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純喫茶「水曜日の文学猫」のお食事

本屋の裏手の喫茶店「水曜日の文学猫 」には、ご自慢の食事メニューがあるんです。
一刻も早く本を読みたい、でもお腹もぺこぺこ、そんなせっかちな腹ぺこさんのためのメニューです。

ひとつめは、サンドイッチ。
最近流行りの具がもりもりに挟まっているのじゃなくて、薄いパンにうっすら辛子バターが塗ってあって、間に紙みたいなハムやチーズが挟まっているぺらぺらのサンドイッチ。
でも、本を読みながら片手で食べるならこんなサンドイッチが良いのです。

サンドイッチのお供には、少し冷ましたアメリカンコーヒーを。
イチゴジャムサンドは、一番最後に頬張ってデザート代わりに。
食べ終わってからの読書も、切りの良いところまで、どうぞごゆっくり。

本を読みながらのお食事なら、スプーン一つで食べられるカレーも定番。
お行儀は悪いけれど、そんなことは言ってられないのです。
当店のカレーはよくよく煮込んで具が溶け込んでしまったカレー。
どこを掬って食べても美味しい、中辛のカレーです。
ひとくち食べて、一頁読んで。

食後には濃いめのアイスブレンドでクールダウン。
そろそろひとつめの殺人事件が発覚して、雪山で孤立した館の中が疑心暗鬼でざわつき始める頃。
あのあどけないメイドが怪しいんじゃないかと、最初から思っていましたよね。
濃いめのブレンドは氷が溶けても美味しい。

さて、ここで真の読書家の皆様に是非ともおすすめしたいのが、当店自慢のハンバーグ。
ごろんと大きくて、デミグラスソースがたっぷりかかっていますよ。
付け合わせは人参とインゲン。もちろんライスは別皿です。

両手にナイフとフォークを持って、ハンバーグを切り分けなくてはなりません。
合間合間にはライスや人参を頬張らなくてはいけません。
口の中がデミグラスソースで疲れてきたら、ひとくちお冷やを飲みたくなります。
食べている間はもう、読書どころではありません。

一息に山を登るが如き勢いでハンバーグとライスを食べ終えた頃に運ばれてくる、食後のコーヒー。
熱々で濃いめで、デミカップに入っています。
角砂糖をひとつだけ溶かして。
そしておもむろに、鞄から取り出される本。
めくられる一頁目。
甘くて苦いコーヒー。
まだまだ長い午後。

食事にも本にも敬意を払うなら、それぞれに集中すべきなのでしょう。
でも、様々な理由で無理な時もありますから、そういう時にはどうぞご遠慮なく。
水曜日の文学猫には、口うるさいお母さんもマナー講師もいませんから。
ごゆっくり。

おもに日々の角ハイボール(濃い目)代の足しになります