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私の恩師
「光しか見るな。闇を見るな、同調するな。逃げずに飛び込むお前を尊敬する。いずれお前に助けられる、お前の後に続く人がたくさんいる。」
そう言って、恩師は私を抱きしめた。
11月末、少し早い忘年会の3次会のカラオケで私は泣きじゃくった。怖かった。この人達と離れるのがこんなに心細いなんて。
12月15日、私は福岡の実家に戻る。愛犬の最期を看取りたいから、後悔したくないから。誰に相談することもなく、初めて自分1人で決断をした。
恩師には、この仲間たちには、たくさん汚い部分を見せてきた。
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先生との出会いは、4年前の俳優養成所の夏休み特別講義。「誰にも負けたくない」と血眼でレッスンを受ける私の闇を、先生はすぐに見抜いていた。
私は人に弱みを見せられなかった。家庭崩壊した我が家で平気な顔して暮らすことが、私にできる唯一の抵抗だった。
弱みを見せることは、自分を弱いと認めることだ。絶対に嫌だった。私は優秀で、誰より優れてて、尊敬される存在でいたかった。
「変えられるのは自分だけだぞ」
役作りのためのレッスンで、そう言われた。役と自分をすり合わせるため、まず自分自身の人生や価値観を吐露していく。私の口から出てくるのは、暗い家庭の話ばかりだった。
もう実家は離れたのに、1人暮らしをしているのに、心はずっと縛られている。嫌悪・罪悪感。両親を変えるのが、当時の私の生きる目的だった。
役作りの度に、泣きながら自分自身を叩いたり、怒りに任せてわめき散らしたり、どうせできないと開き直ったり。
「お前はお前の人生を生きろ。」
すごい剣幕で怒られ、私は初めて大人の前で泣いたのだ。
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先生、あなたにはほぼ全てを教えてもらいました。
過去ではなく今を見ること、自分と他人の感情の細かな動きに目を配ること、本音はぶつけるのではなく渡すのだということ。
自分を大切にできて初めて、誰かを大切にできるのだということ。
毎日マンションの最上階に足をかけ、ビニール袋を被って眠りにつく、自殺のための貯金をコツコツするような、そんな私だったけど。
あなたに出会って私は変わりました。初めての信頼できる大人は、あなたです。大人の言うことすべてを鵜呑みにするなと教えてくれたのも、あなたです。
先生、私、怖いです。また昔の自分に戻るのが怖いです。でも、今なら変われる気がします。両親を変えることはできないけど、私自身の感じ方さえ変われば、それは世界を変えたのと同じくらいすごいことですよね。
「光しか見るな。闇を見るな、同調するな。逃げずに飛び込むお前を尊敬する。いずれお前に助けられる、お前の後に続く人がたくさんいる。」
私はこれから、どう変わっていくかわからないけど、もう泥にのまれません。自分から首を差し出すような、そんな無様な真似はもうしません。
もしも、私の後に続く人がいずれ現れてくれるなら、その時はあなたのような存在になりたいと思います。
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