うろろんとはろうぃんと、女の子とおばけ。

「うろろん、うろろん」
このお祭りは、はろうぃん、っていうのだそうです。
おばけがいるし、ニンゲンたちもおばけの格好をしてるし、たまにおばけがおどろかしてくるし、うろろんは、はろうぃん、ってあんまり好きじゃありません。
おばけに間違えられるのも、困ります。
「うろろーん…」
うろろんは、おばけじゃなくて、うろろんなの。
おばけさん、こわい。
おばけの格好のニンゲンも、ちょっとこわい。
驚かしあいっこみたいなのしてて、近くにいるだけでどきどきして、ひゅうって細長くなっちゃいそう。
「うろろん、ろろん」
電信柱の陰に隠れて、めだたないようにします。

でもね、ちょっと気になることもあるの。
「ろろん…」
うろろんのことを、おばけか、おばけの格好をしたニンゲンだと思ったらしいひとに、飴をもらったのです。
「うろろんろん」
飴は、甘くてすき。
おばけがお菓子をもらえる日なのかな。はろうぃん、っていうのは。うろろんは考えます。

お菓子をもらえるなら、ニンゲンたちがおばけの格好をするのも納得です。だって、お菓子、もらえるんだもん。
どうしたら、おばけに近づかないで、お菓子だけもらえるかな。そういう方法がないものか、うろろんは飴を舐めながら考えていました。
「うろろん!」
何か良い考えがあるのかな?

おばけに気がつかれないように、そっと後ろについていって、おばけがお菓子を貰っているときに、一緒にもらったらいいのではないでしょうか?
「うろろんうろろん!」
これなら、おばけは怖くないし、お菓子ももらえるし、たぶんばっちりです。
よし、あのおばけたちについていこう。

「とりっくおあとりーと」
と声を合わせて叫ぶおばけたちに混ざって、うろろんは無事お菓子を手に入れることができました。やったね。
今度は小さなチョコレートです。
銀紙をむいて口に入れると、お口がきゅうってなるくらい甘い、甘いチョコレート。
これでもう、はろうぃん、はばっちりだ。

いろいろなおばけたちに混ざってお菓子をもらえたりもらえなかったりしていたうろろんですが、なんだかうろんな気配に気がついて、そちらの方に行ってみることにしました。
小さな女の子が、泣くでもなく、笑うでもなく、奥歯をぎりぎり噛みしめて、道に立っていました。
「うろろん?」

黒いとんがり帽子に、黒いマント。手にはお菓子の入った小さなカゴ。
でも、その女の子は、どうしたのか、お顔が真っ赤で、今にも泣きそうです。
「うろろん、しゅー」
うろろんは、そっとちかづいて、その女の子のうろんを吸い取りました。
「あんた、おばけ?」
女の子は尋ねます。
おばけじゃないよ、うろろんだよ。ふるふる、と揺れて伝えようとしたのですが、うまく伝わらなかったみたい。
「おばけなら、これ、持ってっていいよ」
と、女の子は、お菓子のカゴをうろろんに差し出します。
「うろろん!」
こんなにたくさんのお菓子、うろろんに?いいの?なんで?
「風邪ひいたから、はろうぃん、できなくなっちゃったの」
と、女の子。
「これ、お友達のおばけにあげて」
うろろんにカゴを押し付けると、女の子はお母さんに呼ばれて行ってしまいました。
「うろろん…」
お風邪、かわいそう。
はろうぃんのお祭りに行けないから、うろんなんだね。
おばけにお友達はいないし、どうしよう、と考えて、うろろんは、他のうろろんにお菓子を分けてあげることにしました。女の子はおばけとうろろんの区別がついていないみたいだったし、いいでしょう。
「うろろん!」
「うろろん!」
うろろんたちとお菓子を分けて、おばけごっこをします。
ひときわおばけごっこが上手なうろろんに、お菓子を渡した時。
「でろでろばー!」
あ、こいつ本物のおばけだ。ひゅー、と、うろろんたちはみんな細長くなって、逃げ出してしまいます。あとにはお菓子の残りと、お菓子の入っていたカゴ。
「ノートリック、イエストリート」
と、おばけ。
おばけだって、ちょっとうろろんたちのことが気になっていたのです。
でも、でろでろばー、しただけで逃げるなんて、だいぶびびりすぎない?
おばけはぷんすかして飴玉を齧ります。空になったカゴに、お菓子の残りを入れて、おばけは帰って行きました。
はっぴーはろうぃん。

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