたのにと試合中にふてくされるシーンもありました。
Orderは目の前の状況を正確に把握し、そこから先の展開を読む力が優れています。勝てる算段がつけられてしまうからこそ先走って行動してしまったんですね。それが2021年中頃から先行して索敵するスポッターの役割を兼任し、そこから次の展開を提案するサブオーダーの仕事もするようになりました。
Paraboyの場合、報告以外はほとんど喋らず意見出しもまったくしません(もちろんその能力が無い訳ではありません)。前述したように撃つこと以外の作業は他人に任せてダメージを出すのに集中しています。そんなParaboy同様、Orderの火力もNVにとっては柱のはずです。
それでもアタッカーに集中させるのではなくあえて役割を増やしたのは、彼が持つ「状況把握の正確さや先を読む」部分で人より秀でている能力を最大限チームに活かす変更だったのではないでしょうか。


技術的なことはあまりわかりませんが、ファンとして確信が持てるのは「NVは完全無欠ではない」ということ。弱い部分を抱えながらも強豪ぞろいの世界大会で他のチームを上回れたのは、強みを最大限活かすスタイルが完成されていたからだと思います。

2.経験値

これはもう言う必要が無いかもしれません。

・互いを知り尽くした国内大会
・プレイスタイルがまったく違う国際大会
・環境が違いが大きく緊張しがちなオフライン大会
・気持ちが乗せづらく回線不安もあるオンライン大会
・数日で決まる短期決戦
・数か月の長期リーグ戦
1年かかる世界大会代表決定戦
全ての状況でNVは勝ち切った経験があります。
世界大会連覇でさえ既に2度経験済。

ひとつひとつの大会を見ても
・スクリムに出れないままハードスケジュールで優勝
・最終日に数十点差を逆転して優勝
・最後の最後で僅差を制して優勝
・最後まで首位を守り切って優勝
問題を短期間で修正して優勝
心理的な影響がある中で優勝
とあらゆるパターンで勝利を手にしています。

不調の時、疲れている時、追い込まれた時… 過去に「できた」という事実は絶対的な支えになります。
競った状況下におかれた時、「できた」という経験からくる自信は相手に対して精神面で圧倒的優位に立つことができます。

それが実際に結果として現れた例が TCを制したPEL2021 S3最終マッチ。TCは焦りから指揮系統が機能せず自滅しました。


こういった経験値が活かせるのもNVがずっと同じメンバーでやってきたから。2019年のXQFメンバーは2022年現在も全員がNVに所属しています。

2019PMCOから2022年末まで。引退した初期メンバーのCATはNVコーチに、CoolboyはNV所属のPEL解説者として今でも一緒に暮らしてます


チームが壁にぶつかったり、結果が出なかった時。
メンバーをいろいろ替えて試してみたり、お金をかけてスキルの高い選手を補強したり、一度崩して全く新しいチームを組みなおしたり… 考えられる手段は多々あります。
でももしメンバーを変えずに不調を乗り越え、全員が「できた」という経験を共有することができたら。各大会においてその時「点」で強いチームはたくさんありますが、ずっと勝ち続けるためにはこの経験値が絶対必要なはずです。

3.気持ちのコントロール

NVの選手が精神的に大人なのかというとそんなことはなく、年相応どころか3歳児と呼ばれています。そんな日常の様子をどうぞ↓

大会配信を見ていてマッチ直前の選手が何を話してるのか気になった人がいるかもしれません。大体歌ってるか寝てるか、筋トレで手にタコができた(Order)とか小さい頃は懸垂できた(Paraboy)とかスイカは木になるのか(King)とかどうでもいい話です。
面白いのは、点数が競ってようが前のマッチで失敗しようがずっとこの調子だということ。点差や失敗を気にせず目の前のマッチにのぞむというのは誰もが意識することだと思いますが、それを実際にやるのは難しくないですか?

マッチが始まったら気合入れてのめりこむのかというとそうでもなく、40分近いマッチの中20分ぐらいは適度にリラックスしていて、終盤グッと全員が集中する瞬間があります(個人的にこの瞬間が大好きです☺️)
大会は1日5-6マッチ、毎日毎週続きます。週ごとに結果が求められるPELでは「落としてもいいマッチ」というのはまず存在しません。そんな中で全てのマッチで自分たちのパフォーマンスを出すためのメリハリのつけ方がこのチームはとても上手いです。

もう一つ、VCを聞いていて思うことがあります。
NVは序盤に誰か死にがち(※当時)。PMGC2021でもサノックなど最初の方で選手が欠けるシーンが多々ありました。
その時のVCがどんな感じかというと…ほぼノーリアクション。そもそも自分が死んだこともしかして気づいてない?と思うぐらい。危険のあるスプリットだし死にすぎて慣れてるのかもと思ったら終盤のファイトシーンでもそんなに違いはありません。

自分が死んだ時って自分自身のプレーに納得がいかなくて悔しかったり、バグやらラグやら理不尽なことに怒りが沸いたりしますよね。当然選手も同じ感情があるはずですが、それがVCに乗らない。これは戦術的にVCに感情を入れない方針があるのではないかと思います。

感情がVCに乗らない一方で目立つのは他の人への声がけ。観ている側はもうParaboyやOrderは敵を倒して当然ぐらいの感覚になっちゃってますが、一つ一つのキルやファイトが終わった際は今でも「今のファイトとても良かった」「Paraboyはほんとに凄い」「確キル入れたの良いね」等、チームリーダーのJimmyを中心に必ず何か褒める声がけが入ります。結果が出なかった時も同様に「全力は尽くしたから大丈夫」「十分十分、よく頑張った」と個人が落ち込まないようなフォローが。各個人が感情を口に出さない代わりに、チームメイトがその気持ちを必ずフォローできているのです。
このゲームはチームでの戦いであると同時に個の戦いでもあるなと思うのですが、個の戦いであっても自分の頑張りや感情を(言わなくても)他の人が理解してくれているということがわかると、精神面に振り回されずプレーに集中できるようになりますよね。

先ほど紹介したシーズンファイナル最終戦でTCと競ったマッチの舞台裏。僅差で迎えた最終戦を前にNVがやっていたのは直前のマッチでミスをしたqcをフォローし自信を持たせることでした。当時大会経験の少なかったqcが感情を引きずることなくプレーできるようにすることが、このチームにとっては勝つために何より重要だったのです。


4.目的が明確


頑張れば頑張るほど欲張りになることってありませんか?「目標は全試合ドン勝して圧倒的点差で優勝!!個人でもモスキル取ってMVP!!!」というように。

NVというチームは目的がはっきりしています。優勝です。ドン勝取れなくても初日最下位でも、何点差でも最後の最後に1位にいること。
このシンプルな目的を全員が共通認識として持てていることで精神面でも実戦の細かい判断においてもチームの方向性がまとまります。そうして勝ったのがPMGC2020です。

目的が明確になるとそこに辿り着くための優先順位も明確になります。VCを聞いているとオーダーJImmyの決断の速さや明確さ、そしてそれにいつも一言も疑問を返さない他のメンバーにびっくりしますが、それはマクロからミクロまで優勝するための優先順位がチームで落とし込めているからではないかと思います。

ちなみに目的(優勝)が達成された後はキルの取り合いでけんか始めたり各自やりたい放題に。そういうレアマッチをチーム視点で見るのも楽しいです☺️

最後に


NVの選手インタビューで何度も目にする一文があります。

自分たちにはまだ成長の余地がある

聞いたのはリーグ最下位が続きどん底だった時、絶好調でリーグ優勝した時、そして世界大会で優勝した時。
もうどうすれば勝てるのかまったくわからないような時も、これ以上ない、ここがチームのピークではないかと思うような最高のパフォーマンスをした時も、どんな状況でも自分の能力の限界は自分で決めない。周囲にも決めさせない。「成長の余地がある」と言い切れる強さが一人の人間として羨ましいです。
しかも「自分」ではなく「自分たち」という表現。自分だけではなく、仲間の努力と能力を信じられるからこその言葉ですよね。

NVファンになって3年。国内大会、グループステージと厳しい戦いを自力で勝ち上がって今年もグランドファイナルの舞台に立ってくれただけで正直もう満足しています。が、選手達はきっと今回も優勝が目標なはず。その目標が達成されることを願って今回もPMGCを楽しみたいと思います!

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