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美容院にてその節はありがとう

今日は美容院に行ってきた。

スタイリストさんが何人かいる美容院において、シャンプーはだいたい若手の担当だ。美容師さんはカットの上手い下手も如実にあるけど、シャンプーの上手い下手もかなり明白にあると思う。短い時間とはいえ地肌を直接触る行為。ちょっとしたことで生理的に「あ、ダメだ。もう二度と当たりたくないな」と思うこともある。一方で、文字通りかゆいところに手が届くような、安心しきって心地よい眠りを誘うような、ものすんごい上手い子もいる。たかがシャンプー、されどシャンプーだ。

上手い子に当たったときは、率直に「上手ですね。気持ちよかったです。ありがとうございます」とほめるようにしている。若い頃にほめられた経験はその後の支えになっているから、私の場合。だからほめ惜しみしないようにしている。

仕事をしていると、つらいことのほうが多い。ほぼずっとつらい。九割九分つらいことしかない。私の場合ですけど。

でもつらいときって、目の前の理不尽なできごとにマックス落ち込んでいるから、過去のつらかった経験を思い出すことはほとんどない。思い出すのは、数少ないほめられた経験だ。荒れ野に生えた数本のすすきにすがるように、そのいくつかのほめ言葉を握りしめ、幾度となく押し寄せてくる心折れそうなあれやこれやを踏ん張って耐えてきた。本当に何度となく助けられた。

職場を転々としてきたということもあり、私のことをほめてくれた諸先輩がたは「ほめたこと」はもちろん、私の名前も存在もとうの昔に忘れていることだろう。そして申し訳ないことだけれど、私自身、これまでどの若手美容師さんのことをほめてきたのか忘れてしまいました。そもそもお名前も存じ上げない。

そんないい加減な大人でごめんだけど。あなたが仕事をしていて「楽しいな」と思う瞬間がありますように。
20代の頃の私へ。
社会に出る若い人たちへ。


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