人生と鬱
薄暗い廊下。
なんとなくひんやりとした空気が
口腔でうずまき肺を冷やしていく。
切れかけの蛍光灯のような光が
時折一瞬だけ視界を闇に染めながら
廊下を照らしている。
前方も闇。
後方も漆黒。
後ろは振り返ることはできても
不思議と進むことはできなかった。
廊下だからまっすぐに思えるけど
目に見える部分が少なすぎて
ほんの少しずつ曲がっていたらそれを判断することはできないだろうし
そもそも終わりがあるのか、どこに辿り着いたら終わりなのかもわかりはしない。
そしてなによりも
後方の闇。
他の人にはわからないだろうが
私は一度捕まったから理解できる。
こいつは生きていて
私が一生懸命に廊下を歩いている時に
こちらを見ている。
不意に感じる視線はそれが理由。
不意に聞こえる音はこいつの舌なめずりで
不意の寒気は背筋をなぞるこいつの指。
それは鬱というなの怪物。